ミステリ読書録

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乾くるみ/「セカンド・ラブ」/文藝春秋刊

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乾くるみさんの「セカンド・ラブ」。

一年前の元日、正明は内田春香と出会った。正明が勤めるハラモク工業の先輩、紀藤に誘われた
スキー旅行がきっかけだった。紀藤の彼女の友人だった春香に初めて出会った時から、正明は
彼女に夢中だった。その旅行を境に、正明と春香の仲は急接近し、付き合い始めた。幸せの
真っ只中、ある日正明はふとしたきっかけで春香とそっくりの顔をした美奈子と出会う。夜の
商売をしている美奈子と良家の子女である春香。性格も生い立ちも正反対の二人の間で、正明の
気持ちは揺れ動く――『イニシエーション・ラブ』の衝撃、再び。


前作スリープは苦手なSFものだった為、思わぬ黒べる作品となってしまったのですが、今回は
イニラブのような恋愛ミステリーだったので、前作の読みづらさは一体どこへ?という位、
読みやすくて、あっという間に読み終えてしまいました(まぁ、ページ数も多くはないですが)。
ただまぁ、イニラブ同様、最後のミステリー部分に至るまではかなり古臭い恋愛小説の体裁。
社会人同士の恋愛って多分こんな感じで進んで行くんだろうな~という過程をそのまま進んで
いるような展開が続いて行きます。ヒロインの春香と同じ顔をした双子の妹・美奈子と主人公
との出会いからその後の展開も、世の中の二股男の恋愛をそのまま体現しているような感じ。
まぁ、要するにステロタイプの恋愛ドラマがストーリーの95%を占めている訳で、恋愛小説
が苦手な人にはちょっと読むのがしんどいかも。読みやすいので私はそれほど退屈でもなかった
のですが、主人公正明が恋愛に奥手なタイプで、終始相手の春香のペースで恋愛が進んで行く
ので、どうしても彼女に翻弄されているようにか感じられず、なんだか嘘の恋愛を延々と
読まされているような嫌な気分になりながらの読書でした。
結果として、その印象は間違ってはいなかったのですが・・・。二人の女性の真相は、はっきり
云えば全く意外性のないものであり、読んだ人のほとんどが拍子抜けする筈です。イニラブと
比較した場合、おそらくほとんどの人がガッカリするんじゃないでしょうか。ただ、今回も
本当の意味での衝撃は、そこではなく、ラスト2行。作者が本当に仕掛けたかったことが、
そこまで読んで初めて理解出来ると思います。
ただし、実を言うと、私、最初読んだ時は意味がわからなかったんですよね^^;「どういう意味?」
って、しばし最後の2ページを読み返してしまいました。で、やっと何度か読んで意味がわかって。
「あー、そういうことかーーー」って感じでした^^;イニラブの時もそうだったんですよね~^^;
何度か読み返して、んで、また冒頭に戻って。今回も、やっぱりもう一度冒頭部分を読み返して
しまいました。確かに、きちんと繋がるような書き方になってるんですよね。その辺りはさすが
だな、と思いました。それに、最後の最後でやっと春香の能力に納得がいきました。一体なんで
そんな設定にしたのかな~と、そこだけ浮いてる感じがすごくしてたんですよね。確かに、まぁ、
衝撃といえば、衝撃のラストなのかな、と最後まで読んで思いました。でも、イニラブほどの
インパクトはなかったかなぁ。やっぱり、二番煎じって印象は否めないのではないかなぁ。
まぁ、タイトルからし『セカンド・ラブ』ですしね・・・。
後味の悪さも踏襲してますけど。ほんと、女って怖いなぁって、読んだ人みんなが思うんじゃ
ないかしら。いや、私はこんなことしろって言われても無理ですけど・・・。






以下、ネタバレあります。未読の方はご注意ください。


















腑に落ちないのは、やっぱり動機。結局、春香はなぜあんな面倒なことをしてまで二人一役なんて
やってたんでしょうか。単なるお遊び?妹が不憫で・・・って性格でもないだろうし、小遣い稼ぎ
なんかする必要ないくらいお金は持ってるだろうし。まぁ、その辺りは最後で正明自身からも
疑問が出ているので、作者は敢えて書かないでぼかしたんでしょうけど・・・それにしても、
なんだか消化不良。先輩と二股かけて、どっちが自分にとってメリットのある相手か見定めて
いたってのも、なんだかなぁ。ほんと、春香の人物造形は、なんだか東野さんの女性ヒロインを
読んでいるようで、終始ムカムカしっぱなしでした。結局、電話番号をなかなか正明に教え
なかったのも、先輩との二股があったからなんですかねぇ。それを「毎日電話して欲しいから」
とか言えちゃう神経って、一体・・・理解できん。怖い、怖い。

※昨日気になっていた部分を書き漏らしたので追記しておきます。
もう一点、気になったところは、指輪の件。美奈子と一緒に買いに行った時に9号をはめて
7~8号辺りがちょうどいいのではと言われて7号を買ったのに、なぜ春香がはめた時にぶかぶか
だったのか。店員さんだってプロなんだから、7~8号の指と5号の指を間違えたりしない
んじゃないのかな。まぁ、最後に実際はめてみなかったのは、そこを誤魔化す為だったの
だろうけど。っていうか、指輪のサイズをわざと間違えて、春香は何がしたかったんでしょう??
美奈子とは別人ってところを強調したかっただけなのかな。双子なんだから、別に指のサイズが
同じでもおかしくはないと思うけどなぁ・・・。














はっきり云えば、イニラブの衝撃再び!っていう、煽り文句はいい過ぎじゃないかなぁ。ラストの
フィニッシングストロークは確かにヤラレタ!とは思いましたけれど。取り敢えず、最後まで
読んだら、もう一度冒頭部分を読み返してみることをお勧め致します。なかなか上手い表現で
きっちり伏線は張られていると思いますので。でも、後味悪い。冒頭で結婚するカップル、そのうち
絶対幸せに破綻が来るな(黒べるこの予言)。