ミステリ読書録

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上遠野浩平/「酸素は鏡に映らない」/講談社刊

上遠野浩平さんの「酸素は鏡に映らない」。

小学5年生の高坂健輔は、空に浮かんでいたクタガタらしきものを追って辿り着いた公園で、
奇妙な男に出会う。その男は、健輔に不思議な言葉を投げかける。そこに、一台のオートバイ
が乗り込んで来て、危うく健輔は轢かれそうになる。運転していたのは、戦隊系ドラマで
ヒーロー役をやっていた池ヶ谷守男だった。健輔と守男に、男は自らのことを‘オキシジェン’
あるいは‘柊’と名乗り、謎の言葉を残して去って行く。翌日も同じ公園にやってきた二人は、
健輔の話を聞いて好奇心にかられてやって来た姉の絵里香と供に、どこからかやって来た猫が
いじっていた金貨を拾う。そこで再び現れた柊に、「もしも力が欲しいならばその金貨を
探してみるといい」と言われ、金貨を探す為、三人は奇妙な冒険をすることに――。


前評判があまりにもよろしくなかった為、ある程度覚悟して読んだせいか、思ったよりは
ストーリー性があってほっとしました。もっともっと意味わかんない話なのかと思って
かまえてたんで(苦笑)。
だからといって、この作品を評価できるかと言えば、そうでもない。全く面白くなかった
訳ではないけど、とにかくストーリー展開に説得力がない。柊との出会いも、守男との出会い
も、金貨を探しに行く経緯も、何か思いつきだけで書き進めて行っちゃったみたいな整合性の
なさがあって、なんだか作品に入り込めなかったです。他作品とリンクしているそうで、おそらく
そっちの設定を知らないせいで、柊やカレイド、ラストで出てくる絵里香の‘先輩’たちの
役割がわからないままでちょっと置いて行かれた気分でした。金貨を探す健輔たちをつけ
狙う存在の意味もよくわからなかったし。う~む。なんだかなぁ。

あと、金貨に書かれた‘GAUCHE’の意味ですが、江賀内が「フランス語で‘歪み’だ」と
述べるシーンがあるのですが、これは変。少しでも仏語を学んだことがある人間ならば、
まず真っ先に‘左’を思い浮かべると思う。確かに‘歪み’という意味もありますが、
日常会話でよく使うのは左の意味の方です。江賀内がよっぽど歪んだフランス留学時代
を送っていたということなのか、よくわかりませんが^^;‘GAUCHE’のアナグラム
なんだかなぁ、だし、題名の意味も結局よくわかんなかった。酸素も鏡も要素として出ては
来るけど、それが映らないから何なの?と言いたくなった。柊と健輔の会話も禅問答かと
思いましたよ・・・^^;;


う~む、何か釈然としない思いを抱えつつ読み終えた感じ。なんだったんだろう、みたいな。
あとがきの言葉もなんだか全く作者の言いたいことが伝わってこなかったです。
そして、作中読んでいて、やっぱりこの方、文章に問題ありだなぁと思うことがしばしば^^;
せっかくミステリランドの作品を書くのだから、自己満足の作品ではなく、ちゃんと読者に
向けての物語を書いて欲しかったなぁ。

うわ、なんか自分が思っている以上に酷評になっちゃった^^;おかしいな~。
予定ではここまでじゃなかったはずなのに^^;;すいません、すいません。