ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

法月綸太郎/「キングを探せ」/講談社刊

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法月綸太郎さんの「キングを探せ」。

奇妙なニックネームで呼び合う4人の男たち。なんの縁もなかった彼らの共通項は“殺意”。
どうしても殺したい相手がいる、それだけで結託した彼らは、交換殺人を目論む。誰が誰の
ターゲットを殺すのか。それを決めるのはたった4枚のカード。粛々と進められる計画に、
法月警視と綸太郎のコンビが挑む!(紹介文抜粋)


のりりん最新刊。四人の男たちによる四重の交換殺人事件に、お馴染みの法月親子が挑みます。
読みやすいので、さくさく読めました。冒頭で殺人犯側の四人の企みが明らかにされているので、
倒叙ミステリと言ってもいいかも。からくりは単純なようでいて、かなり複雑。なかなか良く
出来ていると思うのですが、正直、綸太郎が明かす終盤の謎解き部分は、人物関係が頭の中で
こんがらがってしまって、かなり混乱しちゃいました。だから、感心するっていうよりは、
ふーん、そうなんだー、みたいな感じになっちゃいました^^;数式とか挟まれても、文系人間
には何が何やらです・・・^^;

それに、彼らが知り合った状況から考えて、四人が四人とも本気で殺したい人間がいたって
言うのは、さすがにちょっとご都合主義的すぎないかなぁ・・・と思っちゃいました。
二人くらいならまだそういう偶然もあるのかな、と思えるんですけどね。人を一人殺すって、
相当な覚悟と勇気が要ると思うんですけど・・・しかも、今回の場合は、何の恨みもない
人間を殺す訳ですし。ネットのサイトで知り合ったっていう方がよっぽど納得出来たかも。
しかも、その状況から更に被害者がここで遣われたトランプの頭文字に該当する確率って、
一体どれだけなんだろう・・・と思うと、ねぇ。ちょっと、偶然に頼りすぎてる感じは
しましたね。

いや、面白かったんですけどね。構成も凝ってますし。綸太郎は、相変わらず間違った推理
で遠回りして読者をやきもきさせてくれたし(笑)。まぁ、遠回りしながらも、しっかり
正解に辿りつけるところはさすがって思いましたけど。今回は、法月警視も結構活躍
してましたよね。綸太郎の推理に振り回されてましたけど(苦笑)。

犯人グループの名前の秘密には、そういうことか~!と思わされました。最初は、歌野さんの
密室殺人ゲームシリーズみたいに、ネット上のハンドルネームなのかな~と思ったんですけどね。
彼らの繋がりはちょっと意外なところにありました。名前がヒントになっていたとはねー。
まぁ、先に述べたように、その繋がりから、四重の交換殺人に発展するまでの流れは、ちょっと
強引な印象を受けたのですけどね。

それにしても、法月シリーズの長編の新刊って、『生首に聞いてみろ』以来8年ぶりなのだ
そうですね。そんなに長いこと出てなかったのかー、とちょっとビックリ。『生首~』から
8年も経ってるってのも驚いたのですが・・・年取った訳だよ・・・^^;


トランプをモチーフにした構成と装幀もかっこいいですね。タイトルも、内容読むと意味が
あることがわかりますし。『しらみつぶしの時計』の装幀も良かったけど(内容はともかく・・・)、
今回も負けず劣らずいいな。このタイトルにしておいて、実は○○○じゃなくて、○○○○○
だったってとこがミステリとしては秀逸なところでしょうかね。

面白かったのは間違いないんですが、内容的にはちょっと地味だったかなぁ。四重の交換殺人
ってところは凝ってて良かったと思うんですけど・・・。四重にしたことで、ちょっとからくり
がわかり辛かったところが、自分としては痛かったかな(これは完全に自分の頭の問題です^^;)。
まぁ、年末の本ミスランキングには入って来るでしょうけどね。