第1回このミステリーがすごい!大賞候補作、上甲宣之さんの「そのケータイはXX(エクスクロス)で」。
水野しよりは年下の友人・火請愛子と山中の温泉地「阿鹿里」にやって来た。しかし、村の人々は
二人を何故か冷ややかな態度で迎える。旅館に落ち着き、しよりは、愛子が温泉に入っている間に
押入れの中で携帯が鳴っているのを発見する。不審に思って出てみると、そこから聞こえて来たのは
「今すぐに逃げなければ片目、片腕、片脚を奪われ、村の生き神として座敷牢に監禁されてしまう」
と言う男の声だった。この電話は果たして真実なのか?次々襲ってくる謎。人間不信に陥るしより。
一体誰を信じれば!?
これは、なんと評価してよいのか、正直わからない作品です。文章はひどいし、人物描写も
稚拙。作家としての評価はあまり出来ないのですが、物語としては怒涛の展開で退屈はしなかった
です。とにかく、次から次へと今信じてるものが裏切られて行き、一体何が真実なのかを
最後まで考えさせる辺り、リーダビリティという点では優れたものがあると思います。でも、
リアリティが全くない。まんが日本昔話を現代版にしちゃったみたいな・・・。多分読者の
評価も真っ二つではないかと思います。作品の展開としてはホラーっぽいというか、スリルのある
話なのに、どうも文章が稚拙なせいなのか、ギャグっぽく感じられるのが不思議でした。
一体この作者が何を目指しているのか、もし次の作品が出たならば追いかけてみたい気はします。
裏切られるような気がしないでもないですが・・・。
ちなみに第1回で見事大賞を受賞したのは「四日間の奇蹟」。映画化もされて大変話題になった
作品でしたね。私も刊行されて割とすぐに読んだのですが、これは受賞も納得の作品でした。
当然気になる点はありましたが、完成度は高かったように思います。それと本書を比較したのでは、
やっぱりね・・・。というか、本書が大賞候補になったのもある意味すごいと思いますが。
これが受賞だったら、間違いなくこのミス大賞はつぶれてたでしょうね・・・。