ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

読了本三冊。

どうもみなさま、こんばんは。
先日の日本戦、ガッカリな結果でしたね。これで予選突破は相当厳しくなりました。
明日の予選最終戦、とにかく奇跡が起きることを祈るしかありません。
なんか、嫌な予感しかしないのですが・・・しーん。
スペインにイングランドという超強豪国ですら一次リーグ敗退決定なのですから、
そりゃ、簡単ではないですけどもね。とにかく、悔いの残らないよう思い切って
試合に望んで欲しいな、と思います。ガンバレ!!


そういえば、芥川・直木賞候補が発表になりましたねー。毎度のことながら芥川の方は
さっぱりですが、直木の方はワタクシ、読んだ本が三冊、これから読む予定の本が一冊
候補に入っておりました。貫井さん、米澤さん辺りが受賞してくれると嬉しいなーとは
思うけれど、今回六度目のノミネートって方がいらっしゃるみたいなんで、ちと厳しい
かな。さて、どうなりますことやら。


前置きはそれくらいにして、今回の読了本は三冊。今回も軽めの作品ばかりとなりました。

では、一冊づつご紹介~。


まはら三桃「伝説のエンドーくん」(小学館
何の予備知識もなかったのですが、書店で見かけてタイトルが面白そうだったので
予約してみました。
中学校が舞台なので、YAものと言っていいのかな。各章の主人公は教師なので、
大人視点ではあるのですが。ただ、内容的には児童書と言ってもいいくらいの
読みやすさ。文章量も少ないですしね。あっという間に読めちゃいました。
うん、でも、なかなかおもしろかったです。
舞台である市立緑山中学校では、校内のいたるところに「伝説のエンドーくん」に
まつわる落書きがあります。エンドーくんは、緑山中学のかつての卒業生で、成績優秀、
スポーツ万能、イケメンで性格も優しく、正義感も強い、生徒たちのヒーローだった、らしい。
以来、緑山中学の生徒たちは、何か困ったことがあると、エンドーくんに助けを求める
ようになったという。
今回、各章の主役となる教師たちは、それぞれに悩みや迷いを抱えた時、エンドーくんに
まつわる校内の落書きを見つけます。そこから、自分なりに一歩を踏み出すヒントを得る
のです。
同時に、伝説のエンドーくんの正体も少しづつ明かされて行くことになります。
一応最後の最後で種明かしされる訳なのですが、はっきりいって、その前にほとんどの
人がエンドーくんの正体には気がつくと思います。そこまで引っ張らなくても、とも
思ったのですけども。その人物がどうなるのか最後まではらはらしたのですが、悲しい
終わり方でなくてよかったです。
児玉さんのビジュアルが、どうしても亡くなった児玉清さんと重なって仕方なかったです。
エンドーくん誕生の秘密の部分も面白かったです。教師に対する抗議の手段として、校歌の
歌詞を変えるという方法を取るところが、時代を感じさせるなぁ、と思いました。今の学生
なら、もっと全然違う方法を選ぶでしょうね。


