ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

下村敦史「暴走正義」(幻冬舎)

下村さん最新作。『逆転正義』と同じ世界線で、各作品にあちらのシリーズの

登場人物がカメオ出演しているそうな・・・って、覚えてないっつーの!(逆ギレ

やめろw)いやー、図書館行って、前作借りて来て確認しようかなと思ったけど、

いつも使う地域図書館に所蔵してなくて諦めちゃった(ほとんどの地域図書館で

所蔵しているのに、なぜかそこにはなかった^^;)。職場の近くの方ならあった

んだけどね。結局面倒になっちゃって。

こっち読んでて、この人かな~?ってなんとなくわかる人もいたけど、確信は

持てず。これから読まれる方は、前作をおさらいしてから読まれた方が、より

楽しめるかもしれません。とはいえ、別に覚えてなくても、普通に問題なく

読めるのは間違いないので。

正義だと思って突っ走ると、思わぬ落とし穴が待っている、みたいな代表例が

いっぱい収録されております。SNS全盛期の今、いろいろと考えさせられる点が

ありますね。自分が正義だと思ってやったことでも、違う方面から見たら迷惑な

だけだっていうね。暴露系ユーチューバーとか。個人的には、ああいう人には

1ミリも共感できませんけどね。芸能人の不祥事を暴く週刊誌とかもね。でも、

世間人々の、知りたいって気持ちも止められませんしね。難しいですよね。

ちょっとしたことで炎上する有名人を、ネット上のコメント欄で叩く人とかも、

自分は正しいと思って書き込んでるんだから、厄介ですよね。正論と誹謗中傷

の線引きとかも難しい。その時の怒りの感情とかで勢い任せて書き込むと、結果

誹謗中傷だと自分が叩かれる羽目になったり。言葉の遣い方って、本当に難しいな

って思いますね。正義って何なのかなぁって、改めて考えさせられる作品だと

思いましたね。

 

では、各作品の感想を。

※感想がネタバレ気味です。未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

『暴露系』

暴露系インフルエンサーの『晒し屋Y郎』こと前川芳郎の元に、SNSで名が知られて

いる自称投資家の河原優生が、一般女性を酔わせて自宅に連れ込み、不同意性交

容疑で警察に連れて行かれたというタレコミが入った。つてを頼って情報を確認

すると、事実らしいとわかった。そこで、早速SNSアカウントで投稿しようと

したところ、同じ暴露系インフルエンサーのライバル『帝国鮫』がいちはやく

河原逮捕の投稿を上げてしまっていた。先を越されて悔しい芳郎の元に、当の

河原本人からDMが届き――。

高校時代にいじめを暴露したって話は、多分前作に出て来てたの覚えてました。

暴露系同士の醜い暴露対決には辟易。大して裏取りもしないで、片一方の証言

だけを鵜呑みにして投稿しちゃう芳郎の浅はかさにも。痛い目を見ないと気づけ

ないんでしょうね。

 

『報道加害』

週刊誌記者の藤原幸典は、喫茶店で近くのテーブルから不穏な話をしている男の

二人組に気づく。片方の男が、「俺、殺されるかもしれない」と言った。藤原が

聞き耳を立てて会話を聞いたところ、妻が知らない間に自分に一億の保険金を

かけていて、週末に夫婦で旅行に行くことになっているのだという。男は怯えて

いたが、相手の男はあまり本気にしていないようだった。しかし、後日、藤原は

殺されると怯えていた男が、車の事故で死亡したニュースを見て愕然とする。

報道では事故の扱いだったが、藤原は妻が殺したのだと知っている――。藤原は、

独自に調査し始めるのだが。

保険金殺人の真相は意外な事実が隠されていました。藤原は、過去の自分の

やらかしで目をつけられ、まんまと踊らされていたと。誠実な記事を書くまとも

な記者だったら、こんなことにならなかったのにね。ま、自業自得かな。

 

エスカレート』

高嶺彩佳は、ストーカーに狙われていると警察に訴えた。しかし、警察は真剣に

取り合ってくれなかった。一方毒島隆夫は、高嶺彩佳の行動を監視して、つけ

狙っていた。彩佳の写真を撮る為、カメラも設置していた。撮ってくれと言わん

ばかりに、彩佳はカーテンを閉めずに着替え始め――。

これはすっかりミスリードに引っかかっていましたねぇ。高校時代に女子更衣室

を盗撮して退学になった毒島の現在の職業(?)にはびっくりしました。あんな

トラウマがあったのにねぇ。よく社会復帰できましたよね。そこに一番びっくり

したかも(苦笑)。

しかし、彩佳は強かな女でしたね。自分さえ助かれば他はどうなってもいいって

人間性にはげんなりしましたけども。

 

『誤認逮捕』

連続不審火の放火犯、女子高生のスカートの中を盗撮しようとした盗撮犯、

老夫婦宅に侵入して三百五十万円を盗んだ窃盗犯――どの事件も逮捕されたのは

五味庄之助。しかし、そのどれもが誤認逮捕だった。警視庁捜査一課の加賀谷は、

雑居ビルの路地裏でチンピラが殺された事件の犯人は間違いなく五味だと思って

いた。五味は、三つの誤認逮捕事件を起こすことで、殺人事件の容疑から目を

逸らそうとしたのではないか。しかし、これ以上の誤認逮捕は警察の威信に関わる

――。

五味がこんな人間になってしまった理由には同情の余地もあるけど、ちょっと

やりすぎたんでしょうね。警察側のやることもえげつないな、と呆れましたけど。

国家権力は敵に回しちゃいけないってことでしょうか・・・こわ。しかし、殺人

事件の犯人って、本当は誰だったんでしょうか。加賀谷は断言してたけど、五味が

やったようには思えなかったけど。また誤認逮捕が繰り返されるのかな。

 

『再犯』

性犯罪の再犯が続いていた。警察が調べると、犯人たちはこぞって性犯罪者を

更生させるために立ち上げられたNPO法人『再起の光』の再生プログラムを受けて

いた。しかし、なぜ彼らは再犯してしまうのか――。

過度の抑圧が逆効果になる典型例ってやつでしょうかね。『再起の光』の荒貝

あやかのやりたかったことは、女性として一部は共感するところもありました

けど。でも、それによって犠牲になる女性が出るのはやっぱりダメですね。

 

『死刑反対』

大蔵鉄二は、法務省の建物の前で死刑反対派のデモに参加していた。すると、

死刑賛成派のカウンターデモが始まり、両者は一触即発状態になり、場は騒然と

した。デモを終えて反対派のメンバーで打ち上げをしていると、世間を震撼と

させていた『S区女児連続殺人事件』の犯人逮捕の一方が入った。犯人は、警察

の取り調べに大して「死刑になりたくて女児たちを殺した」と話しているという

――死刑反対派のメンバーたちは、これは自分たちにとって追い風になると

喜ぶのだが――。

これぞ正義の暴走って感じですね。死刑制度に関する題材は、いつもいろいろ

考えさせられるところがありますね。それぞれの主張に、それぞれの正義があるから。

女児殺害事件の真犯人はまさかの人物でした。とはいえ、現実に、同じような事件

は起きているので、リアリティはありますね。個人的には、こういう事件の犯人が

その後のうのうと生活できてしまうことに憤りを覚えます。犯人がこんな風になって

しまったのも、『エスカレート』で出て来たのと同じように、過度の抑圧からの

反動だったのでしょうね。だからといって、罪を犯していいことはひとつも

ありませんけどね。