ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

三上延「ビブリア古書堂の事件手帖6~栞子さんと巡るさだめ~」/京極夏彦「眩談」

どうもこんばんは。もう2月ですねぇ。今日は立春だとか。早っ。
明日は東京でも再びの大雪だそうで。休みだから良かったけど、なんか最近休みって
いうと天気が悪いような。それもなんだかなぁ(嘆)。


今回も読了本は二冊。追われるように読んでいた読書マラソン時期が終わったので、
今はちょっとのんびり読書。とはいえ、またしても予約本ラッシュ到来の気配があるの
ですけれど・・・(凝りない^^;)。


では、一冊づつ感想を。


三上延ビブリア古書堂の事件手帖6~栞子さんと巡るさだめ~」(メディアワークス文庫
もう6巻かぁ・・・と思ったけれど、前作出てからそこそこ時間が経っているのね。だいたい
年一冊ペースなのかな。
今回は満を持しての太宰治大特集・・・なのですが、そもそも私は太宰自体をほとんど読んだことが
ない。せいぜい人間失格くらい。それも、高校生の時に読んだせいか、辛気臭い話で
好きじゃないなーって感想でした(酷)。
でも、太宰も実は暗い話ばっかりじゃなくて、いろんなジャンルのお話を書いているの
ですね。
探偵小説を書いていたとは、本当に驚きました。読んでみたーい!文豪が実は隠れて
ミステリ書いてたってパターン、結構あるんですねぇ(前に他の作家でも出て来たような)。
作家となったら、ミステリは一度は書いてみたいジャンルなんでしょうか。
今回のお話で、今まで知らなかった太宰の違う面が見えたような気がしました。
最近は、太宰治と聞くと、ピースの又吉さんを思い浮かべちゃうんですけど。
又吉さんなら、今回のお話も知ってることが多かったのかなーとか思いながら読んで
ました(笑)。

ミステリとしては、今回も終盤で意外な展開があって面白かったです。まさかあの人物が
黒幕だったとは。
それにしても、このシリーズって、古書(本)好きの人間が罪を犯すパターンがやたらに
多いですね。個人的には本好きにそんなに悪い人がいてほしくないんですけど・・・。
稀覯本を手に入れる為なら殺人さえ厭わないっていう心理は、正直私には理解不能です・・・。
そして、今回またアイツが・・・!栞子さんがあんな目に遭ったっていうのに、大輔、
油断しすぎ。そして、またも災難に遭っているし。どうなることかとハラハラしましたよ。

でも、前作の終わりから関係が変わった栞子さんと大輔、ちょこちょこ二人の胸キュンシーンが
出て来て、ニヤニヤしちゃいました。文香ちゃんが、やたらと二人のことを周りの人に吹聴して
回るのがちょっと可哀想だったんですが、それ自体も最後の伏線の一端だったとは驚きました。
最大の胸キュンシーンは、第二章での栞子さんからのアレのシーンですね。『我慢、してた、~』
にノックアウトでした。大輔ももちろんそうだったでしょうけど(苦笑)。
栞子さん、恋愛に関してはもっと消極的な人かと思ってたんですが、意外とそうでもないみたい
ですね。いやー、反応がいちいち可愛くて、萌えまくりでした・・・(おっさんか)。
大輔が田中に対して宣言した○○発言に嬉しくなりました。ちゃんと将来のことも考えて
いるんですねー。若いのに。しかし、それにはちゃんと就職した方がいいと思うが(余計なお世話)。

シリーズはいよいよ佳境に入って、あと1冊か2冊で終わりなのだそう。ちょっとびっくり。
いくら佳境に入っているからって、もうちょっと続くと思ってたなぁ。人気もあるし。
母親との確執にも決着がつくんですかね。
次巻で終わりだとしたら寂しいけど、続きを楽しみに待ちたいと思います。


京極夏彦「眩談」(メディアファクトリー)」
~談シリーズ(?)読み逃していた一作。予約本が落ち着いたので借りてみました。
今回も、気持ち悪い話が多かったなぁ。すごい怖いっていうのじゃないのに、その光景を
想像するとすごい厭というか、おぞましいというか、気味が悪いというか。なんとも言えない
嫌悪感満載の短篇集でした。ほんと、こう、そこはかとなく厭な話を考えるのが巧い人ですよね、
京極さんって。『厭な小説』の絶妙な厭さ加減を思い出しちゃった。

では、一作づつ簡単に感想を。

『便所の神様』
これ、便所の怪談をテーマにしたアンソロジーで既読でした。その時もすんごい厭な気持ちに
なったんだけど、再読してもやっぱり厭だった・・・臭いを想像するともう。うげぇぇ。ラストで
主人公が見上げた先にあるものも・・・厭だ(><)。

『歪み観音』
自分以外の周りのものが歪んで見えてしまう少女の話。これも厭だなぁ。日常生活、すんごい不便
そう。家族の顔を見て吐き気を覚えるなんて。歪み観音のキャラが面白い。少女に蹴られて
泣きながらどっか行っちゃうとか、情けなさすぎ(笑)。

『見世物姥』
六年に一度の村の祭にて。毎度立つ見世物小屋で少年敬太が見たものとは。このお話は、
誰もが魍魎の匣のアレを思い出すのじゃないかしら。しかし、実際の箱の中のモノの正体は
・・・ひー(><)。

『もくちゃん』
これは最後のオチに意表をつかれました。そうか、こういうことなのか、と思いました。
隣の家の少年に会う度『もくちゃああん』と呼びかけ、額をくっつける中年男。今だったら、確実に
通報されてますよね・・・。数年後に明らかにされる、中年男が少年に植えつけた記憶の真相に
ぞっとしました。

『シリミズさん』
バイトを首になって実家に帰った私に待っていたのは、かつての私の日課だった『シリミズさん』
水をお供えすること――。
謎のシリミズさんの不気味さといったら。っていうか、自分の実家にこんなのがあったらほんと
厭だなぁ。帰りたくなくなるのも頷ける。それ以外にいくつか出て来る怪異も、普通だったら逃げ出す
レベル。主人公がそれを当たり前のように受け入れているのであまり怖くなったけれど。

『杜鵑乃湯』
こんなホテルもやだよー。料金高い割に料理もまずいし従業員の愛想も悪いし設備もいまいちで、
しかも怪異が起きる。その上、渡り廊下には犯罪を犯した受刑者による自分の犯罪の絵が
飾られているとか。こんなホテルに泊まるって、誰得なのさ。最後に明かされる、主人公の
秘密に驚かされました。

『けしに坂』
父親の十三回忌を執り行った寺の裏門を抜けるとけしに坂と呼ばれる坂道があった。その場に
いた老婆が言うには、その坂を登ると忘れていたことを思い出すのだという――。
忘れたいことを思い出させる坂には登りたくなりですね。主人公は最後に忘れたままで
生きる決意をするけれど、妻のことに関しては忘れたままそのまま生活するのは無理じゃない
のかなぁ・・・。

『むかし塚』
こちらは、むかし起きた出来事を埋めておける塚の話。この塚に想い出を埋めると、それは物語に
なる。ノスタルジックで、気味が悪いような、美しいような、不思議なお話でした。自分が誰かの
物語になれるって、何かいいですね。私も何か想い出を埋めてみたいな。

タイトル通り、読んでいると、どこか目眩がしてくるような、幻想怪奇譚でした。面白かったです。