ミステリ読書録

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アレックス・シアラー/「チョコレート・アンダーグラウンド」/求竜堂刊

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アレックス・シアラー「チョコレート・アンダーグラウンド金原瑞人訳)」。

舞台はイギリス。選挙で勝利をおさめた“健全健康党”は、なんと“チョコレート禁止法”を発令
した!国じゅうから甘いものが処分されていく…。そんなおかしな法律に戦いを挑むことにした
ハントリーとスマッジャーは、チョコレートを密造し、“地下チョコバー”を始めることにした!
チョコレートがこの世からなくなったら、あなたはどうしますか?禁チョコなんて、ダイエットの
ときしかしたことない!読めばきっと、チョコレートが食べたくなる…(あらすじ抜粋)。



2011年一発目の月イチ海外作品。大して予備知識はなかったのですが、開架で海外小説棚を
物色して今月の海外モノを探していた時に、ぱっとタイトルが目に入って、手にとってみました。
確か、どなたかが記事にしてらしたような気もするんですが。もうじきバレンタインも近いですし、
何より、チョコレートに目がない人間にとって、このタイトルと装幀を持ってこられたら、もう、
読むしかないだろうって気になってしまい、借りてみました。
でもって、全く知らずにいたのですが、記事書くに当たってネット検索していたらば、映画やら
アニメやらになってる有名作だったと知って驚きました^^;読書メーターでもかなり読んでる人が
多くてビックリしました・・・どうりで、タイトルに聞き覚えがあった筈だわ、と後から納得した
という(苦笑)。
お話の筋としては、イギリスで、国民の健康を促進する政策を掲げた『健全健康党』が政権を握る
ことになり、政府は国民にチョコレートを筆頭に、甘いものを一切禁止する法令を出したことから、
それに反発する二人の少年を中心とした反逆者たちが、チョコレートと自由を求めて政府と対立
して行くという反骨精神たっぷりの冒険小説。一切の甘いものが禁止され、もしカケラでも持って
いるところを政府に発見されでもしたら、捕まって強制的に『再教育施設』に連れて行かれ、政府
の考え方に沿った生き方をするように『洗脳』されて廃人にされる未来が待っています。独裁的
な政府の考え方は、まさにナチスドイツのよう。ただ、チョコレートを食べたが為に、廃人のように
されてしまう未来。怖いですね~^^;でも、そんな恐怖を顧みずに、チョコレートが食べられない
という理不尽に対抗する為、立ち上がる二人の少年の数々の冒険にワクワクドキドキ。チョコレート
が手に入らないなら作ればいい、との考え方から、原材料を手に入れ、作り方を調べて、本当に
『密造』してしまうところには目が点。麻薬やお酒の密造の如くに、そこには政府の目が光り、
逮捕という危険が伴うというのに。彼らの勇気ある行動には頼もしい気持ちになりましたが、無謀
な挑戦にはいつもハラハラさせられました^^;彼らに味方するバビおばさんや古書店主のブレイズ
さんといった脇役キャラも個性的で勇敢で、とても好感が持てました。バビおばさんのお店が
『手入れ』にあってからの展開には一喜一憂。スマッジャーが帰って来た時の態度にはハントリー
や彼の家族同様ショックを受けました。でも、スマッジャーはスマッジャーのまんまで、嬉しかった
です。それに、彼がハントリーのことを一度も疑ったりしなかったことも嬉しかった。彼の両親が
一人捕まらなかったハントリーに『裏切り者』という疑惑の目を向けたように、スマッジャーも
そういう気持ちになったのかな、と心配になったので・・・。
施設に入っていた時の心理描写は描かれないので、もしかしたらそういう気持ちになったことも
あったかもしれないけれど、戻ってきた彼がハントリーに一切非難の言葉や恨みがましい言葉を向け
たりはしていないので、やっぱり彼は相棒のことを心の底から信じていたのだと思いたいですね。

終始飽きさせないストーリー展開で、のめり込んで読んでしまいました。面白かった~。
終盤は予定調和な大団円なのですが、それがまた気持よくて、すかっとしました。最後のページ
『謝辞とあとがき』まで作品の一部になっている構成も素敵でした。

チョコレートやスイーツ大好き人間としては、この作品のように甘いものが禁止される世の中なんて、
考えるだけでも恐ろしい。甘いものは、いつだって人の心を幸せにしてくれるものですからね。
甘いものを排除した世の中なんて、それだけで生きる価値が半減しちゃう気がするくらいです。
この作品の中で特徴的なのは、『チョコレート』=『自由』ということ。チョコレートを得る
ことは自由を得ることと同義なんですね。政府に監視され束縛された生活から解放される為に、
立ち上がる人々の勇気と勇敢な行動に、こちらまで奮い立たされる気持ちになりました。

少年たちが主人公なのでYA向きなのは間違いないでしょうけれど、大人でも十分楽しめる快作でした。
チョコレート片手に読みたい作品ですね。児童書体裁なので、とても読みやすかったですしね
(カタカナ名による人物の混乱も、今回はほとんどありませんでした)。
ストーリーがとてもわかりやすいし映像にしやすいので、映画化向きなのは間違いないですね。
適当に選んだ割に、とても有意義な読書が出来て嬉しい。
これも月イチ企画のおかげでしょうね。続けなければ。
読んでる間、無性にチョコレートが食べたくなりました(チョコ好きならば、きっと誰でもそうなる筈)。
明日チョコレート買いに行こう・・・(笑)。