ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

山口雅也/「ステーションの奥の奥」/講談社刊

山口雅也さんの「ステーションの奥の奥」。

小学校6年の神野陽太は吸血鬼に憧れている。ところが、そのことを作文に書いた為に
職員会議で問題になり、担任からの勧めでカウンセリングを受けるはめに。問題のある子供
の烙印を押されてしまった陽太だったが、去年の夏休みの自由課題では県のコンクールで賞を
取る程の才能を持っていた。今年の課題は私立受験で夏期講習が控えている為、取り組む時間が
少ない。どうしようか悩む陽太に、同居している風変わりな叔父が東京駅の大改築を知り、
東京駅をテーマに書くのはどうかと勧めた。早速二人は取材の為に東京ステーションホテルに宿を
取り、東京駅探検に出かけた。東京駅に秘密の通路があることを知った二人は、好奇心にかられて
夜中にこっそり忍び込んだのだが、そこでとんでもないものを発見してしまう――ミステリランド
シリーズ最新刊。

山口さんは一体どんなミステリランドを用意しているのかな、とわくわくして読んだのですが、
いや~、やっぱり変化球。途中からとんでもない方向に進んで行って、驚きっぱなしでした。
冒頭の作文があんな風に後半部分への伏線になっているとは。でも、東京駅の薀蓄は楽しかったし、
秘密の通路や扉の存在には私も陽太と一緒にわくわくどきどき。私も東京駅を探検してみたく
なりました。東京に住んでいても普段あまり使わないので、外観も内部もうろ覚えで、どこまでが
事実なのかはほとんどよくわからなかったんですけど。使われなくなった通路なんて本当にあるんで
しょうか。障害者用の通路なんかは実際ありそうですが。

ミステリランドシリーズの例に漏れず、本書の主人公・陽太も小6とは思えない程の知識を持った
知的な少年。二つの殺人事件の謎を解く経緯を話す姿はまさに名探偵そのものって感じでしたね。
ブラム・ストーカーを読む小学生ってのもすごい。そして、○○○召還のくだりにはのけぞり
ました。おいおい、小学生の発想か?それ、みたいな(苦笑)。こっくりさんくらいなら
小学生でもやるでしょうけどねぇ・・・。まぁ、それを言ったらこの作品自体を全否定しなければ
いけない事態に陥るので、その辺の突っ込みは脇に追いやりましたけど(笑)。
ただ、駅長の帽子の謎に関しては、ちょっと説明不足で腑に落ちなかった。陽太の説明だけでは
納得できない部分が残りました。

全体としては非常にミステリランドらしい展開の連続で、ミステリあり、ファンタジーあり、
冒険ありと、盛りだくさんでとても楽しい作品でした。東京ステーションホテル、泊まって
みたい(実在するのかな?)。
夜之介のキャラも良かったですね。見た目はキモ系のオタクなんですけど。この風貌で実は・・・
なんて、ほんとびっくりですよ。今までになかったキャラじゃないかなぁ。
夜之介の屋根裏部屋はほんと住みたいです!しかし、屋根裏にそんなに本置いて家がつぶれない
のかなぁ・・・とちょっと心配になってしまいましたが(苦笑)。あの部屋を引き継いだ陽太
がとても羨ましい。

山口さんらしいミステリランドって感じがしましたね。ラストはちょっと切ないかな。
子供が読んでも大丈夫そう・・・吸血鬼になりたい小学生が増えたら困りますけど(苦笑)。