ミステリ読書録

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似鳥鶏/「いわゆる天使の文化祭」/創元推理文庫刊

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似鳥鶏さんの「いわゆる天使の文化祭」。

夏休みも終わりに近づいた文化祭目前のある日、準備に熱の入る生徒たちが登校すると、目つきの
悪いピンクのペンギンとも天使ともつかないイラストが描かれた貼り紙が目に飛び込んできた。
別館中に貼られた、部活にちなんだ様々な怡好の“天使”を不思議に思いつつも、手の込んだ悪戯
かと気を抜いていると―。波瀾万丈で事件に満ちた、コミカルな学園ミステリ・シリーズ第四弾
(紹介文抜粋)。


葉山君シリーズ第四弾(前後編で出た作品があるので、巻数で言えば5冊目ですが)。発売時に
買ってずっと積んであったのをようやっと救い出しました^^;
買っちゃうと、読むのがどんどん後回しになっちゃうんですよねぇ。困ったもんだ^^;

さてさて、今回は文化祭編ですね。天使には到底見えない天使のイラストが、文化祭直前の校内の
至る所に貼られるという不可思議な出来事から事件が始まります。こんなの、普通に考えたら
誰も『事件』だなんて思わないよなー、と思いながら読んでたんですが^^;葉山君を始め、
一部の学校の生徒たちがこれを問題視するようになり、誰が何の目的でこんなことをしたのか
調査し始める、というのが大筋。物語は、葉山君側と、好奇心旺盛な性格から、もう一人この
事件の調査を一人で買って出た蜷川奏という女の子側からの視点のパートが交互に出て来る構成。
奏ちゃんのキャラ造形はちょっと微妙だったような。好感持てるのか持てないのか、いまいち
自分の中でも定まらない感じ。基本的に悪い子ではないんですけど、時々イラっとさせられる
ところもあるし・・・。幼馴染の智君が心配するのわかってて、一人で暴走するし^^;好奇心
旺盛なのは悪いことじゃないとは思うんですけどね。

天使のイラストから、思わぬ深刻な事態が判明して、あわや文化祭中止か、というところまで
葉山君たちは追い詰められることになります。事件のことを校長先生に報告に行った時の葉山君
の心痛ぶりに胸が痛みました。自分の報告が、盛り上がっているクラスのみんなの努力を無にする
行為に繋がると知っていて、それでも尚、行動に出た葉山君は立派です。でも、その行為を横で
見て、わかってあげられる柳瀬さんの存在がいて本当に良かったと思いました。その後の二人の
ムフフ~なシーンについついニヤニヤしてしまう自分がいました・・・(シリアスなシーンなんです
けどもね・・・^^;;)。




以下、ネタバレあります。未読の方はご注意を!!

















作品の構成が相変わらず上手いですね。今回もまんまと騙されてしまいました。伊神さんが、奏
ちゃんに事件のことを『文化祭の日に解決する』と言った発言で、あれっと思ったんですよね。
それじゃ、間に合わないよね?ってね。まさか※1○○ごと違ってるとはね。※2○○○も違ってる
しね。葉山君と出会うシーンがあるのが上手いですよね。

ただ、犯人の動機にはちょっと疑問が残ったなぁ。そんな理由で、何年も経ってからこういう行動
に出るってのはねぇ。もっと違う方法がいくらでもあるような・・・。そもそも、気付いて欲しい
人が文化祭だからってその学校に来るかどうかもわからないのにさ。しかも、結局そこまでの行動
に出た成果は得られてない訳だし。せめて、その人に最後に登場してもらいたかったな。みんなを
惑わせて、あわや文化祭中止にまで発展しかねないような事件を起こしたのに、結局無駄に終わった
ってのがね。何か、納得いかないような。



伏せ字のネタバレばらし
※1 学校 
※2 時系列


















今回でまた、ちょっぴり葉山君と柳瀬さんの距離が縮まったかな?柳瀬さんが、例のシーンで
動揺してるとこが可愛かったな。普段冷静なお姉さんタイプだけど、やっぱり葉山君の前だと
女の子になるんですねぇ。ニヤニヤ。
ただ、伊神さんの妹翠ちゃんの存在も気になりますねー。これ、だって完全に葉山君ラブじゃ
ないですか。葉山君のピンチに、あそこまでして伊神さんをひっぱり出すところもね。葉山君
の為なら、何だってするって勢いでしたもんね。これから、三角関係が深まってゆくのかしら。
翠ちゃんと葉山君が結婚したら、伊神さんと葉山君が兄弟になるわけですしね。それはそれで、
楽しそうな未来だ(葉山君は苦労しそうだけど・・・^^;)。
今後、柳瀬さんバーサス翠ちゃんのバトルが勃発したりするんでしょうかね。
むふ。楽しみだ(勝手な傍観者)。


名物のあとがきも面白かったです。
でも、今回、一つ不満は、なんで表紙が葉山君の女装姿じゃないんだー!ってとこですね(笑)。
萌え系葉山君、ああ、見てみたかった(嘆)。