ミステリ読書録

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西澤保彦/「探偵が腕貫を外すとき 腕貫探偵巡回中」/実業之日本社刊

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西澤保彦さんの「探偵が腕貫を外すとき 腕貫探偵巡回中」。

腕貫着用、神出鬼没な謎の公務員探偵が、市民の悩みや事件を鮮やかに解明! そしてついに女子大生
ユリエと……!? お馴染み刑事コンビも登場、今日も櫃洗市は大騒ぎ! 絶好調「腕貫探偵」シリーズ
待望の新作短編集!

■贖いの顔
三年連続、四月四日の午後四時に鳩の死骸と人の死に直面した配送員。
これは偶然なのか、必然なのか。そして今年もまた、四月四日がやってくる……。

■秘密
四十年前に不倫相手の女性を殺してしまった。
なぜ、彼女の夫はその罪を被ってくれたのか? 夫の葬儀の日、長年の謎が明かされる。

■どこまでも停められて
妻子と別れ、一人マンションに暮らす男。彼が契約した住人専用駐車場に、
決まって月曜の朝に不特定多数のドライバーに無断駐車されてしまう。その理由は?

■いきちがい
女子大生・ユリエが企画した幼稚園の同窓会の最中に、参加者が殺害された。
不可解な遺留品の謎、犯人は? そして動機は?
(以上 紹介文抜粋)


出版社HPに各短篇のあらすじも載っていたので、一緒に載せておきました(ラッキー)。
腕貫探偵シリーズ最新作。このシリーズ、版元を変えたり出版形態(単行本だったり
文庫だったり)を変えたり、なんだかめちゃくちゃですね^^;
そういえば、タックシリーズも同じような感じだったような覚えがありますが^^;
できればシリーズものは同じ出版社で同じ形態で出して欲しいと思うんですけどねぇ。
最近、こういう形のシリーズものって多い気がするなぁ。おそらく、作者と出版社側の
いろんな事情があるのでしょうけれど。

今回も、腕貫探偵が相談者の疑問を話を聞いただけで推理する安楽椅子探偵形式。相変わらず
その存在は謎に包まれていますが、ここ数作で大分人間性が出て来ましたよね。特に、ユリエ
さんからアプローチされた辺りから。なぜか美味しいお店もよく知っているし。
ただ、個人的には初期の頃の、腕貫探偵の存在自体があるのかないのかわからないような、
非現実的な雰囲気のままのほうが良かった気がするんですよねぇ。相談者の願望が見せる幻
みたいな曖昧な感じが良かったんで。
ユリエさんとの恋愛を絡めたことで、シリーズ自体の方向性が変わって来てしまったのが
ちょっと残念なところではありますね。

それにしても、相変わらず推理がぶっ飛んでますねー。それぞれの謎自体もちょっと
変わっていて、一筋縄ではいかないものばかりでしたが。
一話目の、三年連続で4月4日4時に、タワーマンションのガラス扉に鳩が激突した後殺人が
起きる、という謎に対する腕貫探偵の推理には、ちょっと納得が行かなかったなぁ。鳩が
激突する理由はわかったけれど、それが同じ日の同じ時間に起きることの説明には腑に落ちない
ものがありました。っていうか、そんな偶然あるかい^^;
二話目は、40年前、年上の女性と不倫した挙句、その女性を殺してしまった男が相談者。
当時なぜか現場である男の実家に居合わせた彼女の夫が、男の罪を被って警察に出頭したのは
何故なのか、男が抱える40年来の悩みを腕貫探偵が解き明かします。罪を被った不倫相手の
夫が男を庇った理由には、なるほど、と思いましたが、妹が不倫中姉が何をしていたかなんて、
周りの人は疑問に思うものだろうか。ちょっと考えすぎなんじゃないかと思ってしまった。
三話目は、タワーマンションに住むバツイチの男が相談者。車は所有していないものの、
訳あって契約しているマンション内の住人用駐車場に、なぜか毎週月曜になると無断で駐車
している車がある。車種は毎回違うから、停めている人間も毎回違うらしい。なぜ毎週のように
無断駐車されるのか。裏で糸を引いていた犯人はわりと当てやすいと思う。ただ、その理由は
意外なものでしたが。もっと悪意のある理由かと思っていたので、ちょっとぐっと来てしまい
ました。しかし、こんな回りくどいやり方しなくても、とも思うけれど。男が車を買ったところで、
○○が治るとも思えないしなぁ。でも、腕貫探偵のおかげで、犯人の意図がわかったのは本人に
とって良かったのでしょうね。
四話目は、幼稚園の同窓会を企画したユリエが、同窓会の真っ最中に奇禍に遭う話。幼稚園の頃の
記憶って、そんなにあるものでしょうか。少なくとも、私にはその頃の記憶が全くないです。
いくら写真を見せられても、これが誰で、あれが誰とか全然わからないと思う。先生のことすら
全く覚えてないです。これって、私の記憶力が異常なんでしょうか・・・。いきなり14年も経って
幼稚園の同窓会はがきが来ても、私なら絶対行かないだろうなぁ。
殺人の理由がまたぶっ飛んでますねぇ。全く理解出来ない思考回路なんですが・・・。被害者が
同窓会の招待状を握りしめていた理由も、腕貫探偵に説明されてもいまいち納得出来なかったです。
指紋を消す為に裏表全部に被害者の指紋をつけるって、そんな発想あの短時間で浮かぶものなんだ
ろうか。うーん。なんかいろいろ腑に落ちなかったような。もちろん、真相を導く為の伏線は
細かく張ってあるとは思うのだけど。
ラストは意味深な終わり方をしているので、この最終話にはまだ続きがあるようです。ユリエ
さんと犯人の対決シーンは迫力ありそうですね。
今回、珍しく百合シーンがほとんど出て来なかったような。ちょっとした仄めかし程度は
あったように思うけれど。それはそれでちょっぴり物足りなく思う自分ばいるのは何故だろう・・・(笑)。

ちょっと全体的に推理に納得がいかない作品が多かったなぁ。トンデモな推理自体は好き
なんだけど、やっぱり整合性がないと消化不良で終わってしまいます。
でも、まだまだ続きそうなこのシリーズ、今後の腕貫探偵とユリエさんの進展にも注目したい
ですね。