ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

歌野晶午/「舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵」/カッパノベルス刊

歌野晶午さんの「舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵」。

浜倉中央署の刑事、舞田歳三、34歳。独身。週に一度は兄の理一とその娘・ひとみが住む
実家に顔を出し、食事を食べて帰る。姪のひとみとゲームをしたり、彼女が寝入った後に理一
と飲むビールを楽しみにする毎日だ。彼らが住む平和な街では、近頃相次いで物騒な事件が
起きていた。個人闇金融の老婆が殺され家が丸焼けになり、電信柱に宙吊りになった中学生の
死体が発見されたかと思えば、市議会議員が殺された後には誘拐事件が勃発。一体この街は
どうなっているのか。ちょっぴり生意気で可愛らしい姪の言葉をヒントに、刑事の歳三が
難事件の謎を解決する!歌野晶午流『ゆるミス』新登場!


ゆきあやさんの所で出ているのを知り慌てて予約してようやっと回って来ました。所蔵数が
1冊しかない本の宿命・・・。

で、感想は。


ゆっる~~~~!!


・・・これは褒め言葉です(笑)。
作者自らが提唱する『ゆるミス』の言葉そのままに、まぁ、とにかく全体的にゆるーい空気が
漂っています。ただ、ミステリとしては歌野さんらしくきちんと本格意識があり、どんでん
返しなんかもありあなどれない。でも、ひとみのちょっとこまっしゃくれたおかしな
キャラがコミカルさを演出していて、なんともいえないゆるい空気を醸しだしていていい。
ひとみの口調はとても小学生とは思えないんですが(苦笑)。一見天真爛漫で子供らしく歳三に
甘えたりしているけど、案外するどい視線を持っていて、賢い子供なのがわかる。ラストである
ことに気付いていることでもそれは明らか。うるさいおばさんをやり込める所にもすかっと
しました。タイトルほど探偵としての活躍をする訳ではないけれど、本人の預かり知らぬ所で
意外なワトソンぶりを発揮しているところがいいですね。基本的にはひとみの発言からヒント
を得て歳三が推理をする体裁ですが、実はひとみちゃん、全部わかって言っていたりするの
かも・・・と思えたり思えなかったり(笑)。

各短編が少しづつ繋がっていて、前の事件が次の事件の伏線になっていたりして結構構成も
凝っている。ひとみの母親についてもあまり描写がないので何かあるんだろうなぁと勘繰っては
いたのですが、案の定、ラストで意外な事実が判明。ああ、やっぱりあれが伏線だったのかー
と思いました。

舞田家にはちゃんと生活のルールがあって、各人がそれをちゃんと守っているのがいいですね。
ひとみはちゃんと寝る時間を守るし、歳三はひとみの前では煙草を吸わない。理一はひとみが
寝た後でなければお酒を飲まない(これは歳三も)。彼らの間にある暗黙のルールを自然に
守っていることで、お互いの信頼関係にも繋がっているのだろうな、と思いました。三人の
関係がとても良かった。あと、長女のふたばさんのキャラもかなり好きでした。

歳三がなんだかんだ言って姪っ子をとても可愛がっているのがなんとも微笑ましくて
良かったですね。うんうん、姪っ子ってほんと、可愛いよね。わかるよ、としちゃん
(おばバカ発言)。

歌野流ゆるゆるミステリ。肩の力を抜いて楽しく読める一冊です。これは是非シリーズ化
して欲しいですね。