ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

倉知淳/「こめぐら 倉知淳作品集」/東京創元社刊

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倉知淳さんの「こめぐら 倉知淳作品集」。

会社では部下から渋くてクールで完璧な上司と慕われている課長の東堂。影のあだ名は、ある
有名な劇画の主人公――世界を股にかける完全無欠の狙撃手(スナイパー)の名前だ。しかし、
そんな完璧な会社マンの東堂には裏の顔があった。そして、今日はその裏の顔を知るメンバー
たちが集うオフ会なのだ。会社を退社した東堂は、いそいそと東銀座のオフ会の会場へと赴く
のだった。今日はオフ会初参加の新人がやって来る日だ。それに、メンバーの一人が特別な
趣向を用意していると言っていた。一体どんなものなのか――(「Aカップの男たち」)。
デビュー以来書きためた短編をまとめた倉知淳の集大成、第一弾。


久々に倉知さんの新刊が出ました。しかも一挙に二冊!!アンソロジーでちょこちょこと
作品は読んでいたけれども、やっぱりこうして一冊にまとまった作品が読めるというのは
嬉しいですねぇ。しかも、本書のラストにはボーナストラックとして猫丸先輩シリーズも
一作収められている上、作者ご自身による一作ごとの作品解説までついていて、なんとも
美味しい短編集となっております(※注:出版社の回し者ではありません)。
ちなみに、タイトルの『こめぐら』に意味はまったくないそうで。なんとなくの雰囲気と
イメージでつけたそうです(二冊の片割れなぎなたも同様)。なんか、このゆるい
感じが倉知さんらしくて良いなぁ。こういうタイトルのつけ方もある意味斬新だよねぇ。
そして、収録作も全体的にゆっるーーい感じの作品が多いです。これって本格?って首を
傾げるものから、フェチ系あり、メタ系あり、どうぶつの森系あり(!?)、バラエティに
富んだ変格的な作品集でありました。手元にはすでに『なぎなた』も入手済みなので、併せて
読む予定ですが、どうやら本書が全体的にコメディ系であるのに対し、そちらはもう少し硬質の
本格ミステリが多いようですね。そちらもとても楽しみ。
意外だったのは、あとがきを書かれるのが今回初めてというところ。あとがきを書かない作家という
のは割とたくさんいるけれど、倉知さんもそうだったとはね。あんまり意識したことなかった
けど、そういえばいつもあとがきなかったっけ、と今更気がついたのでした。でも、あとがきの
口調がちょっと猫丸先輩っぽくて、ついつい倉知さん=猫丸先輩のイメージで読んでしまい
ました(笑)。なんだか、作風そのまんまな感じの方なんだなぁ、とちょっと嬉しくなって
しまいました。それぞれの自作解説の内容も面白かった。



以下、各作品の感想。

『Aカップの男たち』
これはアンソロジーミステリ愛。免許皆伝!メフィスト道場で既読。っていうか、この時の
記事を読み返してみたら「決して好きな作品ではないし、二度と読みたいとも思わない」と
結構辛辣なことを書いているのだけれど・・・まさかまたコレを読む羽目になるとは(苦笑)。
改めて読んでも、感想は一言しかありません。『キモいーーーー!!!』でもさ、世の中、きっと
こういうフェチな人ってたくさんいるんだよね。彼らは彼らで幸せなんだから、他人がとやかくいう
話じゃないよね。確実に、私よりも一年の○○代にお金かかってそうだね、彼ら・・・。ある意味
インパクト抜群のキモミスです。『鍵』をお題にして、なぜこういう話が思いつくのか・・・謎。

『「真犯人を探せ(仮題)」』
えーと。これって真面目に書いたのかな、倉知さん・・・。私でも犯人当てられちゃいましたけど・・・。
あ、でも、アパートの部屋の配置までは気づきませんでしたけど。でも、このアパートの構造を
最初に説明しないのは完全にアンフェアなんでは・・・って作中でもツッコミが入るので、
そういう細かいところ気にする作品ではありません。そこも作者の仕掛けの一つという、なんとも
人を食ったオチが待っています。脱力すること必死。

『さむらい探偵血風録』
ツッコミ所満載のビデオ映像に、いちいち語り手がツッコむところが笑えました。そして、私も
語り手同様、辻斬りの犯人消失の謎がどういうオチになるのかが気になって気になって(苦笑)。
・・・おーい、このオチ、某Aさんの『T』じゃんかーー・・・。以前にも他の作品でこのオチの
パクリものを読んだことがあったけど、またか!と思いました(どちらが先に書かれたのかは
わかりませんが^^;)。脱力。

『偏在』
珍しくどシリアスで、ミステリでもない作品。主人公の僻みや妬み満載の心情描写にうんざり
しながら読んでましたが、ラストは目が点。完全にメタの世界。倉知さんらしくないけど、
ご本人曰く、『アイデアが思いついちゃったから、書いてみたくなっただけ』だそうです。
うーん、でも、こういうのはあんまり好きではないですね。なんとも救いのないオチにげんなり。

どうぶつの森殺人(獣?)事件』
いちいち作者の注というかツッコミが入るミステリ(笑)。ほんとに、ツッコミ所満載で楽しいです。
しかし、ミステリの真相にはこれまた脱力・・・お、おーい、あの延々と続いたアリバイ調べは
一体・・・。まぁ、読んだ方のほとんどがラストにはずっこけることでしょう(苦笑)。
ほんとに、これがあの天下のミステリーランドに採用されなくて良かったと思うよ・・・。

『毒と饗宴の殺人』
やっほーい、猫丸先輩シリーズだぜい!(変なテンション)猫丸先輩シリーズって、途中から
殺人が起こらない日常の謎系にシフトしてたんですね。『過ぎゆく風はみどり色』を読んだのが
ずっと後だったから気付いてなかったです。短編で殺人事件が起きる作品はかなり珍しいらしく、
シリーズの短編集に収録出来なかったのだそうな。
ミステリとしてはどうということもないのですが(^^;)、やっぱり猫丸先輩が出て来るって
だけで読むテンションが上がります。先輩のちょこまかと動きまわって憎めない人柄はやっぱり
愛らしい。ビンゴでもらったうさぎのぬいぐるみに頬ずりするのが不自然に見えない30男なんて、
猫丸先輩くらいだよね(笑)。



どの作品も倉知さんらしいゆるさで(『偏在』だけは異色でしたが)、楽しく読めました。
のっけから『Aカップ~』再びでちょっと面食らったところもあったのですが^^;
『あとがき』に桜庭一樹さんの読書日記でお馴染みの、東京創元社のK島さんが出て来るのが
ちょっと嬉しかった。『あんまり厚くない方が短編集はかわいいですもんね』のセリフに
ウケました。確かに、さくっと読める分冊形式の方が短編集は嬉しいかもしれないけどね(苦笑)。
久々に倉知ワールドに浸れて嬉しかったです。そういえば、どなたかが、『どうやって生計を
立てているのか謎な作家』の一人が倉知さんだと書いていましたが、ほんとに、こんなに寡作で
どうやって食べてってるんですかねぇ。作家だけの収入じゃ無理そうな気がするんだけど・・・
余計なお世話か(苦笑)。
なぎなた』も楽しみ、楽しみ^^