ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

大崎梢/「スノーフレーク」/角川書店刊

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函館の高校三年生真乃は、四月から推薦で東京の四年制大学に進学が決まっていた。真乃は小学
6年生の時に亡くなった幼馴染の少年・速人の死をいまだに引きずっていたが、卒業式を間近に
控えてネットの掲示板に無意識に彼の死を忘れるという書き込みをしてしまう。しかし、そんな
真乃の前に、ある日亡くなった速人に似た青年が現れる。6年前、一家心中に巻き込まれ車ごと
海に転落した速人の家族。他の家族の遺体は上がったが、速人の遺体だけは見つからないまま
だった。もしかして、あの時速人だけは助かって、今も生きているのではないか――。切なく
ほろ苦い青春ミステリー。


紅子さんからご要望がありましたので、一応記事にしておきましょう。私も結構気に入った作品
でしたし。函館に住む女子高校生のじんわり心に沁みる青春ミステリーです。
ただ、復活の記事でちょこっと触れましたが、ラストを読むまではどうも私の好みじゃないな、
との印象しかなかったのです。真乃を始めとする登場人物のキャラ造形も、ストーリーの展開も
どこかぎこちなく、不自然さがずっと付きまとっていて入り込めなかった。そもそもヒロインが
何を考えているのかさっぱり見えて来ないので、感情移入の仕様がないというか。真乃の友人
である琴美やシーコと真乃との関係もなんだかぎこちない感じだし。真乃と亨の関係もすっきり
しなくてイライラ。亨は明らかに真乃が好きなんだろうけど、真乃の亨への態度は思わせぶり
だったり、肩すかしをくらわせたり、はっきりしなくて酷い態度にしか思えなかった。シーコが
亨を敵対視している理由もよくわからなかったし。速人の従兄弟・勇麻も得体が知れなくて不気味
な存在だったし。なんだかすべてのパーツがどこかズレてて噛み合ってなくて、読んでいて
非常に居心地が悪いというか、ムズムズしながら読んでました。

でも、ラストまで読んで、その不自然だと感じた部分の理由がほぼすべて明らかにされて、印象が
がらりと一変しました。やはり一番衝撃的だったのは速人に対する真乃の気持ちですね。これは速人
が抱えるある秘密とも関わってくるのですが。その事実を知ったことで、途中読んでいて不愉快に
感じた部分が全て誤解だったとわかりました。速人や亨に対する真乃の真意が全く描かれなかった
ことも、それを知ったことですとんと腑に落ちました。ミステリとしてそれほど瞠目すべき手法が
使われている訳ではないのだけど、なんとなく惰性でページをめくっていたようなところがあった
ので、ちょっとこれにはやられてしまった。そして、真相はとても切なかったけれど、未来に向けて
一歩を踏み出した真乃や亨の姿にとても爽やかな気持ちになりました。大崎さんの作品にはそんなに
ミステリとしての期待をしていなかったのだけど(酷)、これはとても心に響く青春ミステリー
でした。ラスト読むまではヒロインの真乃のことがどうしても好きになれなかったんだけど、最後
はこれからの彼女を応援してあげたい気持ちになりました。一番大好きな『彼』と、明るい未来を
過ごして行って欲しい。



ところで、作中で出てきたスノーフレークスノードロップ。画像を探してみました。


https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/b/belarbre820/20010101/20010101014630.jpg


https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/b/belarbre820/20010101/20010101014640.jpg


どちらがどちらかおわかりになる方いらっしゃるでしょうか?


正解は、上がスノーフレーク下がスノードロップだそうです。
私はスノーフレークの名前は知らなかったのですが、調べてみるとスノーフレークの方が
見たことのあるお花でした。というか、すずらんにそっくりだからそう思うのかも
しれませんが^^;スノードロップの方も野原とかでよく見かけてそうな感じ。
どちらも小さくて可憐な白いお花ですね。そしてどちらも春を告げるお花なのだそう。
ラストまで読んでこのお花の名前をタイトルにした理由がわかった気がしました。