ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

ディック・ロクティ/「眠れる犬」/サンケイ文庫刊

ディック・ロクティ「眠れる犬」(石田善彦訳)。

セレディピティ(セーラ)・ダルクィストは14歳の高校生。女優の祖母とロスで二人暮らしだった。
ある日、彼女の愛犬が失踪、セーラは警察へ届け出た。だが、警官が相手にしてくれるはずもなく、
冗談半分に紹介されたのが42歳の私立探偵レオ・ブラッドワースだった。そしてこのときから14歳の
少女と42歳の探偵の奇妙な道中が始まった。しかし、この愛犬失踪の陰にはマフィアがらみの
恐るべき謀略の罠が張り巡らされていたのだ。新鋭が放つ傑作ハードボイルド。’86年ネロ・
ウルフ賞受賞作(あらすじ抜粋)。


今月の一冊に困っていたところ、月野さんからオススメ頂いたのがコレ。隣町の図書館で閉架
書庫扱いになっていたので引っ張り出してもらいました。なかなか年季が入ってそうな作品。
結構分厚いなー、大丈夫かなーと読み始めは戸惑ったのですが、読み始めたらなかなか読み
やすくて、さくさくとページが進みました。途中から人物関係がわからなくなって混乱した
ところもあるのですが、概ね一冊通して楽しめました。なんといっても、くたびれた中年探偵
ブラッドワースと、ぴちぴちの14歳にしてちょっぴり大人びたコケティッシュな少女セーラ、
二人のキャラと関係が良かった。しかもちょっぴり純愛が入ってるところがまた女心をくすぐる
設定でして。シチュエーションはちょっとリュック・ベッソン監督の『レオン』ぽいかなーと
思いながら読んでました(大好きな映画!)。
物語は、セーラ(本名はセレンディピティ。舌噛みそうな名前だな^^;)の愛犬、ブルテリア
グルーチョが突然いなくなってしまったことから始まります。警察に話しても相手にしてもらえず、
代わりに紹介された私立探偵が、もう一人の主人公、レオ・ブラッドワース。でも、ブラッドワース
には依頼を受けてもらえず、セーラの依頼はブラッドワースとオフィスを共同に使用していた同じく
探偵のキャスパーに回ることに。このキャスパーが謎の死を遂げたことから、二人は行動を共に
することになり、次々と危険な目に遭う羽目になる、というのが大筋。ブラッドワースとセーラ、
二人の一人称視点で物語は交互に綴られていきます。この構成も読みやすくて良かったですね。
ブラッドワースは案外抜けているところがあって、大男って設定の割には弱くて、攻撃されると
すぐに倒れちゃったりして結構情けない。でも、セーラとしては、そういうところが女心や
母性本能をくすぐられるのか、割と早い段階からこの中年探偵に好意を寄せていますね。最初は
セーラのことを鬱陶しい小娘としか思っていなかったブラッドワースですが、彼女と行動を共に
して行くうちに、少しづつ彼女への想いが変化して行くところが良かったですね。歳の差が
ありすぎて、最初はまさかこの二人の間にそういう感情が芽生えて行くとは思ってなかったので、
これはなかなか嬉しい展開でした。特にラストシーンは好きだな。セーラの為に、あるプレゼント
を用意して持って来たブラッドワースがなんだか微笑ましくて。

でも、一番好きなのはセーラがピンチに陥ったブラッドワースを助ける為に奔走するくだり。
無我夢中で無免許運転で車を運転してブラッドワースの元に駆けつけ、命がけで彼を助ける姿が
かっこいいのなんの。おいおい、逆じゃないのか、普通、とツッコミたくもなったけれど、
ちゃんと逆バージョンもクライマックスに用意されていたのでほっとしました(苦笑)。

ブラッドワースの元からソト兄弟によって連れ去られた時のセーラと兄弟のやりとりも好き
でした。悪党の筈なのに、全然憎めないソト兄弟のキャラが好きでした。それだけに、その後の
展開はショックでした。弟のファンがクロゼットにセーラを閉じ込めるくだりが切なかった。
ショックといえば、セーラの愛犬グルーチョのあるシーンにもショックを受けましたが・・・。

犬がきっかけの事件とはいえ、なんで『眠れる』なんだろう、と首を傾げていたのですが、ラスト
で一応その意味もわかります。とはいえ、その部分だけだとちょっと弱いかなぁという気もした
のですが。

ラストと訳者あとがきを読んで、この二人がその後どうなるのかすごく気になったのですが、
どうやら続編があるようですね(ネットで検索したら出て来た)。セーラが探偵になっている
らしいので、数年後のお話なのかな??二人の関係がどうなっているのかすごく気になります。
図書館にあるかなー。

少し事件のからくりがわかりづらいところもあったのですが、なかなか楽しく読める一作
でした。月野さん、ご紹介ありがとうございました^^
みなさまの情報だけに支えられているこの月イチ企画。
まだまだオススメ本情報募集中であります。


ちなみに、現在すでに絶版だそうで、画像が探せませんでした・・・。