ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

森絵都/「DIVE!1、2」/講談社刊

森絵都さんの「DIVE!1 前宙返り3回半抱え型」
      「DIVE!2 スワンダイブ」。

高さ10メートル、時速60キロ、わずか1.4秒で全てが決まる競技、高飛込み。
この飛込み競技に魅せられた知季や要一が通う弱小ダイビングクラブ・ミズキダイビング
クラブ(MDC)に、アメリカ帰りの女コーチ・麻木夏陽子がやって来た。麻木はつぶれ
そうなMDCを救いにやって来たという。しかし、存続の条件は、このクラブからオリンピック
出場選手を出すことだった・・・!今までとは違う麻木の練習方法に戸惑う知季たちだったが、
更に麻木は彼らのライバルとして沖津飛沫という津軽の野生児を連れて来て――。


本来ならば全4巻を読破してから記事を書くべきなのかもしれませんが、後半の2巻を
いつ借りられるのかわからないので、とりあえず折り返し地点までの感想を。

この小説に出てくるのは日本ではあまり馴染みのない飛込み競技。高さ10メートルから
落下して着水するまでのわずか1.4秒の間の芸術性を競う。実は私はこの競技を観るのが
昔から大好き。オリンピック競技の中でも非常に地味な為か、なかなか地上波で放送してくれ
ず、不遇の扱いを受けていますが、これが実に観ていると面白い。毎回オリンピックの度に
何故もっと大々的にテレビ放映しないんだ!と憤りを覚えます。それはひとえに日本人で
表彰台に上がれそうな選手が育っていないせいだとは思うのですが。たった一瞬のうちに
回ったりひねったり様々な動きをする人間の身体のしなやかさ、ほとんど飛沫をあげない
で着水した時のあの静寂。その両方がぴたりとはまった時の爽快感がもうたまらなく好き
です。以前からもっともっと着目されるべき競技だと思っていただけに、こういう小説が
脚光を浴びるのはとても嬉しい。そして、この小説はそうした飛込み競技の魅力を余す所
なく伝えています。何より、競技を行うのが若くまだまだ伸びて行く少年たちなのですから。
彼らの抱えるこの競技への期待や不安や逡巡がダイレクトに伝わってきて、これぞ青春小説!
といえると思います。

ただ、正直1巻の始めの方では主役を張る知季の性格が好きになれず、入り込むのに時間が
かかりました。で、彼が失恋した1巻後半から俄然面白くなって来ました(やな奴^^;)。
はっきり云って、彼が失恋したのは自業自得。あの態度では彼女が可哀想すぎる・・・。
でも、裏切りを知季に知られた時の弟の態度はないよなぁとも思いました。まぁ、どっちも
どっちで痛しかゆしということでしょうか。でも、その失恋をバネにどんどん開花してゆく
知季のダイブの才能にわくわくしました。中学生で3回転半って、おそらく現実ではあり得ない
位の技なんでしょうね。
2巻は打って変わって野生児・飛沫が主人公。彼がまたひねくれてて、こにくらしいけど
魅力的。特に、野生児らしい、派手で人を惹き付けるという彼のダイブは実際見てみたく
なりました。私がテレビで観ている限り、スプラッシュをあげる演技はあまり魅力的では
ないのですが、彼の空中演技はそういう常識を凌駕する魅力を放っているのでしょうね。
彼女の恭子もとてもエキセントリックで似合いのカップルという感じ。でもこんな男を彼氏
にすると、後々苦労しそうだなぁという気もしたり・・・。

たった一瞬の競技に青春の全てを捧げる少年たち。スポーツに熱き情熱を傾ける少年たちは
本当に美しい。とても爽やかな青春小説です。今後の展開がどうなるのか、とても楽しみ。
ああ、続きが早く読みたいです。1巻が知季、2巻が飛沫だから、3巻はやっぱり要一が
主人公かな?要一のキャラはお気に入りなので、ますます期待大♪

本書を紹介して下さった智さんに感謝、感謝です。ありがとうございました!