ミステリ読書録

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田中啓文/「蓬莱洞の研究―私立伝奇学園高等学校民俗学研究会〈その1〉」/講談社ノベルス刊

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田中啓文さんの「蓬莱洞の研究―私立伝奇学園高等学校民俗学研究会〈その1〉」。

私立田中喜八学園高等学校に入学したばかりの新入生、諸星比夏留。実家が古武道<独楽>の
宗家の比夏留は、幼い頃から稽古一辺倒で女の子らしいことを経験したことがなかった。そこで
高校入学を機に、女の子らしく楽器をやってみようと思い立ち、吹奏楽部に入部しようと考えて
いた。しかし、吹奏楽部を探してクラブ棟をさまよっているうち、フルートの音がするのに気付き、
近寄ってみると、みすぼらしい小屋に辿りつく。すっかりそこが吹奏楽部だと勘違いした比夏留は
フルートを弾いていた老人に入部希望を申し出るが、そこは吹奏楽部ではなく、怪しげな民俗学
研究会であった。なんだかんだで言いくるめられ入部することになった比夏留だったが、民俗学
知識は皆無。しかし、学園の裏手にある「常世の森」で学生の失踪が相次ぎ、民俗学研究会の
メンバーで調査に行くことに。そこは、龍の住む洞窟があり、その洞窟のどこかに蓬莱郷という
理想郷があると噂されていた。調査に入った比夏留たちがそこで見たものとは――?


えー、長らく積読棚に眠っておりました本書ですが、なぜ急にひっぱりだしたかと言いますと、
これが私がブログを始めてから数えて1000記事目になるからです。なぜ1000記事目に
この本なのかという理由はこちらの記事のコメント欄をご参照になっていただけるとおわかり頂けるかと。
ちゃんと約束覚えていたでしょ。多分ご本人も覚えていないでしょうけれど^^;
まぁ、1000記事といっても、Indexなんかもあるので、純粋に自分の文章のみの記事というのは
もう少し少ない筈ですが、1000近くもこんな駄文を書き連ねてきたのかーと思うと感慨深い
ものがありますね。読んで下さるみなさまにどれだけ感謝してもしたりないくらいです。
ありがとうございます。

と、前置きはそれくらいにして、感想を。
簡単に言ってしまうと、伝奇(UMA)+学園ミステリ+駄洒落で成り立っているという感じ
でしょうか。なんとも田中さんらしいバカ要素満載の学園ものだなぁと思いました。今回は一作目
ということで、キャラの顔見せ的な印象。まだそれぞれのキャラの個性は完全に出し切れて
いない感じですね。特に保志野君に関しては、まだまだ謎な部分が多い。彼が民俗学の天才
ってことも、いまいち伝わって来なかったし(だいたい、出番がそんなにないからね)。
民俗学の話になると突然キレるキャラになったり、毎回比夏留の呼び方が変わったり、なんだか
不思議というか、掴みどころのないキャラクター。この辺りは二作目以降、読んで行くうちに
馴染んで行くのかなぁ。
特筆すべきはやっぱり比夏留ちゃんのキャラでしょう。なんというか、強烈。見た目は細いのに
実質体重220キロって!!学校の体重測定の時どうしてるんでしょうか。あれって、220
キロも計れないよねぇ。毎回体重計ぶっ壊して、測定不可能とかになってるのかな^^;
そして、彼女の食べるシーンたるや、ギャル曽根も真っ青。とんでもない痩せの大食いもいた
ものです。古武道<独楽>の必殺技を使うシーンも壮絶です・・・歩く凶器ですね、彼女は・・・。

民俗学の真相に関してはほとんどが駄洒落。これを笑い飛ばせるか、憤るかで作品の評価は
大きく分かれるかもしれません。私はもちろん、脱力しつつウケました(笑)。ほとんどが
こじつけに近いものでしたが、ここまで考えつくのもある意味才能だよなぁと思いました(苦笑)。
まぁ、さすがにカルヴィーノ・河童絵・備前ストッキングは苦しいというか、くっだら
ね~~!と思いましたけど^^;
まぁ、なんとも田中さんらしい切り口の学園もので、脱力しながらも楽しく読めました。









以下弱冠のネタバレあり。未読の方はご注意ください。
















ラストの『黒洞の研究』にはいくつか腑に落ちない点が残りました。犯人に襲われた比夏留の手には
犯人自らが噛みちぎった指が残された訳ですが、このことがその後の犯人の身体的特徴として出て
こないのはおかしいのでは。いくら犯人が一目瞭然だとは云え、指が一本欠けているという表記は
必要だったと思うのですが。あと、カルヴィーノ氏が見たという『キダ』というイタリア料理店の
広告っていうのは何だったのでしょう?ラストに出て来る演歌歌手のポスターが関係があるのかとも
思ったのですが、よくわかりませんでした。これも駄洒落??読んだ方にご教授頂きたいです・・・
(だって何度読んでもわからなかったんだもん~^^;)。











ところで、表紙の人物、途中まで保志野君だと思い込んでいたのですが、これは比夏留
ちゃんなのですね。完全に男だと思っていました・・・。中のイラストでも、保志野君だけ
出て来ないので、彼のビジュアルがどうも思い描けなかったです。二巻以降に出てくるので
しょうか。続編はどんな民俗学のトンデモ真相が飛び出して来るのか、楽しみです。



と云う訳で、この本を読むきっかけとなった月野さんにこの記事を謹んで捧げさせて頂きます。
(えっ、いらない?^^;)
1100、1200・・・キリ番記事で読んで欲しい作品がある方、いつでも受け付けて
おります(いねーよ)。