ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

末永直海/「デパ地下★ガール」/世界文化社刊

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末永直海さんの「デパ地下★ガール」。

老舗デパート、漣百貨店の老エレベーターでエレベーターガールとして働く天未りさこ。中途
採用で勤続半年目。動作もしゃべり方もトロくてお局様には怒られてばかりだけど、仕事は
大好き。でも、夢は『ことほぎ』ならぬ、『ことぶき』退社。ある日現れる王子様を夢見て、
毎日猪突猛進!スイーツ大好き、ひたすら明るく前向きなりさこが繰り広げる怒涛の爆笑
デパートコメディ。


全く何の予備知識もなかったのですが、またしても楽しそうなタイトルと可愛らしい表紙に
惹かれてつい借りてしまいました。何せ、私はデパ地下大好き人間。おそらくこれはデパ地下で
働く販売員が日々奮闘し、美味しそうなデパ地下グルメがわんさかと出て来るお話に違いない!
と勝手な思い込みで読み始めました。
その思い込み、実際には大部分が間違っていたのですが。何せ、主人公は販売員じゃなくて
エレベーターガール。あれ、デパ地下は?といきなり肩透かしを食らった気分でした^^;
しかも、この主人公の性格がどうも普通の人とは大幅にズレている。のんびりしているを
通り越して全く周りの空気が読めない。ここでこれ言っちゃダメでしょ!と思うようなことも
上司やお客さん誰彼構わず口にしてしまう。はっきり云って、前半部分は彼女の性格に好感が
もてず、イライラしました。叱られても全く気にしないマイペースな性格は利点といえばそう
なんでしょうけど、こんな空気読めない人間とは友達になりたくないよなぁと思いました。
でも、中盤で明かされる彼女の家の事情を知って、全てが腑に落ちました。浮世離れしてる
のにもちゃんと理由があって、彼女は彼女なりにその状況を打開しようと思っていたと知り、
一気に高感度がアップ。それにしても、家の電気代には呆れましたが^^;それからは
彼女の行動が素直に可笑しくて、他人との会話にもついつい噴出してしまうことばかり。
「ありえないっつーの!!」とツッコミを入れたくなるような言動が次々飛び出して、飽きる
ことなくあっという間に読み終えてしまった。まぁ、もともとページ数も文字数も少ないけど^^;

美味しそうなスイーツもちょこちょこ出て来ますが、何といってもりさこが作る、たらいプリンに
たらいクレームブリュレ、そして極めつけはプールプリン!!(家庭用のビニール製
プールにプリン液を流し込んで作ったもの)アホですね~。しかも、その中でほんとに泳いじゃう
んですよ。ありえないでしょ!でもウケた。気になったのはりさこが服を着たままだったのか脱いだ
のかですが・・・どっちもどっちだなぁ^^;いくら長年の夢だったからって、ほんとにやるのがすごい^^;
彼女のバイタリティーには驚かされっぱなしでした。まさにファンタジー世界のお姫様のような
リアリティのなさ。そこがぶっとんでて面白かったです。でも、たらいクレームブリュレは食べて
みたくなった。これももちろん『空腹小説』に入るでしょう(笑)。

気に入った男性に勝手にあだ名をつけて読んで、一人で盛り上がって妄想に走るのも可笑しかった。
でも、彼女のいいところは相手に妻や婚約者がいるとわかった時点で潔く諦めるところ。あっさり
しててそいういう所は好きでしたね。悪く言えば惚れっぽいというか、すぐに次に目移りしちゃう
ので誰でもいいのかよ、とツッコミは入れたくなりましたけどね^^;


単純に楽しくて笑えるエンターテイメント作品でした。ツッコミ所も満載ですが^^;
これはきっと映像向きだと思うな。ドラマ化したら新たなコメディエンヌ発掘になることでしょう。
テレ朝のナイトドラマ辺りでやってくれないかな。
ポジティブシンキングの塊みたいな主人公に大いに元気をもらいました。こういうお仕事小説
はやっぱり読んでて楽しいですね。思わぬ拾い物でした。デパ地下行きたくなった(笑)。