ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

「Happy Box」/PHP研究所

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「Happy Box」。

東日本大震災から一年、「幸せ」について、人々の関心が高まっている――。本書はその「幸せ」
をテーマに、ペンネームに「幸」が付く5名の人気作家が書き下ろした短篇小説集。「weather」
伊坂幸太郎著)は、結婚披露宴を舞台に、伊坂ワールドが展開する作品。主人公の大友は、親友
・清水の披露宴に出席することになったが、新婦から、女性関係が派手な清水の調査を頼まれる。
最近、不審な言動が多いというのだ。司会の女性、ウエディングケーキ、キャンドルサービス。
どこもかしこも怪しげに思えてくる披露宴。そして宴もたけなわとなった時、大友はあることに
気づくのだが……。  他、おばあちゃん掏摸師を主人公にした「天使」(山本幸久著)、SF
テイストの「ふりだしにすすむ」(中山智幸著)、搦め手から“幸せ”に迫った「ハッピー
エンドの掟」(真梨幸子著)と「幸せな死神」(小路幸也著)を収録。思いも形も色とりどりの、
五つの“幸せ”を堪能できる作品集(紹介文抜粋)。


名前(ペンネーム)に『幸』の字がつく作家が、『幸せ』をテーマに書き下ろした短篇を集めた
アンソロジー
なかなか面白い趣向ですね。『幸』のつく作家ならもっと他にもいそうですけど。中山智幸さん
以外は既読で結構好きな作家さんばかりだし、『幸せ』をテーマにしてるくらいだから、きっと
幸せな気分になれる作品ばかりなんだろう、と期待して読んだのですが・・・ストレートに
幸せな結末を描いた作家はあんまりいなかったですね^^;そういう意味では、伊坂さんの
作品が一番気持ち良く幸せな結末って感じだったかなぁ。テーマはあくまでも『幸せ』で
あって、『ハッピーエンド』って訳じゃないものね。捉え方次第で、いろんな作品が書ける
ものだなぁ、と思いました。
とはいえ、個人的にはもっとほっこりする結末ばかりの方が良かったなーってのが正直な
所ですけれど。こういうテーマとタイトルだったら、やっぱり、幸せな話ばっかりが詰まってる
って期待しちゃうものじゃない?そういう意味では、かなり肩透かしなアンソロジーだったと
言わざるを得ない、かなぁ。作家さんも、かぶらないように、敢えていろんな角度から『幸せ』
というテーマを捉えたのかもしれないですけどね。

テーマ的にも、作品的にも、『幸せ』をテーマにしたこのアンソロジーに一番ぴったりの作品
だと思ったのはやっぱり伊坂さんのかな。不穏な方向に行くのかな?と思わせておいて、の
感動的なラストが良かった。
個人的にも今回の題材が今の自分にぴったり合ってましたしね(笑)。こういうサプライズ
してもらえたら、嬉しいよね、やっぱり。

あと印象的だったのは、『幸せ』とは対極にあるようなラストを持って来た真梨さん。この人、
こういうテーマでも自分のカラーをブレさせないところはあっ晴れですね(苦笑)。しっかり
イヤミスになってるところがかえって小気味良かったかも。ラストのオチが黒い、黒い(笑)。
なんつー、イヤな女!!アイコちゃんのその後の人生がどうなったのか、めちゃくちゃ気に
なります・・・。

他の三作は可もなく不可もなくって感じかなぁ。小路さんのは結構好きだったけど。こういう
テーマなら、いくらでも書けそうですよね、この方は。イケメンの死神さんのキャラが好き
だったな。ウイスキーぶっかけて契約ってのは、いくら何でも強引過ぎないか?とは思い
ましたけど(苦笑)。
お初の中山さんのは一番『?』だったな。設定は悪くないんだけど、なんかオチが弱いというか。
結局何が書きたかったのかなーと、ちょっと腑に落ちない読後感でした。イシカバのキャラは
好きでしたけどね。山本さんのも、『幸せ』ってテーマを考えると、ちょっとズレてるような
気がしなくもなかったです。子供たちが幸せに生きてくれればいいのですが。ラストの一撃に
はっとさせられました。山本さんって、もっとほのぼのした作品書く方だと思っていたので、
こういうオチで来るとは意外でした。



アンソロジーの企画自体は面白かったのですが、ちょっと期待ハズレな作品が多かったかな。
まぁ、伊坂さんのが読めたからいっか。伊坂さんは、編集者の方に対してもほんとに丁寧
なんだなーというのが、解説から伺えたのが嬉しかったです。