ミステリ読書録

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今野敏/「同期」/講談社刊

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今野敏さんの「同期」。

懲戒免職になった同期の公安刑事が、連続殺人の容疑者に。「教えてくれ。おまえはいったい何者
なんだ」男たちの前に立ちはだかる最も高い壁―組織の論理。その壁を突破するのは、刑事たちの
誇りと絆。現時点での集大成ともいえる最新警察小説、登場(あらすじ抜粋)。


今野さんの、多分、ノンシリーズ(?)。二年くらい前のこのミスでランクインしていて、気に
なっていた作品なのですが、予約に乗り遅れた為開架待ちしていた作品。先日やっと開架で発見。
今野さんの作品って、シリーズものが多いので、どうも今から新シリーズに手をつけるって気に
なれなくて、なかなか読めずにいたのですが、これは単独で読めそうだし、評価が高かったので
楽しみにしていました。

なるほど、なるほど、今野さんらしい警察ものって感じで、さくさく読めるし、要所要所で
痛快だったりじーんとさせるポイントも挟まれていて、飽きさせないストーリー展開にぐいぐいと
引き込まれました。基本的に警察ものってそんなに好きなジャンルじゃないし、しかも暴力団
抗争関係のものって更に苦手なので、最初の方はちょっと退屈なところもあったんですけどね^^;
でも、主人公宇田川が、同期の蘇我の為に、身の危険も社会的身分も顧みずに捜査に突っ走る姿
が清々しく、始めはあだ名通りの『ボン』そのままの若造刑事だったのが、事件と共に成長し、
一人前になって行く姿に嬉しくなりました。一つの事件を通して、短期間でここまで成長を遂げる
刑事ってのも珍しいんじゃないだろうか。最初と最後では別人みたいでしたもの^^;特に、
警察の上層部と真っ向から対立し、最終的にやり込めちゃうところは胸がすくような思いが
しました。その根本にあるのが、『刑事としての矜持』とかではなく、単純に『同期を救う為』
というのがいいじゃないですか。自分の身分がどうなろうとも、同期の命を救いたいという
宇田川の熱い思いが伝わって来て、こちらまで胸が熱くなりました。それほど仲が良かった訳
でもなく、それどころか、なんとなく反抗心すら芽生えていた存在でも、やっぱり、同期って
特別なんでしょうね。同期って、どこか『同志』ってイメージがあります。私も、前の会社の
同期とは本当に仲が良くて、一緒に飲みに行っては会社や上の人間に対する不満をぶつけ合って
いました。ほんと、『同志』というか、『仲間』あるいは『戦友』とすら言ってもいい存在だったな、
同期って。同期がいなければ、多分もっともっと仕事に行くのが辛かった気がする。一緒に頑張って
いる同じような立場の存在がいるから、私も頑張ろうって気持ちになれたもの。だから、宇田川の
気持ちはとても共感出来ました。ガンバレ、宇田川~と思いながら読んでました。ラストで、
ある人物からのある勧誘に対するキッパリした返事と態度にもすかっとしたな。宇田川、良くぞ
言ってくれた!と嬉しくなりました。蘇我とはいる場所が違ってしまったけれど、二人が目指す
ものは、実は一緒なのかも。性格は正反対だけれど、二人がどこか似ているのは、本文中にも
あるように、やっぱり二人が一刻でも同じ時を過ごした『同期』だからなのかもしれませんね。

宇田川の想いを汲んで一緒に捜査に乗り出してくれる植松や土岐や、上司の名波係長なんかの
脇役キャラ造形も良かったです。最初は嫌なヤツかと思っていた滝田課長も、最後はいい印象に
変わったし。宇田川の熱意が、みんなの気持ちを動かすところが読んでいて痛快でした。


今野さんらしい、痛快で胸が熱くなる警察小説でした。面白かったです。