ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

高田崇史/「毒草師 白蛇の洗礼」/朝日新聞出版刊

高田崇史さんの「毒草師 白蛇の洗礼」。

裏千家教授、大澤信郎の次男・祐二が自宅の茶室で茶の稽古中に変死した。死因は毒物と限定
されたが、鑑識の結果その毒物の種類は特定されなかった。医療関係の雑誌・書籍中心の出版社
で編集者として働く西田は、この事件の調査を上司から依頼され、事件の関係者たちが主催する
お茶の教室に潜り込むことに。始めは嫌々だったが、事件の容疑者筆頭とされる美女・神凪百合
と出会い、彼女の無実を晴らす為、事件解明に力を注ぐ。しかし、無情にも続出する毒殺事件に
真相究明は暗礁に乗り上げ、ついに西田は意を決して隣室に住む奇人・変人の自称 < 毒草師 >
御名形史紋に相談することに―― < 毒草師 >シリーズ第二弾。


毒草師シリーズの第二弾です。西田君の奇人変人隣人(笑)の御名形史紋が今回も飄々と謎を
解きます。やー、今回も面白かった。あのQEDシリーズよりも薀蓄とミステリがバランスよく
盛り込まれていて、非常に読みやすい初心者向けミステリに仕上がっています。正直、タタルさん
の薀蓄はいつも難しくてほとんど頭に入って来ないのですが(苦笑)、このシリーズの薀蓄は
驚く程わかりやすくてするりと頭に入ってくる。今回の題材は千利休。お茶は習ったことが
ないので門外漢ですが、千利休という人物に関しては昔から興味があったので、彼の生涯や
秀吉との関係、不可解な切腹の謎などは読んでいてとても面白かった。昔、野上弥生子さんの
「秀吉と利休」を読んで感銘を受けて、利休のことが身近に感じられていたからかも。彼が
○○○○○だったかどうかという最大の謎に関しては、ラストの名前に隠された秘密に素直に
驚いてしまった。まぁ、相変わらず苦しいこじつけと言えなくもないけど、確かに言われて
みれば・・・と思いました(単純人間)。

しかし、毒殺事件の犯人に関してはあまりにもファンタジックすぎてちょっとどうなのかな、
という気が・・・。現代にこんなことがあり得るのか!?とツッコミたくなりました^^;
神話の世界ならいくらでもあるでしょうけど・・・。実際こういう体質の人がいたら怖い
ですよねぇ。周りもですが、本人が一番・・・。

今回も楽しかったのは西田君と御名形の会話。相変わらずの噛みあわなさについ笑ってしまい
ます。西田君のお人好しキャラは、御名形の相手をするにはぴったりですね。多分御名形も
なんだかんだで彼のことが気に入っているのだろうな。どう考えてもおちょくって楽しんで
いるようにしか見えない(笑)。今回も彼の性格を読んで怪しげな薬湯を処方してあげるしね。

今回は謎の男・御名形史紋の名前の秘密が明かされます。この風貌にはこの上もなく似つかわしい
気はする。それにしても、白いコートに黒い服(上下)に真紅の靴下って格好はどうなんだ・・・。
怪しすぎるぞー^^;西田君が御名形を事件の相談に引っ張り出す為にハーブを使ったカクテルの
お店を秘かに開拓しておく下りが笑えた。それにまんまと乗っちゃう御名形も実は案外単純なの
かも?

前回も書いた気がするけど、QEDシリーズに挫折した方もこちらなら楽しく読めると思う。
今回も百人一首の歌に隠された意外な意味が明らかにされたり、ちょこちょこうるさくない
程度の薀蓄が利いていて高田さんらしさも満載です。

次回は御名形に美人助手がつく模様。西田君はまたしても・・・(苦笑)。彼はどこまでも
こういう運命なんだろうなぁ。そのうち、可愛い彼女が出来ることを祈っておこう。