ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

三津田信三/「シェルター 終末の殺人」/東京創元社刊

三津田信三さんの「シェルター 終末の殺人」。

東京創元社から依頼された次回作の取材の為、作家の三津田信三は自宅に核シェルターを有する
実業家の日照陽之助の豪邸を訪れた。見学者は日照氏が集めた特定の職業の人間ばかりだった。
日照氏の案内で庭の奇妙な生垣迷路の下にあるシェルターの入り口の前に立った時、空に巨大な
閃光が。咄嗟にシェルターの中に逃げ込み、扉を閉めた途端に意識を失った三津田。あの閃光は
核爆発だったのか。閉じ込められたシェルターの中で起きる連続密室殺人。犯人は一体誰なのか、
そしてその動機とは――?ミステリフロンティアシリーズ。


なんとなく読み逃していたミステリフロンティア。刀城シリーズを読んでファンになった
からには、これは読んでおかねばということでいそいそと手に取ってみました。
うん。三津田さんらしく、直球の本格ミステリですね・・・ってこの解決編で言っていいのかは
やや疑問に感じたりもしますが^^;ただ、外界から隔絶されたシェルターの中で起きる連続
首吊り密室殺人という、本格ミステリの永遠のテーマのような設定は私の最も好みなところで
あるので、一人ずつ仲間が減って行き、容疑者の候補が狭まって行く課程はなかなか面白かった
です。途中はさまれる三津田と星影のホラー映画の薀蓄や、イタリアンホラーのタイトルの羅列
にはあまりのオタクぶりに呆気に取られましたが(もちろん飛ばし読み^^;)。
あと、シェルターに入る直前に起こった閃光が、すぐに核と結びついたというのがちょっと
説得力に欠けたかな。核戦争中だとかそういう設定があった訳でもないし。唐突な感じが
してしまいました。

最初に言ったように、この解決編は本格ミステリとしてはどうなのかとは思います。でも、
ラストで探偵が説明したことを一つ一つ拾ってみると、この解決編を導くように、実に
細かい伏線が張られているのがわかりました。という訳で、私としてはアリだと思います。
素直に感心しましたしね。普通、あんまりこういうのは好きじゃないんだけど。なんとなく
あちこちで文句つけたいことがあるような気はするんだけど、一応細部にまで説明がつく
ので納得せざるを得ないみたいな(苦笑)。

私がもしこういう状況に直面したら、やっぱり狂気に捉われて行くだろうなぁ。ましてや、
そのシェルターがもとあった場所が狂人に生き埋めにされた人々が眠っていたところだなんて
聞かされた日には。いくら食料と水と読みきれない程の本があったとしても(こういう設定が
出てくるのです)、やっぱり一人は怖い。そういう精神的な恐怖をあちこちで感じさせる所が、
ホラー畑の人らしいな、と思いました。そして、人間が極限状態に置かれた時に感じる、そうした
恐怖の感情があるからこそ、この作品は成立するのでしょうね。

ただ、この作品で一番びっくりしたのは、シェルターのビデオ室に置いてある無数のビデオの
中に、私が学生時代に観て未だにトラウマになっているホラー映画「サンタ・サングレ 聖
なる血」の名前が挙がっていたことです・・・。友人に連れられて行ったオールナイトの映画
の中の一本でしたが、その衝撃映像は今でも忘れられません^^;イタリア映画だったのかぁ。
気持ち悪かったんです、ほんとに。でも出てくる少年(青年?)はえらい美形だったんだよな~^^;

ミステリフロンティアの読み残しもだんだん少なくなってきました。
次はやっぱり鳥飼さんの二冊か・・・制覇まで頑張るぞ~。