ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

有川浩/「塩の街」/メディアワークス刊

有川浩さんの「塩の街」。

羽田空港沖に落下した巨大な白い隕石により、全世界は塩による塩害で壊滅状態に陥られた。
塩で埋め尽くされる街、塩化して死に逝く人間たちの人柱。混沌とした世界で、偶然出会った
秋庭と高校生の真奈は、ひっそりと静かに寄り添い合って生きていた。ある日真奈は行き倒れ寸前の
遼一という青年と出会う。重い荷物を背負って、歩いて海を目指すというこの青年を放っておけない
真奈は、秋庭と暮らす家へと彼を連れて行く。秋庭は捨て猫を拾うかのごとくに人間を拾って来た
真奈に呆れるが、ひたむきな遼一についには折れ、三人で海を目指すことに――第10回電撃
ゲーム小説大賞大賞作品を単行本化。加筆・修正し、番外編を収録。


端的に云って、私には合わない作品でした。うーん、困った。いろいろ書きたいことはある
のですが、多分そういうの一つ一つあげていくと単なる揚げ足とりみたいになっちゃう気が
して書きづらい。とにかく、基本設定の‘塩害’自体にいろいろひっかかるところがあって、
あまり世界に入って行けなかった。多分廃墟と化した世界で少女と保護者の青年がいろいろな
人と出会いながら自分たちの生きる道を探して行く、みたいなScene-1のような話
が続いて行く作品だったらまだすんなり読めていたと思う。でも秋庭が元自衛官だとわかる
Scene-4辺りからこの作品の目指してる方向がなんとなくわかって来て、ちょっとげんなり
してしまった。ああ、また自衛官との恋愛か。もう、正直、有川さんのこの手の作品はこの間
読んだ「クジラの彼」でお腹いっぱいだったのに。この人の中での‘王道的展開’が続いて行く
のだとわかった辺りで、先を読むモチベーションが一気に下がってしまった。400ページ
もあるので、読んでも読んでも終わらなくて困った。でも、私は読み始めた本は最後まで
読まなきゃ気がすまない意地っぱりな人間なので、なんとか最後まで読み通しましたが。
秋庭が真奈を置いて結晶に向かって行くくだりは、B級のSFアニメかなんかかと思いました・・・。
やっぱりこの人、恋愛部分とそれ以外の戦闘部分の乖離が激しすぎて時たまついていけないことが
あるんだよな~^^;






以下ネタバレ注意。未読の方はご注意下さい。












それにしても、人間が塩化してゆく原因が、「見たから」って、そりゃー、あんまりにも
荒唐無稽な論理すぎないか?入江がいろいろ説明してはいたけど、全然説得力なかった気が。
塩が生物のような扱いになっているのはどうも納得いかなかった。それに、塩の柱を
戦闘機で攻撃して、それで被害が減少していくってのもあまりにもご都合主義過ぎ。
世界が滅びる程の被害をもたらしたものがそんなにあっさり片付けられちゃうのは
なんだかやっぱり腑に落ちなかったです。
塩化する人間が具体的に『何を』見たら感染するのかとか、その辺りも曖昧でよく
わからなかったし。基本設定をもっとしっかり書き込んで欲しかったです。

ただ、秋庭と真奈が秋庭の父親と会うシーンや、ラストのノブオ君の本のくだりは
好きでした。大して経験もない若者が、そんなに短期間で本が出せるほどのジャーナリストに
なれるわけがないだろうとツッコミたくはなりましたが^^;せめて10年後とかにしたら
説得力があったと思うんだけどなぁ。





こんな記事ばっかり書いてるのに、私は何故有川作品を読んでしまうんだろう・・・。
もう、「合わない」というのは決定的になってしまったような気がしないでもない。
一応最後を見届けたいので「図書館革命」だけは読みたいと思っているけれども、
今後も同じ様に自衛官の恋愛を書き続けるのだとしたら、もう読まなくてもいいかも。