ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

三雲岳斗/「M.G.H. 楽園の鏡像」/徳間書店刊

三雲岳斗さんの「M.G.H.楽園の鏡像」。

日本初の多目的長期滞在型宇宙ステーション『白鳳』。民間人の宿泊が可能なこの宇宙ホテル内
で、無重力空間をゆっくりと漂う死体が発見された。分厚い与圧服を身に纏った死体は、肋骨が
折れて内臓に突き刺さっていた。死体の様相は、まるで数十メートルの高さから墜落したかのよう
だった。果たして事故なのか事件なのか――従妹の森鷹舞衣と新婚を装って『白鳳』に訪れて
いた鷲見崎凌は、真相究明に乗り出すが・・・。第1回日本SF新人賞受賞作。


先日三雲さんの「旧宮殿にて」の記事で、ゆきあやさんに「超おすすめ」と教えて頂いた作品。
そう言われたら読まない訳には行きません(笑)。早速図書館で借りてみました。
正直、本を手にした時は「うわ、SFだ・・・しかも宇宙関係!?」と、少々びびりました。
スペースなんちゃら系とか苦手なんだもん・・・これは挫折したらゆきあやさんにどうやって
いいわけしようかとか、そんなことまで頭をよぎりました(苦笑)。


・・・が、あれ、あれれ。お、面白い。確かに凌が語る宇宙科学関係の用語や説明はちんぷん
かんぷんだったのでほぼ飛ばし読みに近かったのですが(コラ)、物語自体はとてもわかり
やすいし読みやすい。もともとラノベ畑で書いていた方というのもあってか、キャラも立ってるし、
ブコメ要素も入っていてすらすら読めてしまった。無重力状態に漂う墜落死体という不可解な
状況設定も魅力的。無重力状態だから、流れた血液も球体で漂うんですね。想像するとなかなかに
シュール。単行本の表紙絵を見ると、なにやらシュールレアリスムの絵を観ているような気分
になりました。

で、どうやって解決するのかなぁと思っていたんですが。ふむふむ。なるほど!!・・・という
風には実はならなかったんです・・・というのも、あまりにも専門的すぎて状況が全く頭に
思い描けなかった^^;多分これ、アニメ化とか映像で表した方が良い作品なんだろうなぁ。
大まかなトリックはなんとなく理解は出来たんですが。とにかく凌の説明では私の阿呆な頭では
理解が出来なかったです^^;いきなり位置エネルギーとかフレミングの法則とか出されても^^;
物理とか化学とか大嫌いだったんだもん・・・。
その場にいた人たちはみんなある程度頭が良い人間ばかりなので、「そうだったのか!」
みたいな反応が出来たんでしょうけども。それに、登場人物たちは宇宙ステーションの構造
とかも理解してるだろうからなぁ。多分理系の方なら「おお!」と思うんでしょうね・・・。

でもこれは私の理解力のなさの問題なので、作品自体にケチをつけてる訳ではありません。
多分状況把握さえできれば、もっと感心する真相なんだと思います。
ただ、個人的にはミステリ部分よりも、SF部分よりも、凌と舞衣の恋愛部分が一番面白く読ん
でたという・・・あれ、読み方間違ってる?^^;

あと、やっぱり動機の面ではちょっと私には理解できなかったです。そんな理由で・・・?
常人には考えつかないことです。ある意味狂っているというか。頭が良すぎるというのも
考えものですね・・・。

ちなみに、読了してもタイトルの「M.G.H.」の意味がわからなくてしばらく悩みました。
副題の『楽園の鏡像』の英訳は『HEAVEN in THE MIRROR』だし。なんで、なんで?と思ったらば
・・・なーんだ。小文字にすれば一目瞭然だったのに。こんなわかりにくいタイトルつけないで
よ~と思っちゃいましたが、ちゃんと最後読むまで意味がわからないようにこういう形にした
のでしょうね。最後まで読んでもピンと来なくて、ある部分を読み返して気付いた私はアホ
としか言いようがありませんが^^;なかなか巧いタイトルですね。

凌は高校生の時にも殺人事件の謎を解いているという描写が出て来るので、是非その話も読んで
みたいです(作品にはなってないのかな?)。
なんだかいろいろ文句をつけた感じになっちゃいましたが、トータルでは非常に面白く読み
ました。ラノベ出身とはいえ、文章はしっかりしていて、変なクセがないので安心して
読めましたし。

やばいです。かなりはまっちゃいそうです、三雲さん。でも、図書館であんまり蔵書を
見かけないんだよなぁ。もっといろんなの読んでみたいです。とりあえず早くダ・ヴィンチ
の一作目が読みたいなぁ。

ゆきあやさん、お薦めありがとうございました!面白かったよ~~^^