ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

佐藤多佳子/「スローモーション」/ピュアフル文庫刊

佐藤多佳子さんの「スローモーション」。

4年前にバイクで事故を起こしてから人が変わったようになってしまった腹違いの兄。22歳
なのに無職で、毎日だらだら過ごしていてだらしがない。小学校教師の父は堅物で、兄とは
折り合いが悪く、あたしにも修道女のような生活を望んでいる。学校では友達だと思っていた
玲子と気まずくなって、グループからはぐれてしまった。家にも学校にも居場所がないあたし。
そんな時、どんな時でもスローペースを保つ同級生の及川周子が兄と付き合っていることを
知って――。


うーむ。これはいつもの佐藤さんの青春小説のように胸に響く物語ではなかった。確かに
学校にも家にも身の置き所のない主人公千佐の心情や、何でもスローテンポな同級生及川
の人物造詣などは上手いとは思うのだけど、何か全てが中途半端な印象が拭えない。青春の
苦さや痛さは感じるのに、それが心に残らないから作品自体もぼやけた印象になってる感じ。
読んでいて、一体何が言いたいのかよくわからなかったというのが正直な所。痛々しい
青春小説を目指したのはわかるのだけど、読んでいてその痛さに何だかいらいらしてしまった。
一番の原因はニイちゃんの人物造詣でしょうね。顔が良いのにニートでだらだらと過ごしている
という‘兄’。読んでいて、桜庭一樹さんの「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」に出てくる兄を
思い出したのだけど、あちらの兄の方がずっと好感が持てた。こちらの兄も及川と出会うことで
少しだけ前向きになれたところは良かったのだけど、結局最後までいまひとつ性格が掴みきれ
なくて何か得体の知れない気味の悪さを引きずってしまった。スローテンポな周子もあまり
好きなキャラではなかったし。好感の持てるキャラが一人もいなかったのもいけなかった・・・。

これを高校生の時に読んだらまた全然違った感想だったのかもしれないけど、今の私には
合わない作品でした。
実は読んだのは少し前で、記事を書くかも迷いました。でも一応備忘録として始めたブログ
なので、内容を忘れてしまわないように書いておくことにしました。だって、そうしないと
ほんとに一月後にはもう内容を覚えてなさそうなんだもの・・・。淡々と物語が進みすぎて、
印象に残る部分があまりない作品だったので。というか、これ書いてる時点ですでに内容
が薄れている・・・おーい^^;;