ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

石崎幸二/「首鳴き鬼の島」/東京創元社刊

石崎幸二さんの「首鳴き鬼の島」。

資産家・竜胆家の私有地・頸木島。「首鳴き鬼」の伝説が伝えられるこの島は、通称首鳴き島
と呼ばれていた。若者向け情報誌の編集者である稲口は、怪奇・怪談スポットの取材を任され、
学生時代のガールフレンドと供に島を訪れるが、島では後継者問題で一族が揃っており、不穏な
空気が流れていた。そして、首鳴き鬼の伝説に見立てた凄惨な連続殺人事件が幕を開ける――
ミステリフロンティアシリーズ。


久しぶりの石崎さん。メフィスト賞からデビューし、同じ石崎シリーズを何作か書いて
姿を消してしまったので、私はてっきりこの方、断筆したのだと思ってました^^;
情報によると、会社員との二束のわらじ生活をされているとか。作家一本で行くほど生活は
安定しなかったんでしょうか・・・。石崎シリーズ、文句言いつつ全部読んでたんで、
密かに続編待ってたんですけどね^^;しばらくぶりに新作が出たと思ったら、随分作風を
変えて来たなと思いました(ミステリフロンティアだからかもしれませんが)。

が、会話文のそらぞらしさは相変わらず。どうもこの方の文章、台詞が浮いてる気がする
んですよね、いつも。キャラ造詣に問題があるとも云えるのですが^^;ただ、石崎
シリーズはギャグっぽさを狙った作風だったので、そのそらぞらしさについ笑っちゃう
みたいな所が好きで読んでる所があったのですが(苦笑)。
今回は全篇シリアスな作風なので、その会話文が余計に嘘っぽい印象を受けました。説明調の
部分がやや冗長で読みづらく、時間もかかってしまったし^^;
謎解き部分はそれなりに面白かったし感心もしたのですが、理系な展開に頭がついていかず、
状況把握が大変でした。文系人間にはこういうのちょっと辛い。でも、影石のキャラはなかなか
良かった。東野さんの湯川先生を思い出しました。理系の頭を持ってる人って尊敬するなぁ
(自分にはないので^^;)。

ただ、クローズドサークル(孤島)、見立て、資産家の後継者問題と、古典ミステリの
王道を狙いつつ、謎解きは現代化学の最先端で解かれるものだから、なんとなくちぐはぐ
な印象は拭えない。これは有栖川さんの「乱鴉の島」と同じ轍を踏んでいるような・・・。
犯人像と犯行動機は完全に金田一少年の世界です^^;っていか、真犯人が最後に
言う一言が、あまりにもお決まりすぎて苦笑い。台詞のセンスがないのが致命的なんだよな、
この人・・・。

あと、男性キャラはまだ好感が持てるのですが、女性キャラ、特に茜には嫌悪感しか覚え
なかったです。印象は最初から良くなかったのですが、終盤で見せる醜悪さには辟易しました。
稲口がどうしてそこまでこの女性のことを好きになるのか理解できなかった。最後にあそこ
まで彼女に執着するのであれば、作中にもう少しその辺りのエピソードも入れた方が説得力が
あったのでは。どうも終盤の展開に説得力がなかったのが気になりました。稲口があんまり
救われないので、ちょっと可哀想になりましたね。あそこまで打ちのめさなくても^^;

題材はモロ好みだし、面白くなかった訳ではないのだけど、全体の完成度とするといまひとつ
という感じ。後味も悪かったし。また石崎シリーズ再開してくれないかなぁ(物好き?)。