ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

東野圭吾/「夜明けの街で」/角川書店刊

東野圭吾さんの「夜明けの街で」。

お盆休み明けのある暑い日、渡部の会社に派遣社員としてやって来た31歳の仲西秋葉。
妻子ある渡部は、不倫する奴なんて馬鹿だと思っていた。しかし、彼女と出会って、それが
どうしようもない時もあると知った。渡部と秋葉は急速に接近し、ついに一線を越えてしまう。
家庭を裏切りながらも秋葉との逢瀬を楽しむ渡部だったが、秋葉は複雑な家庭事情を抱えて
おり、15年前に起きたある殺人事件の容疑者でもあった。「三月三十一日に全てを話す」
と言う秋葉。その日は、15年前の事件の時効成立の日であった――。


う~~~~、どうしちゃったんだ、東野さん。これは酷い。不倫をテーマにしたものだと
いうのは聞いていたので、正直期待はあまりしてなかったのですが、それにしても、期待
してない以上に期待はずれでした(どんな日本語だ^^;)。不倫を馬鹿にしていた男が
不倫にのめり込んで行く課程があまりにも類型的で、安っぽい二時間ドラマか昼ドラマ
かと思いました。不倫が道徳的にどうとか言うつもりはないけど、やっぱり主人公二人に
好感は到底持てなかった。渡部の行動は先が見えてしまい、考え方にはいらいらしっぱなし。
秋葉がだんだん渡部に大胆になって行くのも予定調和過ぎて何かあるのかも、と勘繰って
いたのですが、ラストで彼女の意図が明かされ自分の直感が正しかったと知りました。
クライマックスの自宅でのシーンを読むまではありきたりな不倫もの過ぎて東野さんらしく
ないと思っていましたが、このクライマックス部分は東野さんらしすぎて苦笑。
秋葉はやっぱり東野さんお得意の‘宿命の女’的ヒロインだなぁと思いました。
登場した時名前を見た瞬間からその予感はありましたけどね(雪穂、美冬ときて秋葉
ですからね・・・)。

不倫の要素があまりにもお粗末なので、ミステリ色が薄れて全体の印象も薄っぺらいという
感じになってしまったように思います。確かにあのラストを持って来るにはこういうありふれた
不倫の話にするしかなかったのかもしれないけど、別に東野さんが書くべき物語とは思わない。
読んだばかりの宮部さんと比べてしまうと、やはり心理描写の面では圧倒的に分が悪い。
不倫にのめり込んで行く渡部の心理に共感できるところは一つもなく、単なる男の身勝手
という嫌悪感ばかりを感じました。それは私が女性だからでしょうけど。男性が読んだら
また違った感想なんでしょうね。特に既婚の方ならば。
番外編の新谷の挿話も、別に必要なかったと思う。不倫描写には正直辟易だったところに、
追い討ちをかけるがごとくに入っているので、余計に本書の印象が悪くなりました。
終盤のミステリの真相も実はなんとなく予想がついてしまった。もう一ひねり欲しかったです。

結局東野さんが言いたいことって、不倫なんかすると馬鹿を見る、女は怖い、ということ
なんでしょうか。やっぱり東野さんは女性に対して並々ならぬ思いがあるんだろうなぁ。
ま、本書で一番怖いのは絶対渡部の妻だと思いますけどね・・・ラストのあの赤い卵の
シーンは怖い。怖すぎる・・・。

読みやすいからそれなりにあっという間に読んでしまったのだけれど、その間、眉間には
しわが寄りっぱなしでした・・・。とにかく私には合わない作品でした。
私の中では東野作品ワーストかもしれない。
もともと恋愛小説が苦手なんです。こういう典型的な恋愛ものは特に。しかも不倫だし。
一番苦手なジャンルなのです。すいません。
なので、そういう人間の評価だと思って下さい。

これから読もうとしている方の水を差すような記事ですいません~^^;
一個人の感想として、広い心で受け入れてくださるよう、お願い致します。
恋愛小説を好きな方がこれを読むとどういう感想になるのか、是非お聞きしてみたいです。