ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

読了本三冊。

みなさま、こんばんは~。
日本のW杯もあっけなく終わってしまいましたね。
コロンビア戦、嫌な予感が見事に的中してしまい、がっくり。
まぁ、これが今の日本の実力なんでしょう。
それにしても、世界の選手のレベルの高さと言ったら!!
あれじゃー、勝てないよね・・・。
優勝はどこになりますかねぇ。今回は南米が強い大会って印象ですが、
オランダ辺りも勝ち上がって行きそうな気が。フランスにも頑張って欲しいなぁ。
やっぱり、決勝はヨーロッパ対南米が観たいですけどねー、個人的には。
さてさて、どうなりますか。


今回も読了本は三冊。最近このタイトルばっかりだな^^;;
なんかもうちょっと、記事タイトル考えた方が良いのかしら・・・。


んでは、一冊づつ感想をば。


森絵都「クラスメイツ 後期」(偕成社
ん?後期?と思われたアナタ、疑問に思うのもごもっともです^^;
なんせ、前期の記事なんか書いてないですから。
残念なことに、前期と後期同時に予約したら、当然ながら前期の方が予約数が
多かった為、予約数の少ない後期から先に回って来てしまったんですよね・・・。
もうちょっと考えてずらして予約すりゃー良かったんですが、せいぜい2~3人の
違いだったんですよ。だから、図書館員さんがちょっとは考えて、揃えて回して
くれるかなー、とか、ちょっぴり期待しちゃったんですけど。
・・・甘かったです(T_T)。
ま、後期読んだ限り、おそらくどっちから読んでもそんなに問題ないのではないかと。
時系列的には当然後期の方が後にはなるんでしょうけどね。

内容としては、ある中学一年生のクラス24名の生徒一人一人の物語をそれぞれに
描いた青春群像劇。つまり、前期後期で24章の物語が収録されているということ
ですね。中学一年生らしい悩みや恋愛模様が爽やかに描かれています。
森さんらしいYA小説と云えるのではないでしょうか。
私の中一の時のクラスとは、クラス内の雰囲気が全く違いますね。
そもそも、生徒同士、男女関係なく名前で呼ぶなんてあり得なかったなぁ。
下の名前で呼ぶなんて仲の良い友達同士だけでした。それ以外は男子は苗字呼び捨て、
女子は苗字にさん付け。男女間も、一部の生徒たち以外はあんまり交流がなかったです。
後期だけでも個性的なキャラクターが勢揃いでした。久保由佳のキャラクター、名前が
高校時代の同級生にすごく似ていて、彼女のことを思い出してしまった。キャラは
全然違ってましたけど^^;イタルのキャラは面白かったけど、同級生にいたら
かなり鬱陶しく感じるだろうなぁ、と思いました。度々彼の犠牲になるノムさん
気の毒になりました。本人悪気がないから余計に厄介なタイプですよねぇ・・・。
楓雅のキャラは最初ムカついたけど、周りに流されない性格だからそれはそれで
筋が通っていていいのかな、と思ったりして。意外と優しい面もありましたしね。
女子が集まってバレンタインのチョコを作るところなんかは、甘酸っぱい気持ちに
なりましたね~。中学一年って、まだまだ無限の未来が広がっている頃ですよね。
小さなことで落ち込んだり悩んだり。でも、それが本人にとってはとてつもなく
大きなことだったりしてね。
自分の中学時代を思い出して、懐かしくなりました。
前期もようやく回って来たので、近々読む予定です。楽しみ。


