ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

似鳥鶏/「まもなく電車が出現します」/創元推理文庫刊

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似鳥鶏さんの「まもなく電車が出現します」。

芸術棟が封鎖され、困ったクラブや同好会が新たな棲処を探し始めた。美術部の僕は美術室に移動
して、無事作品に取り掛かれるかと思いきや、美術部の領地と思しき開かずの間をめぐる鉄研と映研
の争いに、否応なく巻き込まれてしまう。しかし翌日、その開かずの間に突如異様な鉄道模型
出現!?表題作を含む五編収録の、山あり谷ありで事件に満ちたコミカルな学園ミステリ短編集
(あらすじ抜粋)。


シリーズ第四弾。図書館入るかわからなかったので刊行の情報を聞いて慌てて買いに行ったの
ですが、買った直後に入荷したという・・・^^;
伊神さん卒業前のお話も入ってます。でも卒業前だろうが後だろうが、葉山君が事件に巻き
込まれる度に、しっかり情報を掴んで面白がって謎を解きに来るところが相変わらずです(笑)。
ちょこちょこ出て来る伊神さんの武勇伝にはいちいち驚かされました。大学入試の試験を、合格
ギリギリのところまで解いて退出したって、すごすぎるんですけど^^;本当かどうかわからない
みたいに書いてあるけど、伊神さんならやりかねない・・・。そして、相変わらず喫茶店に入って
何も頼まないところに苦笑。それを見て奢ってあげちゃう葉山君の人の良さには感心。葉山君
くらいお人好しじゃないと、この人とは付き合えないんじゃないでしょうか^^;まぁ、でも、
葉山君は、今回そのお人好しの性格につけ込まれて悲惨な目に遭ってしまうのですが・・・でも、
そんな酷い目に遭いながらも、やっぱり最後までお人好しな対応をする彼にますます好感を覚えて
しまいました。柳瀬さんが可愛がるのもわかるなぁ。今回は、全体的に小粒な作品が多いなぁ、と
思っていたのだけれど、なんといっても、その葉山君が可哀想な目に遭うラストの『今日から
彼氏』の出来が良かった。この話が読めただけでも、買った価値があると思いました(笑)。
ミステリーとしての出来もさることながら、葉山君の【初彼女】(!!)とのデート模様だとか、
ドキドキの内面心理だとかがもう、こっ恥ずかしいやら可愛らしいやらで、ニヤニヤくすくす、
身悶えしまくりでした。まぁ、最初の柳瀬さんのメールからして、何かあるだろうとは思ってたん
ですけどね。そして、柳瀬さんと葉山君の進展を願う一読者として、この展開は、当然苦々しい
思いもあったのだけれど。それでも、初デートを迎えるに当たって、葉山君が一人ファッションショー
をしたり、妹にアドバイスを求めて玉砕したり、インターネットで【初デートの心得】を検索して
余計な情報に翻弄されたり、実際の初デートで失態の連続をやらかしたり・・・と、初の彼女を前に
右往左往、ジタバタする姿が初々しすぎて、なんだか頑張れ~!と応援してあげたくなってしまう
自分がいたのでした。もう、ほんとにね、葉山君の一人ツッコミ入れまくりの、切羽詰った必死な
内面心理がいちいち可愛くて仕方なかったです。だからこそ、からくりがわかった時は怒りが込み
上げたのですが・・・でも、葉山君の推理が当たっていなくて、救われました。その通りだったら、
彼があまりにも可哀想過ぎるもの。それに自分で気づいちゃう鋭いところも、なんだか哀れだし。
でも、ラストで颯爽と現れ、葉山君のピンチを救う柳瀬さんに惚れました・・・(っていうか、
普通逆だろ、とツッコミを入れたくもなるのだけど、なんせ相手はあの柳瀬さんなので~^^;)。
まぁ、これで当初の希望通り、二人の仲がほんのちょっぴり進展した訳で、葉山君にとっては
怪我の功名ってやつなのではないかしらん(いや、『読者にとっては』、かもしれないけれど(笑))。

どこまでフィクションかわからない(笑)あとがきも、一本の掌編読んだ気分で楽しめました。
私、似鳥さんって女性なのかな、と思ってたんですけど、男性なんですね。って、そこもまさか
作者の仕掛けたミスディレクションじゃないでしょうねぇ・・・。

次回作は長編だそうで、これまた楽しみです。二人の仲がもっと進展するといいなっ。
(今回、気がついたら、最後の一編の感想しか書いてなかった・・・短編集なのに^^;;)。