ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

飴村行/「爛れた闇の帝国」/角川書店刊

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飴村行さんの「爛れた闇の帝国」。

生きる希望を失った高校生と、独房に監禁された兵士の意識がリンクした時、凄絶な運命の幕が
開く! 日本推理作家協会賞を受賞した異才が放つ、ホラー・ミステリー!(あらすじ抜粋)。


飴村さん、初の単行本。とはいえ、内容的には『らしさ』いっぱい。まぁ、どこまで行っても
救いのないこと。粘膜シリーズ同様、現代パートと戦時中(?)パートが交互に出て来て、最後に
それが驚くべき繋がりを見せる、という構成。戦争ものが苦手な人間なので、毎度のことながら
戦時中パートではテンション下がり気味で読んでたんですが、徐々に明かされて行く過去の真相
には目を瞠りました。そこにあるのはどす黒い憎悪のみ。いやー、読んでて気が滅入る滅入る。
人間、そこまで非道になれるもんかね、と暗澹たる気持ちになりました。尚人の肉体的変化にも
ビビリましたが・・・こわ、怖いよーーー(><)。尚人と現代に生きる正矢が心を通わせる
くだりも、粘膜シリーズで同じような設定が出て来たよな~と思いながら読んでいたのですが
・・・最後の最後でそこまで落とすのかーーー!と読み終えてゲンナリ。似た境遇の二人という
ことで、心が通じ合った筈なのに・・・そこを逆手に取るかの如くに暗黒オチにする辺り、飴村
さんって、ほんとにひとが悪いよなぁ(苦笑)。『人間には誰でも爛れた闇がある』・・・
成程ねぇ、と思いました。正矢パートも尚人パートも、どちらの真相も結末も、人の心の醜さが
さらけ出された救いのないものでした。正矢は、知る真相すべてがどんどん悪い方向へ向かって
行った挙句、追い打ちをかけるように最後に明かされた父親の正体を知って、一体どうやって
今後生きて行くんだろう、と思ったりしたんだけど・・・結末まで読んで、杞憂だったことが
わかりました・・・。
真相も意外だったし、構成も巧いとは思ったのですが、とにかく読んでいて嫌悪感しか覚え
ませんでした。特に、尚人パートの拷問が・・・生理的に受け入れ難いものがありました。
痛い描写ダメなんだって!ほんともう、勘弁してよー!と半泣き状態で読んでました(><)。
晃一の祖父・慧爾の件で一点気になる箇所があったので、後述します。








以下、ネタバレあり。未読の方はご注意ください。

















慧爾は人の血を飲んで35歳の肉体に定期的に若返っていたのに、なぜ病気で死んだの
でしょうか・・・肉体は若返っても、内蔵機能まで若返る訳ではなかったってことかな。
肉体だけが若返るって設定がどうもご都合主義的に感じてしまって、腑に落ちない感じが
してしまいました。

晃一の悪者への豹変っぷりにはほんとにゲンナリさせられたのですが、自主制作映画が
主演女優のせいで撮影が中断されているとか、美代子の『あんたの子供だったら良かった』
発言とか、細かい伏線が張られていたことには素直に感心しちゃいました。まぁ、伏線には
感心しても、晃一への嫌悪感は倍増でしたけど・・・^^;














ミステリとしては、それなりに面白かったのですが、読後感は最悪でしたね・・・^^;
黒くてエグくてエロくても、その中にユーモアセンスのある粘膜シリーズの方がやっぱり好き
だなぁ。富蔵やヘモやんみたいな面白キャラがいないと、やっぱり何だか物足りない。
という訳で、次はまた粘膜シリーズが読みたいかな(笑)。