ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

高田崇史/「QED~flumen~九段坂の春」/講談社ノベルス刊

高田崇史さんの「QED~flumen~九段坂の春」。

九段坂中学二年の桑原崇は、博識で聡明な理科教師・五十嵐弥生にほのかな思いを寄せていた。
しかし、彼女は突如彼の前から姿を消してしまった。千鳥が淵の桜の木の下で桜の花びらを手に
息絶えた男。一体男は何を伝えたかったのか?崇の胸にはある一つの疑問が浮上する――各々の
青春時代をすごしていた棚旗奈々、小松崎良平、御名形史紋の間でも不穏な事件が起こっていた。
そして全ての糸が一つに繋がる――登場人物たちの不思議な縁が明らかになる、QEDシリーズ初の
連作短編集。


はい。ここ数作見る限り、多くの人から‘マンネリ’だの‘薀蓄が冴えない’だの‘ミステリ
として成り立っていない’だのと非難轟々のQEDシリーズ最新作です。いいもんね。私だけは
このシリーズ擁護して行くもんね。だってタタルさん萌えだもんね。ふん(開き直り)。

ただ、擁護者の私が言っても何の説得力もないかもしれませんが、今回はほんとに面白かった。
連作短編集という形式を私がこよなく愛する所以もありますが、非常によく出来た構成で、一つ
一つの作品としては少し物足りなさを感じるかもしれませんが、ラストまで読むと綺麗に
全ての事件が繋がっている。素直に感心しました。ちょっとづつ登場人物がリンクしており、
レギュラーキャラたちが直接会わないまでも微妙にニアミスしている所も嬉しい。ほうほう、
こんな風に彼らの間には‘縁’があったのですねぇ。不思議な縁というやつですね。
もちろんこのシリーズらしくどの短編にも歴史の薀蓄ははさまれていますが、今回に関しては
薀蓄よりもミステリとしての構成の方に比重がかかっているように思いました。
そして瞠目すべきは、登場人物たちが若い!あのタタルさんでさえ(苦笑)青春している!
御名形に関しては、大学院生というだけあってあんまり変わってませんでしたが^^;
一番びっくりしたのは奈々ちゃんのアノシーンでしたけどね・・・ちょっとショック。あんな形で・・・。むむ、許せん。
作品構成も面白いです。中学生のタタルの春、高校生の奈々の夏、大学生の熊つ崎の秋、大学院生
の御名形の冬。少しずつ時代が下っていって、四季を取り入れた情緒ある設定がなかなか
良かったです。

ただ、中学生や高校生たちがあんなにみんな歴史に造詣が深く、薀蓄を語り合うというのは
どうにもリアリティがなさすぎだと思いましたが・・・現在のタタルさんたちの年齢ならば
まだしも、そんな若さでそんな知識があるかい!といちいち突っ込みを入れたくなりました。

それにしてもタタルさんも中学生の時は初々しかったのですねぇ。まさかあのタタルさんが
誰かに恋心を抱くことがあったとは。いやそりゃ、健全な中学生男子ならばあって当然なん
ですけどね・・・タタルさんに限ってはそれがえらい意外に感じてしまうという(苦笑)。
五十嵐教師が指摘する、通りすがりの奈々ちゃんとのニアミスににやり。こんな風に中学の頃
から縁があったのならば、本編でももうちょっと進展させて欲しいものです。高田さんもそういう
雰囲気を作ろう作ろうとは思っているのだろうけど、タタルさんに問題があるんでしょうね・・・。

それにしても、一段組の割に1000円超えは痛い。ちょっとお金足せば単行本買えちゃう
よ~^^;図書館派の私が珍しく買って追いかけてるシリーズなんで・・・。
まぁでも、QEDシリーズ推奨委員会(勝手に創設。会員一名)としてはお薦めの一冊です。
番外編なので、本編に飽きた方にも手に取ってみて頂きたいです。単独で楽しめますよ^^v
・・・やっぱり説得力ないですか。そうですか・・・(しょぼん)。