ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

「ハナシをノベル!!花見の巻」/講談社刊

「ハナシをノベル!!花見の巻」。

豪華執筆陣による創作新作落語9作を収録。小説と落語の豪華なコラボレーション作品。


落語好きの作家たちが新作落語を書き下ろすという企画に興味津々で、以前から読みたいと
切望していた作品。落語が題材の作品を読んでは「実際の落語を聴いてみたい」と思うのですが、
結局今に至るまできちんと見に行ったことがありません。本書を読んで思ったのは、やっぱり
落語は実際噺家が演じるところを見るべきものなんだろうな、ということ。読んだだけでは
細かい手のフリや動作がわからないので、どうしてもピンと来なかったりしたので^^:
演劇のようなト書き方式なのですらすら読めるのだけど、さらっと流し読みしてしまって
意味がつかめなかったりすることが結構ありました。実際演じているところを見たらまた
違う印象を受ける作品が多いような気がします。実際の高座にかけられることを前提と
して書かれているので、その辺は仕方のないところなのでしょうけどね。ただ、時間の
関係で付属CDはまだ聴いてません^^;返すまでに聴きたいなぁとは思っているのですが。



以下、各作品の短評。ちょっと体調が悪いので短めに^^;


田中啓文「真説・七度狐」
この狐はいい奴なのか悪い奴なのかよくわかりませんね^^;恩返しのつもりが恩を仇で
返すことになる、という皮肉なオチが効いた作品。

北野勇作「寄席の怪談」
オチは割とオーソドックス。怪談話にはありがちな展開ですね。

田中哲弥「病の果て」
これは気に入りました。ほろりとさせる人情噺になっているところが良いです。

田中啓文「時たまご」
まさか落語にタイムスリップものを持って来るとは。鯨さんの作品かと思っちゃいました(笑)。

我孫子武丸「貧乏花見殺人事件」
前半は『長屋の花見』を元にしたものですが、後半はミステリ作家らしい展開に。清六・ホーム
のネーミングにはウケてしまった。

浅暮三文「動物記」
これは一番好きかも。シートン先生とポン吉の会話が軽妙でテンポが良く、面白く読めました。
宇宙人まで『犬』と言い張るポン吉にはツッコミたくなりましたが(苦笑)。

牧野修「百物語」
畠中さんの「こいしり」にも百物語が出て来たので、何の符号かと思いました^^;
オチはダニエル・キイスの作品を思い出しました。

飯野文彦「戯作者の恋」
途中から夢と現実がごっちゃになってしまって混乱しました。それを狙って書いているのかも
しれませんが・・・。オチもちょっと意味がよくわからなかった。

森奈津子「正直課長」
落語っていうより、コントにした方が良さそうな。こんな上司がいたら迷惑千万ですねぇ・・・。



現代落語なので読みやすい分、細かい部分で少々無理してる印象もありましたが、なかなか
面白く読みました。どの作家も実際演じられることを前提にしているので試行錯誤の連続だった
ようです。演劇とも全く違いますからねぇ。でも、それぞれに楽しんで書いていることも伝わって
きました。作家界って落語好きが多いんですねぇ。
落語通の人がどう評価するのかも聞いてみたい気はしますね。

花見の巻という副題がついているからには、おそらく第二弾も出るのでしょうね。
次はどんな作家がどんな新作落語を書いてくれるのか、楽しみです。