ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

舞城王太郎/「世界は密室でできている。」/講談社ノベルス刊

舞城王太郎さんの「世界は密室でできている。」。

隣の家の涼ちゃんが自分の家の屋根の上から飛び降りて自殺してから二年が経ち、僕と
涼ちゃんの弟のルンババは修学旅行で東京に来ることになった。都庁の広場で僕は都庁に
勤める井上椿という変な女の人に出会い殴られ気絶させられ、なぜか気がついたら埼玉の
井上家に来ていた。そこには椿の妹・榎もいて、なぜか榎に気に入られた僕はその後も
付きまとわれる羽目になるのだった。東京から西暁に帰って来たら世間では埼玉の谷口
一家惨殺事件が起きていて話題になっていた。ルンババはあれよあれよという間にこの
事件の謎を解いてしまう。いつの間にか名探偵になっていたルンババと僕は次から次へと
密室殺人事件に出会ってしまうのだ――舞城ワールド炸裂の青春ミステリー。


泣いてばかりもいられないので、気分転換にでもたまっている本記事を。一発目がコレかと
思うとアレなのですが(何のこっちゃ)。今更ですが、本書は読み逃していた舞城作品の
一つ。名作傑作の呼び名が高い本書ですが、いつも通っていた図書館に入っておらず、
私にとっては幻の作品でした。最近二週間に一度行くようになった新しい図書館で入って
いたのを幸いと、ようやっと借りれたという次第(長かった)。

うーん、最高ですね。やっぱり舞城さんの文章はイイ。このスピード感溢れる独特の
文章は舞城さんにしか出せないですね。そして、なんとなんと、まともなミステリでは
ないですか。ルンババの謎解きはなんだかトンデモないけど、妙に納得できちゃうところが
すごい。「なんだよ、それー」と突っ込みどころが満載な気がするのに「うへぇ」とうなって
しまうのは何故なんだ。それはルンババ12だからだ(意味不明)。
谷口徹の「あ」のダイイングメッセージの謎なんか、言われてみれば一目瞭然なのに、
全然考えつかなかった。ほんとに○○○○(カタカタ4文字入れて下さい)じゃん!!
IQサプリをしょっ中観ているくせに、こんなことに考えつかないなんてー未熟者め。
でも、一番びっくりしたのは4つの建物の密室の謎。おお~、本格ミステリじゃないか!
びっくりびっくり。そして何よりびっくりしたのは、建物の管理人が・・・


奈津川!!


おおお~、奈津川サーガに繋がっていたのかー!!
まぁ、別に奈津川家族が出てきた訳でもないし、一言名前が出て来ただけなんですけどね。
えらい嬉しかったです。

友紀夫とエノキの関係もなんか好きでした。友紀夫のちょっとクールなとこがいいですね。
たまに良いこと言うし。エノキもそんなとこに惹かれたんでしょうね。口ではそっけない
ことを言ってても、どこか愛がある友紀夫のエノキへの態度が良かった。

まぁとにかく、落ち込んだ時に読むのにはぴったりの一冊でした。なんか元気出ました。
好き嫌い分かれる作家だとは思うけど、私はやっぱ大好きですよ。