ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

西澤保彦/「収穫祭」/幻冬舎刊

西澤保彦さんの「収穫祭」。

一九八二年八月一七日、暴風雨の中、首尾木(しおき)村で村民大量殺傷事件が起きた。
被害者十四名のうち、十一名が鎌で喉を切られるという猟奇的な犯行だった。現場に向かった
警官隊が発見した生存者は、通報者である南白亀(なばき)中学校首尾木分校の中学三年生三人
と、同学校教諭が一人であった。事件の犯人と目される人物は逃走後、川で事故死し事件は一先ず
終結したかに思えた。しかし、九年後、一人のフリーライターが事件の生存者に取材を開始すると、
再び同じ手口の猟奇殺人が起こり始める――著者渾身の長編ミステリ。


えー、記事を全て書き終えて投稿しようとしたら間違って全ての本文を消去してしまいました。
同じように書き直す気力が・・・。がっくり。何書いてたんだっけ・・・。泣きそう・・・。
気を取り直して、頑張って書きますです。はい。


えと、とにかくすごい作品でした。西澤さんの中でも黒さも密度もベスト級だと思う。
第一部を読んだ時点で、正史の「八つ墓村」かあるいはそのモデルとなった津山三十人
事件を思いだす人は多いと思う。それを髣髴とさせる大量虐殺シーンは心胆寒からしめる
ものがありました。ぞぞぞ。
のっけからすごい勢いで人が死ぬシーンが出てくるので、その手のスプラッタが苦手な
人にはあまりおススメできません^^;ただ、本格ミステリがお好きな方にはきっと
楽しめる作品だと思います。作中には好感の持てる人物がほとんど出て来ないし、犯人の
動機や行動もとても理解できるようなものではないし、どこまでも読んでいて嫌な気持ちに
なる。それでも、全く読む手を止めさせないリーダビリティで、のめり込んで読みふけり
ました。嫌悪を感じつつも読んでしまう。面白かった。

謎解き部分は素直に感心しました。第一部でも引っかかりを覚えて読んでいたのだけれど、
言われてみれば当然のことなのに、そこに思い至らなかったのが情けない。伏線はかなり
細かく張られていますね。目の前に答えはあったのに。全体の構成も非常に巧いです。
実は、四部で終わりだと思っていたので、最後読むまで省路の母親の部分はうやむやな
ままなのかも、と危惧していたのですが、ちゃんと第五部でその部分が語られるので
すっきりしました。タイトルの意味も最後の最後で明かされる。このタイトルのつけ方は
素晴らしい。この上もなく黒いですけどね^^;西澤さんがにやりとしている姿が目に
浮かびます(苦笑)。

ただ、どうにもこうにも男女の絡むシーンがあまりにも多いのには辟易しました。
特に繭子視点の第二部の彼女の言動はちょっと理解しがたかった。確かに彼女の性癖が
作品全体の伏線になっているとも云えるのですが、ちょっとやりすぎでは。この部分が
受け入れられないという人は結構いるかもしれない。なんだか唐突な感じもあるし。
最後はお決まりのレズビアンに流れてしまう辺り、西澤さんらしいけれども。結局そこから
抜けられないのね^^;

細かい部分で気になる所はいくつか残っているものの、全体としては非常に良く出来て
いると思います。かなり細かく伏線は張られているので、気を抜いて読んでいると読み逃して
しまうかも。多分私がすっきりしてない部分も、きちんと読み込んでいないせいだと思われる
ので^^;
第四部のどんでん返しには「やられた!」の一言です。そこまでするか○○ちゃんよ・・・。
○○の遺志を継ぐ新たな人物も出て来て、きっとこの惨劇はまた繰り返されるのでしょうね。
どこまで暗黒の世界なんでしょう^^;;怖いよ~^^;;

上下二段組605ページ、原稿用紙にして1944枚。かなり分厚いですが、読み出したら
止まらなかったです(さすがに一気読みは出来なかったですが^^;)。
全体に漂う狂気と瘴気に眩暈がしそうでした。嫌悪ばかりを感じるし後味もこの上もなく
悪い。それでも、傑作だと思う。ミステリ好きならば是非一読して欲しい。
年末ランキング、きっと食い込んで来るんじゃないかな。


うーむ、最初に書いてたことと大分違う気がするな・・・まぁ、いいか。
とにかく読み応え十分の傑作ミステリでした。