ミステリ読書録

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三上延/「ビブリア古書堂の事件手帖2~栞子さんと謎めく日常~」/メディアワークス文庫刊

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三上延さんの「ビブリア古書堂の事件手帖2~栞子さんと謎めく日常~」。

鎌倉の片隅にひっそりと佇むビブリア古書堂。その美しい女店主が帰ってきた。だが、入院以前とは
勝手が違うよう。店内で古書と悪戦苦闘する無骨な青年の存在に、戸惑いつつもひそかに目を細める
のだった。
変わらないことも一つある ── それは持ち主の秘密を抱えて持ち込まれる本。まるで吸い寄せ
られるかのように舞い込んでくる古書には、人の秘密、そして想いがこもっている。青年とともに
彼女はそれをあるときは鋭く、あるときは優しく紐解いていき ──。大人気ビブリオミステリ、
第2巻の登場(紹介文抜粋)。


相変わらず売れ行き絶好調のようですね。二巻の累計刷数がすでに100万部を超えているとか。
まさかここまで話題になるとは^^;本屋大賞の候補にも挙がってますが、もし大賞受賞したら、
文庫では初になるんでしょうね。でも、書店側にしてみると、文庫が大賞って、お金の話的には
あまり喜ばしいことではないんじゃないのかな~。前に、東野さんが、売上の問題があるから、
文庫の新刊は出版社側がなかなかOKしてくれない、みたいに言ってましたしね(東野さんクラス
なら今は許されるんでしょうけど)。

と、前置きはそれくらいにして。鎌倉の古本屋さんを舞台にした古書ミステリー、第二弾です。
今回も、古書薀蓄とミステリーがいい具合にミックスされていて、面白かったです。今回
取り上げられた古書は、

坂口三千代『クラクラ日記』
アントニイ・バージェス時計じかけのオレンジ
福田定一『名言随筆 サラリーマン』
足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦』

以上の四冊。一冊も読んでません^^;とはいえ、後の二冊は、古書蒐集家垂涎の稀覯本
ですから、読んでなくても当然だとは思いますけれど。
第一話で出て来た時計じかけのオレンジは、映画が有名ですよね。以前、誰かが大好きな作品
だと言っていて、その時から気になっている作品ではあるのですが、今回作中に出て来た本書の
感想文を読んで、想像していた話と全く違っていたので驚きました。SF小説だとばっかり思って
いたのですが、暴力描写がそんなにたくさんあるお話だとは・・・。それに、時計もオレンジも
出て来ないというのも意外でした。タイトルは、主人公のセリフから取っているんですね。

第二話に出て来た福田定一は、超有名な時代小説作家の本名。この作家さん、売れる前に
こんな本を出していたのですね~。こりゃ、稀覯本扱いになる訳だ。でも、私はこの本よりも、
この作家が出版社に『書け書け』とせがまれて嫌々ながらに書いたという推理小説の方が気に
なりました(あとがきで、言い訳っぽく探偵小説を根本から否定しているのがなんともかんとも
・・・でしたが^^;)。『豚と薔薇』読んでみたいなぁ。図書館にあるかな。閉架扱いかな。
本名と書名でこの作家が誰かわかった人は、なかなかのマニアですね、多分^^私は一冊も
読んだことないですけどね(時代小説苦手なんで・・・^^;)。
父親が娘に託したメッセージにはじーんとしたのですが。ただねぇ、いくらなんでも、ちょっと
やり方が回りくどすぎないか?と思いました。父親が望んだ通りに事が運んだこと自体が奇跡だと
思いましたね。ちょっと、この話に関してはリアリティがないように感じてしまいました。
だって、そもそも父親は『経験の浅い人物に本の査定を依頼するつもりだった』のに、実際
査定をしたのはプロの栞子さんだった訳だし。その時点で父親の思惑から外れているのに、
栞子さんのうっかりで父親の思惑に沿う形でその本が処分された(厳密に云えば処分される
寸前まで行った、ですけど)、なんて、ちょっと都合良すぎじゃないかと思ってしまいました。
ただまぁ、大輔君の過去の恋愛事情が知れたのは楽しかったですけどね(笑)。

『クラクラ日記』の作者は、全く知らない作家さんだと思っていたら、坂口安吾の奥さん
でした。安吾の奥さんは、愛する安吾と生活する為、大事なものを切り捨てたんですね・・・
私には、彼女の気持ちは理解出来そうにありません・・・。残された側のことを思うと、
どうして?って思ってしまいます。この日記を読むと、その辺りの心情も細かく綴られて
いるんでしょうか。栞子さんが、冒頭でこの本を好きじゃないと言った理由が最後にわかって、
腑に落ちました。栞子さんの方の事情は半分もわかってませんが・・・。第三話で、彼女の
母親が過去にしたことは、古書店員として許されざることだと思いました。本が好きで
古本屋に勤める店長が、利益の為にあくどい行為を行う・・・なんだか、ショックでした。
それが、栞子さんの実のお母さんっていうのも・・・。栞子さん以上の明晰な頭脳を持っている
と思われるだけに、悪事に関しても頭が回るってことなんでしょうか。容姿も栞子さんと
そっくりのようなので、余計に悲しい。栞子さんは、多分、反面教師として母親を見てたの
だろうなぁ。性格ばかりは全く似ていなくて良かったです。この先、母親が登場してくる
こともあるんでしょうね・・・栞子さんと古書に関する推理合戦とかになったりして。


それにしても、栞子さんの結婚に関する発言にはショックでした。まぁ、この先大輔に頑張って
もらって、考えを変えてもらうしかないですね(笑)。
今回、お互いに名前で呼び合うところまでちょっぴり進展はあった訳ですし。ただ、この先は
じれったくて悶える恋愛模様になりそうな予感・・・。大輔、頑張れ(笑)。


春にはもう三巻が出るようですね。ここまで人気出ちゃうと、予約が更に大変だろうなぁ・・・。
本屋大賞なんか獲ってしまった日には・・・^^;;
まぁ、文庫だし、買ってもいいんだけどね(っていうか、買えよ^^;)。