ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

滝田務雄/「田舎の刑事の闘病記」/東京創元社刊

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滝田務雄さんの「田舎の刑事の闘病記」。

熱帯なみの暑さが続く中、田舎の警察署では黒川刑事の指示の元、エアコン28℃設定が保たれ、
警察署内はうだるような暑さだった。そんな状況の中、子供用ビニールプールで遊ぶ部下の
白石の姿を見た黒川が激怒。白石はそんな黒川から逃れる為バミューダパンツ一丁で逃亡して
しまう。バカな部下を捉える為、警察署を飛び出した黒川は、近くの川で泳ぐ白石を発見する。
その姿に逆上した黒川は白石を捕まえに川に入り、格闘を開始。その様子を警察に通報され、
黒川は管轄外の警察官、狛沢刑事に捕まってしまう。なんとか誤解を解いた黒川だったが、翌日
黒川たちが騒動を起こした川で男性の他殺体が発見される。被害者は殺される直前、携帯電話で
知り合いの記者と電話をして、「刑事の狛沢」という言葉を残していた――(「田舎の刑事の
夏休みの絵日記」)。田舎の刑事のユーモアミステリ、第二弾。


第一弾がとても面白かったので、早速続編を読んでみました。うはは。こちらも前作に負けず
劣らず面白かった。ミステリとしては相変わらず説明描写がわかりづらいものが多く、いまいち
ピンとこない作品が多いのですが、今回も黒川×白石の上司と部下コンビのやりとりの面白さで
何度も噴き出しながら読んでしまいました。いやもう、ほんとにこの二人はベストコンビネーション
というか、宿命のライバルというか(!?)アホバカコンビというか・・・とにかく二人の
やりとりがいちいち可笑しい。なんなんですか、この二人は。もう、このまま漫才コンビ
組んだ方が良いんじゃないかしら。まぁ、そんなことになったら黒川さん、ほんとに神経性
胃炎で死んじゃうと思いますけど(苦笑)。今回、タイトルからし『闘病記』とつく訳で、
一体黒川さんに何が!?とドキドキしながら読んだのですが、彼が病院に入院した原因は
案の定な理由でした^^;事件となると鋭い推理を開帳する黒川さんですが、神経は蜘蛛の
糸よりもか細いものなんですねぇ。出来の悪い部下や人が悪い上司、にっこり笑って黒川を
恐怖のどん底に突き落とす奥さんといった個性的で素敵な(笑)仲間たちに囲まれて、彼の
デリケートな胃はあっけなく限界を超えてしまったようです。前作よりも更に弱々になった
黒川さん、前作よりも更に泣き虫になってしまったような気がします・・・なんか、もう、
黒川さんが他の人にいじられて神経をすり減らす度に哀れで哀れで・・・笑っちゃうのよね、
これが(酷)。ついつい、もっとイジメちゃえ!とか思っちゃう私って奥さん並に酷い?(笑)。

残念だったのは全体的に奥さんの活躍が控えめだったこと。一体どこまで黒さがパワーアップ
するかな、と楽しみにしていたのですが、その辺りは比較的控えめでちょっとがっかり。
もっともっと、奥さんには黒くはじけて欲しいんだけどな~(黒川さんには悪いけど(笑))。
でも、『田舎の刑事の台湾旅行記での黒川夫妻のやりとりがめちゃくちゃ面白かったので、まぁ、
良しとするかな。黒川さんの外国語恐怖症とそれをイジる奥さんの会話が最高に笑えました。
特に「斉藤寝具店」のくだり、笑ったなー。誰かに聞いて用意して来たんでしょうねぇ・・・
ぷ、ぷぷぷ。やばい、思い出すともう・・・^^;台湾は行ったことがあるので情景も浮かび
易かったし、故宮博物館の白菜とか、馴染みのある物も出て来て嬉しかったです。ミステリ
としてもこれは理解しやすかったし、好きなお話でした。
まぁ、今回も奥さんのコスプレ(?)はちょこちょこ見れたので楽しかったです。冒頭の
『~夏休みの絵日記』では月光仮面(!)姿、ラストの『~冬休みの絵日記』ではサンタさん姿で
登場。ほんとに、この人面白すぎるな。いろんなアルバイトをして薄給の黒川の家計を助けて
いる辺り、内助の功って言っても・・・過言じゃ、ない、かなぁ???なんとなく、そのお金は
自分の趣味に使っているような気がひしひしとしているから、やっぱり、過言かな(笑)。
でも、何気に一番黒いのって、部下の赤木のような気がしないでもない(笑)。最初の頃に
比べて、黒白コンビに対する態度がだんだん冷ややかになっているのがわかるし^^;適度に
距離を置きつつ、ちょこちょこ黒川をイジ(メ)る発言をする辺り、意外に計算高い男なのかも。


もう、キャラ読み小説としては最高に面白いですね。ユーモアたっぷりで、キャラと会話だけで
十分楽しい。ミステリとしてはアレ?と思う所もあるのですが、そんなのは些末なこと。
肩の力を抜いて気楽に読める娯楽ミステリ。笑える作品が読みたい時にオススメの一冊です。