ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

三木笙子/「人形遣いの影盗み」/東京創元社刊

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三木笙子さんの「人形遣いの影盗み」。

代議士夫人の影が盗まれた!?にわかには信じがたい事件の調査を義母より依頼され、しぶしぶ
乗り出すことになった高広。芝居好きが高じて邸内に個人劇場まで建ててしまうほどの好事家の
屋敷で、その事件は起きていた。ありえない事件、ワヤンと呼ばれる幻惑的な影絵芝居、そして
怪盗ロータスの気配…。なぜ、どうやって影は消されたのか―(表題作)。心優しき雑誌記者と
美貌の天才絵師。ふたりの青年の日常を描いた掌編二編を含め、明治の世に生きる人々の姿を
人情味豊かに描いた五編収録の作品集。好評“帝都探偵絵図”シリーズ第三弾(あらすじ抜粋)。


高広&礼のホームズ&ワトソンコンビが明治の世を舞台に活躍するシリーズ第三弾。なかなか
コンスタントに続刊が出て嬉しい限り。二作目がいきなりスピンオフ的な作品になって、ちょっと
面食らったところもあったのですが、三作目は正規のシリーズに戻りまして、高広と礼の
探偵譚が五作収録されております。ただ、作品の長さにはばらつきがあり、掌編、短編、中編
と、バラエティに富んだ形の作品集。個人的な感想としては、メインの表題作の中編よりも、
掌編ニ作の方が楽しめたかも・・・(苦笑)。一話目の短編『びいどろの月』では、主役の
二人よりも、芸者の花竜のキャラの方がインパクトありました(苦笑)。粋な姐さんって感じの
キャラがとても気に入りました。芸者さんって、なぜかこういう気が強くて、芯の通ったタイプの
女性が多いですよね。そういう性格じゃないと、花柳界のような所では生き残って行けないから
かな。
二話目の『恐怖の下宿屋』は、高広の下宿先で起きた些細な出来事を描いた作品。大家の桃介
の料理がめちゃくちゃ美味しそう。美味しいご飯がついたこんな下宿先だったら住みたいなぁ。
雑巾がけを褒められただけで改心しちゃう竹下さん、今までほんとに褒められて来なかったん
ですねぇ。なんだか、同情しちゃいました。桃介さんの人情味溢れるキャラがとても好きでした。
三話目の『永遠の休暇』は、名家の長男が『島流し』に遭ったという不名誉な噂の真実を辿る
物語。諍い合う兄弟の裏には、思いやりの心が隠されていました。こういう、優しい真実で
ほろりとさせてくれるところが、このシリーズらしいですね。
四話目の『妙なる調べ奏でよ』は、礼が、弱点を付かれて詐欺にはめられてしまうお話。いかにも、
ホームズ好きの礼が飛びつきそうな餌を持って来られちゃいましたね(苦笑)。大事な礼が、
心ない詐欺行為で傷つけられることに我慢がならずに飛び出して行く高広の行動に、愛を感じ
ました・・・(違)。ホームズの挿絵のことを隠そうとして、高広に問い詰められて目を泳がせる
礼が新鮮でした(笑)。
五話目の人形遣いの影盗み』は、高広の義母と付き合いのある代議士夫人の影が、奇妙な影絵士
によって盗まれるという事件のお話。事件の背後には、このシリーズにしては黒い思惑が隠されて
いました。よし乃さん(高広の義母)、やっぱり素敵な人だな~。年取っても女っぷりの良さは
変わりませんね。基博司法大臣(高広の義父)が相変わらずベタ惚れなのも嬉しかったです。
怪盗ロータス再登場。相変わらず、正体不明ですね、この人は。一体何がしたいのかさっぱり
わからないのですが^^;この先も、高広と礼の前に姿を表して来そうですねぇ。礼の絵って、
アール・ヌーヴォーに影響受けていたんですね。観る者のほとんどすべてを虜にしてしまう絵って
一体どんな画風なんだろうと興味津々だったので、ちょっと雰囲気掴めたかな。途中で出て来る、
礼が描いた絵を高広に見せた時の二人の会話がツボに来ました・・・(ヨコシマセンサー発動・・・)。

高「・・・・・・美しいね」
礼「僕がか、絵がか」
高「――どちらも」


きゃーーー!!!(><)←アホ。
っていうか、もう、この作者ってば完全に狙ってるとしか思えないんですけど、この会話!!
同人誌世界で、絶対この二人のBL系同人誌が出ているに違いない・・・。読書メーターの感想
見てたら、この甘甘BL系要素がダメって方もいらっしゃるみたいですけどね。個人的にはそこが
ツボだったりして・・・え、えへへ。

ミステリとしては、まぁ、今回もそれほど感心するところはなかったのですが、キャラ造形の
良さと温かみのあるストーリー展開、プラス主役二人のラブラブっぷりに(←だから違)、
今回も大いに楽しませてもらったのでした。次回作も楽しみです^^