ミステリ読書録

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三津田信三/「水魑の如き沈むもの」/原書房刊

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三津田信三さんの「水魑の如き沈むもの」。

怪奇幻想小説家の刀城言耶は、民俗学者で日本のあちこちを放浪している先輩の阿武隈川烏から
奈良県の波美地方で伝統的に行われている珍しい雨乞いの儀式の話を聞き、興味を引かれる。
言耶は、怪想舎の女編集者・祖父江偲と共に、阿武隈川の口利きで儀式を見学させてもらう為、
奈良に赴くことに。しかし、儀式の当日、二人は思わぬ事件に遭遇してしまう。神男と呼ばれる
儀式の主役が、儀式の最中、孤立した船の中で死体となって発見されたのだ。船を曳く船頭に
疑いの目が向けられるが、現場の状況から犯行は不可能だと見倣された。犯人がわからぬまま、
儀式に関わる人物が更なる惨劇に遭う――不可解な連続殺人事件の裏に隠された驚愕の真実
とは――シリーズ最新長編。


えー、読んでからちょっと時間が経ってしまったので、なんだかすでに細部がおぼろげになって
きていて、感想どうしようって感じになってます・・・^^;しかも、読んだ時も年末で
ばたばたと忙しくて、なかなか集中して時間が取れず、思った以上に時間がかかってしまって
話の全貌が掴みきれないまま解決編に突入しちゃった感じだったので、余計に感想まとめるのが
難しい。
いや、面白かったんですよ。面白かったんだけど、どうも事件が起きるまでがやたらに長くて、
中だるみした感じがなきにしもあらず。私が細切れに読んでたせいもあるけど、それにしても、
最初の殺人が起きるまでに300ページくらいかかってるんだもの^^;;雨乞いの儀式の
説明やら儀式に関わる人間たちの人間関係やらも複雑で、ちょっと混乱したところもあったし。
一章の言耶と烏と偲の会話部分なんかはコミカルで読みやすいし、とても楽しめたのです。でも、
その後の章から、前作『山魔~』(と、これの前で読んだ『密室~』)のあの読みやすさは一体
どこに行っちゃったんだ?と疑問に思う位、読みにくさを感じました。この読みにくさは一作目の
『厭魅~』に非常に近いものがあるな、と感じていたのですが、なんてことはない、作品自体の
時系列も中のある登場人物も『厭魅~』と繋がっているんですね。だから、両作品は切っても
切れない密接関係にある作品なわけで、似た印象を受けるのも必然なのかもしれません(え、
読みにくさは関係ない?^^;)。でも、名前とか地名の読みの難しさも復活してるし、どうも
一作目と被る印象が私にはありました。ただ、これは多分私の読書環境によるところも大きい
ようで、ちょろっと書評巡りした限りでは、ほとんどの方が読みやすいと感じたようです。アレ?^^;
おそらく、なかなか自分の集中力が続かなかったのが敗因かと・・・。
本書の後に『厭魅~』の事件が起きるという時系列になっているようです。最初、サギリさん
という名前が出て来た時に「またサギリ?」と思ったんですよね。この作者、よっぽどサギリ
って名前が好きなのかしら、と。まさか、あの一族の血縁者だとは。

それにしても、水使龍爾の悪役っぷりは堂に入ってましたね。出て来る度にいちいちムカつき
ました。儀式に関わる何人かの宮司たちのキャラの書き込みにどうもバラつきがあって、印象に
残る人物とそうでない人物の差が激しかったです。最後まで印象が薄かったのは水分水庭
どっちがどっちか、今考えてもわからない・・・(おい)。水分みくまりって読むことが
最後まで自分の中で定着しなかったです・・・なぜだろう・・・章が新しくなる度にルビ振って
あったのに・・・(あほすぎ^^;;)。

謎解き部分はさすがに良く出来ていると思いました。カタストロフという点ではちょっと衝撃度が
足りなかった感じもありますが、過去に起きた宮司の死も含めて、ほぼすべてが腑に落ちる真相
でした。ある宮司が驚愕の表情を浮かべて死んだ謎も、その真実ならばなるほど、と思えました。
でも、謎解きまでの経緯が長すぎて、正直覚えてない伏線がたくさんありました・・・。
あからさまな伏線もいくつかありましたけどね^^;そこまで丁寧に書き込んだからこそ、ラストの
謎解きが生きてくるというのもわかるのですが、全体的な印象としてはやっぱり冗長な感が
否めませんでした。









※以下ネタバレあります。未読の方は絶対読まないようにして下さい。














実は、最初の謎解きで○○が犯人だと知った時、すごくがっかりしたのです。その直前に
読んだ『密室~』と真相が被っているんですもの^^;でも、そこで終わらないところが
さすが三津田さん。確かに、その人物ってどうなったのかなぁと思ってはいたのですが、
こういう登場の仕方をするとは、良かったのか悪かったのか・・・悪いに決まってるんだけど、
生きていたことは良かったというか^^;でも、本当にそうなのかどうかはわからないような
曖昧な書き方をしているので、真相をどう読み取るかはその人次第ってことなんだろうなぁ。
で、気になったのは終章の2ページ。私は、てっきりりゅうま(字が出ません^^;)の嫁が
その犯人なんだろうと思ったのですが、書評巡りをしていたら、そうとも取れるし、もう
一人の人物が実は女だったというオチなんじゃないかと書いている人がいました。確かに正子
って名前が意味深ですよねぇ・・・。それに、そう考えると、表紙の絵も腑に落ちる、と。
なるほど~!と思いました。まぁ、普通に考えれば犯人の方なんだと思うんだけど・・・。
そういう捉え方が出来るとは全く考えていなかったので、目からウロコでした。まぁ、犯人の
方だったとしても、もう一人の方の消息が書かれていないのは気になりました。




















ちょっと自分としては中だるみした感じがあっていつもより読むのが大変だったところが
あるのですが、本格ミステリの謎解きの面白さは十分味わえる作品だったと思います。
できれば、もうちょっとコンパクトにまとめて欲しかったって感じですかね。でも、シリーズ
ファンなら楽しめるのではないでしょうか。