ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

高田崇史/「カンナ 奥州の覇者」/講談社ノベルス刊

イメージ 1

高田崇史さんの「カンナ 奥州の覇者」。

伊賀・出賀茂神社の社伝を持って失踪した諒司から連絡が来た。吉野を抜けて熊野に入った所で
何者かに襲われ、社伝を奪われた上、怪我をしてしまった。社伝を追って今は岩手にいるが、社伝
を取り返す為に甲斐に助っ人に来てほしいという。急ぎ岩手に向かった甲斐と貴湖とほうろく。
そこでついに諒司と再会し、社伝を取り返す計画を立てる。一方、坂上田村麻呂に成敗された
蝦夷の指導者、アテルイの降伏に疑問を覚えた甲斐は、史実に隠された衝撃の真実に気付く――
カンナシリーズ第四弾。


本書の最後で高田ファンには嬉しい展開があると聞いて、何冊か借りた予約本の中で真っ先に
手に取りました(笑)。今回は坂上田村麻呂アテルイという全く興味範囲外の題材だった為、
最後を読む為だけに読んでいたと言っても過言じゃないかも(苦笑)。でも、歴史パートはともかく、
それ以外の部分では結構物語が動きました。諒司と甲斐も再会するし、甲斐と聡美一緒のシーンも
あったし、カンナの意味も判明するし。甲斐と貴湖の関係にもちょっぴり変化が訪れます。
人間関係の面では、貴湖V.S.聡美という、女の戦いがなかなか楽しめました。聡美がこんなに
強かな女だとは・・・(絶句)。貴湖の弁が立つのはわかっていたけれど、その貴湖が押される
くらいですから、相当の傑物です。怖~ッ!と思いつつ、甲斐を巡って火花を散らす女同士の
戦いはかなり面白かったです。多分貴湖の中の甲斐への感情もここで花開いていったのでは
ないかなぁ。そして、甲斐と貴湖が急接近するエピソードも後半に出てきて、にやにやしちゃい
ました。歴史パートがいまいちぱっとしなかった分、人間関係その他の部分ではなかなか盛り
だくさんで楽しめました。
ただ、甲斐にとってはかなり苦い結末を迎えることになりました。甲斐は慕っていたある人物
から裏切られてしまいます。好意を持っていた人物が実は間接的ではあるけれども、敵と
繋がっていることも判明し、立て続けにショックを受ける甲斐が気の毒になりました。
甲斐が社伝と諒司を追って岩手に言ったことを敵に漏らした人物に関しては、まんまと作者の
スリードの罠に引っ掛かってしまいました。まぁ、候補は二人しかいないので、もしかして
そっちかな?とも思ったのですが・・・。

アテルイに関してはもう読み飛ばしに近かったので特に感想なし(おい)。

タイトルのカンナに関しては三つの意味が隠されていたのですね。天神・雷神・龍神
だから何?って感じがなきにしもあらずではありますが・・・^^;;

そして、本書最大の目玉はやっぱりラストのあのカップル(?)と甲斐のニアミスでしょう。
名前は出てきませんが、描写から一目瞭然。相変わらず人の話聞かないで自分の言いたいこと
だけ言って去ってくし(笑)。もちろん、隣にはあの女性が控えめに寄り添っております(笑)。
あの人は当然、友人の鴨志田翔一の実家の神社だと知ってて訪れてるんですよねぇ。なんで何にも
言わないんでしょうか。ご両親とかに挨拶したりしたのかしら(なさそう)。
何はともあれ、高田ファンには嬉しい別シリーズとのリンクでありました。翔一と甲斐が兄弟
なだけに、これを待ってたところもありましたからねぇ。まぁ、あの登場のさせ方だと、今回
だけの特別って感じがしなくもないですが、またどっかで甲斐と再会させて欲しいです。