ダ・ヴィンチ編集部編「本をめぐる物語 一冊の扉」(角川文庫)
本にまつわるアンソロジー。それぞれの作家さんがいろんな観点から本を捉えていて、
楽しめました。こういうアンソロジーはいくつ読んでも飽きないですね。
ラストの宮木さんの校閲ガール』だけ既読。この本が出た時は、まだ単行本に
なっていなかったようですね。
中田永一さん目当てだったけど、一番胸にずしっと来た作品は原田マハさんの
『砂に埋もれたル・コルビュジエだったかな。重いお話でしたが、認知症を患った
父親を思う娘の心情が切なく胸に響きました。
お目当ての中田さんのメアリー・スーを探して』は、不穏な出だしにどうなることかと
思ったけれど、オタクで冴えないデブの女の子が、創作の為に自らを洗練させて行く、という
設定が面白かったです。
宮下奈都さんの旅立ちの日には、旅立つ娘への餞として、一冊の本を贈る父の想いに
温かい気持ちになりました。
小手毬るいさんの『ページの角の折れた本』は、視点の書き方がわかりづらくて、
読んでてちょっと混乱するところがありました。合間に挟まれる「あなたは~云々」って
呼びかける部分、必要だったのかなぁ・・・。
朱野帰子さんの『初めて本をつくるあなたがすべきこと』は、初めて本を出版することに
なった夫が妻に本の感想を聞く話ですが、夫の性格がいちいち面倒くさくて、読んでて
かなりイライラさせられました。こんな夫に付き合っていたら、毎日ストレスたまりそう・・・。
沢木まひろさんの『時田風音の受難』は、魔性の女編集者に翻弄される作家のあたふた
ぶりがコミカルに描かれていて面白かったです。時田風音っていい名前ですねぇ。冴えない
おっさんの名前にしとくのは勿体ない(笑)。作家になって活用出来てよかったね(笑)。
小路幸也さんの『ラバーズブック』もいいお話でした。一冊の本がいろんな旅人の手によって
世界中を旅する、というシチュエーションが素敵ですね。


深水黎一郎「テンペスタ―天然がぶり寄り娘と正義の七日間―」(幻冬舎
深水さん最新作。漫画かラノベのような表紙に面食らいましたが、内容も今までの深水
さんとはちょっぴり違ったテイスト。突然弟の娘を一週間預かることになった兄の受難の
一週間を描いたドタバタコメディ・・・?ミステリって感じではなかったんですよねぇ。
最初の方に出て来る連続幼女誘拐事件がミステリの鍵になるのかと思ってたら、それは
終盤であっさりと解決しちゃって拍子抜けだったし。ただ、終盤で思わぬ急展開になるので、
そこがミステリ的要素だと言われれば、そうなのかも。
中盤までは、とにかく我儘放題のミドリの言動にイライラさせられっぱなしだったのですが、
彼女の根底にある一本筋の通った正義感に触れてからは、次第に好意的に見れるようになって
行きました。欲しいバックや食べたい高級な食べ物をねだる際の姑息な手段にはムカっと
しましたけど^^;
でも、9歳の少女にあるまじき言葉使いとか豊富な知識には呆れるやら感心するやら。主人公
の賢一とのやり取りがいちいち可笑しかったです。
嵐のような七日が過ぎて、明日ミドリが帰るという時は、賢一との別れが寂しく感じられました。
来年の約束もして、ミドリは楽しく帰途につくと思っていただけに、そこからの急展開には
呆然。まさか、そんなことになろうとは。
最後どうなることかとヒヤヒヤしましたが、そうなって欲しいと願っていた展開になったので、
ほっとしました。あのまま行ったら、賢一は間違いなく廃人のようになっていたよ・・・。
しかし、最後、ここで終わり!?と呆気にとられてしまいました。二人の○○生活を描いた
続編を是非書いて頂かないと!ここで終わりじゃ、気が気じゃないですよ。
ところで、ミドリが作った東京湾のアサリのボンゴレ、美味しそうでした。ボンゴレ
私もよく作るけど、アサリの砂抜きの時に金気のものを入れるっていうのは知らなかったなー。
普通に塩水だけでやってたけど、いつも微妙に砂が残っちゃうのよね。今度やってみようっと。
賢一が大学の非常勤講師で、美学を専攻してるってところが、深水さんらしい設定だな、と
思いました。やっぱり、深水さんの作品には芸術が出て来ないとね!ミドリの、有名絵画の
解釈がとても面白かったです。ミドリにかかると、岸田劉生の麗子像も『キモいガキ』
なっちゃうんだから、なんともはや(苦笑)。ミドリが言うと、絵画への冒涜とかそういう
気持ちも湧かず、変に納得しちゃうところが不思議でした(笑)。
ミドリと賢一のコンビはとても気に入ったので、是非また続編を書いて欲しいですね。
最後はとても意外な重い展開になりましたが、全体的にはコミカルでとても楽しい一作でした。
面白かった!