ミステリ読書録

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物集高音/「大東京三十五区 亡都七事件」/祥伝社刊

物集高音さんの「大東京三十五区 亡都七事件」。「冥都」「夭都」に続くシリーズ3作目にして完結編。
昭和初期、不穏な空気漂う帝都では相次いで奇妙な猟奇事件が起こっていた。早稲田の不良書生にして、雑誌の種取り記者であるちょろ万こと阿閉万は、下宿先の大家・真直瀬玄蕃に事件の顛末を語る。縁側探偵・玄翁先生の奇妙奇天烈な推理が開帳される・・・。

昭和初期が舞台ということで、文体も雰囲気もかなりレトロ調。独特の文体は読み辛いと感じる方もいるかもしれませんが、私はリズムがあって、日本語の持つ音の美しさが感じられて、結構好きです。あの京極夏彦氏も絶賛されている位ですし。装丁も京極氏が手がけているので、かなり凝っていて美しい。

事件自体は不可思議で、謎解きも「えええ~」とのけぞるものが多いのですが、ちょろ万と玄翁先生のとぼけたやりとりがおかしくて、わりとすんなり読めてしまいます。ただ、完結編というだけあり、ラストでちょろ万がある行動に出るのですが、それが物語の中で必要だったのかは疑問。ちょっと唐突な感じがしたし、残念でもありました。「終わり」感を出したかったのかもしれませんけど。個人的には2作目の「夭都~」が一番好きかな。