ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

森谷明子/「矢上教授の午後」/祥伝社刊

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森谷明子さんの「矢上教授の午後」。

東京都下、多摩地方に位置する大学のキャンパスの一角にある通称「オンボロ棟」こと第一研究棟
の最上階の研究室の主・矢上教授。夏季休暇中にも関わらず、毎日出勤しては効きの悪い空調にも
めげずにのんびり読書に勤しむ。そんなロハスな午後を過ごす矢上教授の元に、最近毎日通って来る
女子生徒・御牧咲。彼女の目的は、矢上教授の研究室の膨大な古今東西取り混ぜたミステリ叢書だ。
矢上教授は無類のミステリ好きなのだ。ある日、咲は矢上教授にこの夏研究棟で起きている不可思議
な出来事の謎を解いて欲しいと言って来た。ある教授の研究室に飾ってあった、フィリピン土産の
竹の楽器が汚損されていたのだという。それに加えて、学園祭の人気投票で入賞した団体に贈られた
表彰状が各研究室共同のゴミ箱に捨てられていた。二つの出来事に関連はあるのか?そんな夏休み
の研究棟が、突然の落雷で電気もストップ、携帯も繋がらない‘密室状態’に!研究棟に閉じこめ
られた10人。そんな中で殺人事件が――英国風‘ロハスな’コージーミステリー。




すみません、弱冠(相当?)黒べる子記事になっております。読む予定がある方、記事を
読まれることを控えて頂いた方が良いかもしれません(一応忠告)。












ええとですね、全体的に、なんだかやたらに読みにくかったです。作風は軽めのコージーミステリ風
なんだけど、章立てが細かく視点がころころ変わるし、登場人物は多いしで、ごちゃごちゃした
印象を最後まで引きずってしまった。森谷さんの作品を読むのは4作目ですが、どれも好印象で
本書も雰囲気からして好みそうだったので期待していたのですが。途中何度も挫折しかけて
しまいました。でも、挫折本の記事書いちゃった後だし、さすがにここで挫折はできない・・・
と意地で読み通しました^^;でも、ラストまで読んでも、どうも楽しめる要素がないままに
終わってしまった感じでした。謎解きも非常にわかりにくくて、謎が解明された後のすっきり
した感じもなかったです。装丁やら雰囲気やらは好みそうだと思ったんだけどなぁ。でも、
カバー折り返しで謳われている英国風コージーミステリってのはどうなんだろう。私はそんなに
優雅な印象は全く受けなかったのだけど・・・確かに矢上教授の人物造型だけはそれらしいもの
ではあったのですが、その肝心のキャラ造形が中途半端なせいで、非常に印象が薄い。これは
どのキャラを取ってもそうなんだけど、それぞれのキャラの書き込みが不足しているせいで、
誰が誰だかだんだん混乱してきてしまった。こういう群像形式にするには登場人物が多すぎだし、
完全に書き分け不足だと思いました。文章力はもっとある方だと思っていたのだけど、地の文
が誰の視点なのかもわかりにくかった。もうちょっとすっきりと読ませて欲しかったです。
一章をあそこまで短くする意味もわからないし。
それに、出だしでは重要人物なのかと思った御牧咲のキャラの扱いも酷い。こんな役割なら
出て来ない方が良かったくらい。確かに終盤で矢上にある頼まれごとをされて、事件解決に
協力したとも云えますが、それもそれ程必要な要素とも思えなかったし・・・。矢上教授が
彼女のいる場所を突きとめた真相もかなり肩すかしでした。

そもそも、冒頭で出て来る『日常の謎』も、ミステリ好きの興味を引く程の謎か?と思った
んですよね・・・。矢上教授がなんで楽器が汚れてたくらいで食いつくのが疑問でした。
ミステリー好きな人間が、楽器が汚れてたり賞状が捨てられた位で面白い謎だとか思うかなぁ。

肝心の殺人事件の方の真相も、矢上教授の説明が非常にわかりにくくて、理解するのに何度も
読みなおしてしまいました(結局いまひとつ理解できていないような・・・^^;)。
まぁ、毎度の如く、これは私の理解力の問題もあるとは思うのですけれど。加害者と被害者と
もう一人出て来る人物の人間関係からしてわかりにくかったんですよね^^;なんだか、いちいち
読んでいて疲れる作品でした。冒頭の日常の謎をちょこちょこ解決していく連作形式とかに
した方がはまってたんじゃないのかなぁ。作風やキャラと殺人事件がマッチしてなくて、ちぐはぐ
な印象がありました。
矢上教授のキャラはもう少し書きこむといいキャラになりそうな気はするんですけどね。でも、
続編出るとしてももう読まないかも・・・(黒べ)。

大学ノートをイメージしたような装丁はとても好きでしたけどね。
どうも最後まで乗り切れず、ちょっと残念な読書となりました。