ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

鳥飼否宇/「激走福岡国際マラソン 42.195キロの謎」/小学館刊

鳥飼否宇さんの「激走福岡国際マラソン 42.195キロの謎」。

北京オリンピックの代表枠残りの一つがかかった福岡国際マラソン。ペースメーカーとして
出場する市川は、ハーフマラソンでは名が知られていたが、フルマラソンになると後半の
スタミナ不足で思うような結果が出せないでいた。しかし今回の大会ではある野望を抱えて
いた。レースには、オリンピック代表を懸けて、日本人トップタイムを持った小笠原、
スマートで女性に人気のある二階堂、地元の谷口、さらに前日の記者会見で暴言を吐いた
一般参加の岡村など、有力選手が参加していた。それぞれの思いを抱えて、ゴールに向かって
ひた走る――勝つのは一体誰なのか。


「昆虫探偵」以来久々の鳥飼さん。次に読むのはどれにしようかなぁと考えつつ、なんとなく
これにしようと決めてました。それというのも、最近マラソンという競技に興味を持っている
せい。実は、スポーツ観戦が好きな私ですが、以前はマラソンという競技には全く観ようと
言う食指が働かなかった。ただ人が走っているところを見て何が楽しいの?やってる方だって
苦しそうだし。などと不届きなことを考えていたのです。年始の箱根駅伝だけは、母校が
出場する為、毎年注目してましたが。でも、ここ1~2年で、私のごく親しい友人がマラソン
始めて、関東近郊のレースに出まくるようになったのです。で、友人のレースの応援に行ったり
するうちに、人が走ってる姿ってなんかいいなーと思うようになりました。友人は今では
完全にアスリートと化しており、しかも出るレース出るレースかなりの好成績を残していて
いつも驚かされます。30歳を過ぎて始めたことでも、こうやって結果が出せるというのは
素晴らしいことで、私も頑張らねば、という気にさせてもらっています。


・・・前置きが長くてすいません^^;;で、本書。そんな訳でマラソンに興味がある身として
は、なかなか面白く読みました。42.195キロを走る間にそれぞれの選手の思惑が交錯して、
ゴール目指して走りながらいろんなドラマが展開し、ラストでちゃんとそれが一つに集結
する。ミステリとしての仕掛けもちゃんとあって、ラストで「あーそうだったのか!!」と
感心。特に、市川の最後の行動にはびっくりしましたね~。彼がレースのペースメーカー
という立場であるというところがポイントなんですね。彼の真の目的が明かされた時には、
非常に清清しい気持ちになりました。まぁ、「えっ、ここで~!?」とも思っちゃいました
けどね^^;
レース中に殺人まで起こってしまうけど、最後まで読むと実に爽やか(厳密に‘殺人’
と云えるのか微妙なとこではありますが^^;)。
ラソン用語がそんなに出てくる訳でもないし、読みやすい文章なのであっという間に
読み終わってしまいました。章立ても42(.195)から始まって1キロづつ減って行くという
体裁を取っている為、最後の章では読者もフルマラソンを走り終えたような気分に浸れる
という凝った構成も良かったですね。読むのが早い人なら、ほんとにフルマラソン
走る位の時間で読み終えられるのではないでしょうか(2時間半前後?)。

ただ、途中至るところに出てくる、同じ描写の繰り返しにはちょっと辟易しましたが^^;
走りながら考えることって、やっぱりこういう感じになっちゃうのかな~??走る
という動作も同じ仕草の繰り返しですものね。


あ、マラソンに興味なくても、普通に読み物として(あるいはミステリとして)
楽しめる作品ですよ^^