ミステリ読書録

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水生大海/「転校クラブ 人魚のいた夏」/原書房刊

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水生大海さんの「転校クラブ 人魚のいた夏」。

早川理14歳。お父さんの仕事の関係で転校ばかりしている。そんなあたしにとって“転校クラブ”
は情報ツールであり愚痴の吐き出し口だったりする。今度の学校は海と遊園地の近くっていうのが
ポイントだけど、転校早々、別人と間違われてクラスのシカトにあった。―「事件」はもう
始まっていたんだ(紹介文抜粋)。


福ミス(ばらのまち福山ミステリー文学新人賞)出身作家・水生さんの新作。『少女たちの
羅針盤がとても良かったので、なんとなく細々と追いかけてる作家さん(一作読み逃しが
あるみたいなんですが^^;)。

今回は、父親の仕事の都合で転校ばかりしている中学生の女の子が主人公。女の子だけど『理』
と書いてサトルちゃん。学校を転々とする生活を続けているせいか、あっけらかんとした性格で、
転校先でいじめにあっても、あまりめげないところは好感持てました・・・が、なんとなく、
好きかと聞かれるとあんまり好きなタイプの主人公ではなかったんですよね^^;何か発言
しようとする時に、いちいち手をあげて『はい!はい、はいっ!』って言うとことかが何度も
繰り返し出て来るので、ちょっと読んでてイラっとしました(苦笑)。

なんか、どうも設定とか会話文とか、いちいち違和感があって入って行けなかったところが
あったんですよね。そもそも、サトルの転校初日の嫌がらせからし『?』だったし。サトル
は間違えられただけですが、そもそも、いとこが転校して来るのに、クラス全員に嫌がらせする
よう唆す龍之介の言動が受け入れ難かった。クラスの人気者がやることか、それ?龍之介の
性格はほんとに良くわかんなかったです。

タイトルの『転校クラブ』とは、転校した経験のある子たちが集まるチャットの名称。終盤
まで、いまいち作品に絡んで来ないなぁ、と不満に感じていたのですが、なるほどなるほど、
最後でこう来ましたか!って感じでした。ただまぁ、ちょっと強引に感じないでもなかった
ですけれども。
事件の真相自体はさほどの驚きでもなかったのですが、ラストでしっかり転校クラブの存在が
ポイントになっていたことがわかるところは良かったですね。

ただ、あのラストはね~・・・。転校生同士の友情が育まれたと温かい気持ちになっていた
だけに。ここまで苦い結末にしなくても・・・と思ってしまいました。ここは読者の評価の
分かれどころでしょうね。確かに、ミステリ的にはこういう結末の方が意外性があって面白い
と云えるかもしれない。でも、私は後味悪すぎてイヤだったなぁ。中学二年生で、そこまで
打算的でどうするんだ・・・空恐ろしい。なんか、一生懸命になっていたサトルがちょっと
可哀想すぎるな、と。虚しい気持ちしか残らない読後感でした。
龍之介も、好感キャラではなかったけど、あそこまで酷い目に遭わせなくても、ねぇ。そこまで
猟奇的な設定にする必要があったのかな、と疑問に感じてしまいました。


なんか、タイトルや表紙は爽やかな青春小説風なだけに、かなり結末で裏切られた感じが
あって、後味が悪かったです。これが良いって人ももちろんいるのでしょうけどね。
水生さん、一作ごとに私の好みから外れて行くような・・・今後読み続けるかはちょっと
微妙かも^^;