藤野恵美「初恋料理教室」(ポプラ社
久々藤野さん。文庫になった『ハルさん』が今更ながらにかなりヒットしている
ようですね。書店員さんの仕掛けがきっかけなんでしょうけど、いい作品が
新たに陽の目を見るならば喜ばしいことです。
『ハルさん』もほのぼのしていて、とっても素敵な作品でしたが、本書もそれに
負けず劣らずの良作。
何より、タイトル通り、出て来るお料理がとにかく美味しそう!!
舞台は京都。大正時代に建てられた長屋でひっそりと料理教室を営むのは、
御年六十を超えた小石原愛子先生。柔らかな京都弁で丁寧にお料理のノウハウを
教えてくれる優しい先生。
本書は、そんな愛子先生のお教室に通う四人の生徒をそれぞれに主役に据えた
4つの物語で構成されています。
一話目の智久は、初恋がきっかけで料理教室に通い始めます。図書館に勤める
司書の君に美味しい料理を振る舞いたい・・・彼の一途な想いと、少しづつ近づいて
行く二人の距離に胸がきゅんきゅんしちゃいました(笑)。
二話目のヴィンセントは、有名パティスリーのパティシエ。日本料理の基本を
学ぶことが、自分の菓子作りに活かせると思い、愛子先生の元へやって来ました。
こちらは、一話目とは対照的に大人の恋愛が描かれています。須磨崎とはビジネス
の関係だけで終わるかと思いきや、ラストは意外な展開でした。
三話目のミキは、姉のジュリアに美味しいものを食べさせたくて料理を習うことに。
どうしようもない母親を反面教師にして、しっかり地に足のついた道を歩こうとする
二人に好感が持てました。ジュリアの漢字が樹里愛なら、ミキの方はどういう字を
当てるのかなーとちょっと気になりました。ま、この名前から、親がDQNなのは
推して知るべし。こういう親を持つと、子供は苦労しますね・・・。これからも、
二人仲良く強く生きて行って欲しいです。
最終話の佐伯は、五十を過ぎた中年男性。なぜか妻から突然料理教室に通うことを
勧められて愛子先生の元に来ることに。妻が佐伯に料理教室を勧めた理由は、
想像した通りでした。夫婦の強い絆を感じるお話で、最後はほろりと来ました。
終章の愛子先生のお話も、愛子先生がなぜ料理教室を開いているのかがわかって、
愛子先生の料理に対する思いに胸を打たれました。
私は日本食はあんまり作らないので、知らないお料理の知識がたくさん出て来ました。
やっぱり、きちんと出汁を取ってお料理作ると全然違ったりしますものね~。
こうやって基本的なことを教わると全然違うのだろうなーと思いました。
とっても美味しそうで、心温まる素敵な作品でした。料理教室の長屋の雰囲気
も良かったな。おすすめです。


森晶麿「COVERED M博士の島」(講談社
森さん新作・・・かと思ったら、すでに更なる新刊が出ているのですね^^;こんなに
多作な作家さんになるとは。精力的に書かれていて素晴らしいですね。
しかし、今回の作品は今まで読んだ森作品の中では、一番救いのないお話じゃないで
しょうか。読みやすさは相変わらずなんですが、正直、基本的な設定に疑問を
覚える部分がかなり多かったです。
当然ながら、整形の知識など全く門外漢の私ですが、整形ってそんなに短時間で
出来ちゃうものなんでしょうか?いくらM博士が凄腕だからって、数十分で顔の
整形が出来るってのはいくらなんでもあり得ないのでは・・・。手術後皮膚が
落ち着くまでそれなりに時間がかかったりするものなのでは??小説の中だからって、
そんな都合よくころころ顔を変えられるってのがどうにも納得出来なかったです。
内容は、理由あって顔を変えて新しい人生を歩みたいと願う主人公アキラが全身美容整形
のモニターに応募し、当選したことから始まります。
凄腕の整形外科医であるM博士の所有する島に連れてこられた彼は、建物内で三度に
亘る手術を受けるも、施術が終わった直後、なぜかM博士が首のない死体で発見されます。
建物内にいる人物たちが博士の死の真相を究明し始めるのですが、そのメンバーたちが一人
また一人と殺されて行くという、クローズドサークルミステリです。下敷きにしてるのは、
やっぱりクリスティのそして誰もいなくなったなのでしょうね。
美学に拘りのある作者らしい話と言えなくもないかもしれないですが、黒猫シリーズ
とはまったく受ける印象が違いました。M博士の美への拘りは、わかるようでいて
さっぱりわかりませんでした。そもそも、整形で作った美なんて、ほんとにそんなに
美しいと思えるんだろうか・・・。作り物ってわかった時点で、私には全く美しいと
思えなくなる気がする。もちろん、美しくなりたい、と願う気持ちは理解出来るけれども、
行き過ぎた美容整形は悲劇しか生まないと思う。
レイコの正体には素直に驚きました。しかし、自分の美への探求の為に、ここまで
大掛かりなことを画策するM博士の心理は、到底理解し難いものがありました。
終始緊迫した展開の連続で面白くはあったけど、どうにも設定の時点で腑に落ちない
部分が多くて、モヤモヤしました。そして、とことん救いのないラストにどよーんとした
気持ちになってしまいました。ミステリ作家としては、こういうクローズドサークルものって
一度は書いてみたい題材なんでしょうけれど、先人作家たちの二番煎じな印象は
どうしても受けてしまいます。美容整形を絡めたことで目新しさを出したのかもしれない
ですが、それに頼りすぎて説得力に欠ける内容になってしまったことは否めない。
着眼点は悪くないと思うものの、ちょっと残念な部分の多い作品でした。