ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

読了本三冊。

どうもみなさま、こんばんは。お暑うございますね。
ほんっとに、『暑い』って言葉しか出て来ない今日このごろ・・・。
なんか、石垣島よりもよっぽど東京の方が暑いんじゃないかっておもうよ・・・。


今回の読了本はまた三冊。一冊(似鳥さん)は旅行中に持って行って読んだ本。
前回、旅行記書くか本記事書くかで迷ったんですけど、旅行記は多分あの勢いで
書かないともう書く気になれなかったような気がするので、まぁ、書いちゃって
良かったかな。一部楽しみにしててくれた方もいましたのでね(笑)。


んでは、早速一冊づつご紹介~。


似鳥鶏「迷いアルパカ拾いました」(文春文庫)
動物園シリーズ第三弾。今回は、タイトルの通り、桃本君や七森さんが勤める
楓ケ丘動物園に迷子のアルパカさんがやって来るところから物語がスタートします。
桃君たちはあちこちの動物園に問い合わせをして迷子のアルパカの身元を突き止め
ようとしますが、結局わからず仕舞い。アルパカさんは、とりあえず楓ケ丘動物園で
保護することに。一方で、七森さんの友人が突然失踪。心配した七森さんたちが自宅へ
行ってみると、飼っていたハムスターが栄養失調の状態で残されていたのでした。七森
さんの友人は、どうやら何かきな臭い事件に巻き込まれたようで・・・というのが大筋。
相変わらず、ほのぼのした作風に反して裏にあるテーマは重い。今回は、テレビやメディア
で人気のアイドル動物たちの裏事情を描いたもの。もちろん、実際こんなえげつないことが
行われているとは思わないけれど。もし、こういうことをしている業者がいたとしたら、
それは本当にあってはならないことです。自分たちの私利私欲の為に動物たちが犠牲になる
なんて、絶対に許せません。動物たちをモノとしか見ていない彼らのやり方には腹が立って
仕方がなかったです。
前作からちょっと意外な展開になってきた桃君と鴇先生の恋模様も、またほんのちょっぴり
進展したようで嬉しかったです。ラストの二人のやり取りが初々しくて、ニヤニヤしちゃい
ました(笑)。しかし、気になるのは七森さんの気持ちなのですが・・・内心は桃君のこと、
気になっていたりするんじゃないのかなぁ。今回も、いろんな紙でいろんな折り紙を折っちゃう
七森さんの才能に感心しきりでした(いったいどれだけのレパートリーがあるのやら^^;)。


碧野圭「書店ガール3」(PHP文芸文庫)
こちらもシリーズ第三弾。書店で働く女性を主人公に据えたお仕事小説です。育児休暇を
終え現場に復帰した亜紀は、慣れない経済書担当になり、失敗ばかりで落ち込む日々。一方
エリア・マネージャーに昇格した理子は、仙台の老舗・櫂文堂書店のリニューアルを任される
ことになり、仙台へ。そこでは、震災の影響がまだあちこちに色濃く残っていて、理子は
被災地の現状を否が応でも知ることになるのでした。
今回のテーマは震災でしょうか。仙台の櫂文堂書店の店長・沢村の語る被災地の現況に胸が
塞がる気持ちになりました。語られる言葉は淡々としていても、その内容は凄まじかった。
経験した人にしかわからない、切実さがありました。理子たちが東京で行った震災フェアは、
東京ならではのフェアで良かったと思う。被害が大きかった被災地とそうでない地域の人の
間では、震災に対する思いは全く違うだろうし、本当の意味で被災者の気持ちを理解する
なんて出来ないのだと思う。けれども、亜紀が言った、東京の人にとっても震災は特別、という
言葉が胸を打ちました。あの時期、私も計画停電を経験して、暗く寒い夜を過ごしたことを
はっきりと覚えています。その経験は、一生忘れられない。津波で街が流されて行くあの絶望的
な映像も。あの日を経験した日本人なら誰だって、それぞれの震災への思いがあると思う。
震災から三年経とうが、五年経とうが、書店で震災フェアをやる意義は絶対にあるのだと
思いました。
震災以外のテーマは、亜紀が悩む、仕事と子育ての両立の難しさの部分ですかね。働く女性
ならば、誰もが直面する壁なのだと思います。今の日本では、働く女性の環境がいいとは
決して言えません。昔よりはよくなっているのだろうけど、やっぱり出産して育児をしながら
働くというのは弊害もたくさん出て来ますよね。亜紀が最終的に出した決断は、家族の為には
正しいのだろうと思います。でも、書店員として現場で働きたい、という亜紀の気持ちも
わかるので、辛い選択だったのだろうな、と思いますね。でも、成長した彼女ならば、
どこに行っても精力的に働けるでしょうね。一作目のいけすかない性格からは考えられない
くらい、良い書店員になりましたものね。
理子は沢村といい感じになるのかな?と思いきや、今回もやっぱり何の進展もなく終了。最後の
涙が意味深だったなぁ。もっと自信を持って飛び込んでみればいいのになーとちょっと思って
しまいました。彼女が女性として幸せになれる日は来るんでしょうかね。
今回も楽しく読めました。本好きさんにはお薦めのシリーズです。


近藤史恵「胡蝶殺し」(小学館
近藤さん久々の歌舞伎もの。昔は頻繁に歌舞伎関連の作品を書いていた印象があるのだけど。
49歳で急逝した中村竜胆の一人息子・秋司の後見人になった蘇芳屋の市川萩太郎。萩太郎には
秋司と同い年の息子・俊介がいた。俊介はまだ歌舞伎にはあまり興味がなく、踊りの才能も
あるとは言い難いが、萩太郎はそろそろ息子を子役として舞台デビューさせたいと考えていた。
息子と共に秋司の稽古をつけることになった萩太郎だったが、秋司の踊りの才能には目を瞠る
ものがあった。彼は本物だ・・・。息子の才能と比べて、心中は複雑だった。しかし、萩太郎は
子役二人が揃って舞うところが見たいと思った。しかし、二人揃っての舞台デビューの直前、
秋司に悲劇が・・・。

タイトルから、どちらかの子役が殺されるミステリーなのかな、と思ったのですが、全然
違ってました^^;殺されたのは、片方の才能ってことなんでしょうね。
歌舞伎には正直あんまり興味ないんですが、近藤さんの歌舞伎ミステリは好きなので、面白く
読みました。もうちょっと大きな事件が起きるのかと思っていたので、いまひとつ盛り上がりの
ないままこじんまりとまとまってしまったかな、という印象もあるのですが。でも、悲劇的な
結末になるかと思いきや、ラストは明るさを含んだ終わり方だったので、良かったです。
ミステリ的な要素としては、終盤で判明する秋司のある事実の部分でしょうね。俊介以外、
みんなが騙されていた、という。当然、私も騙されました(苦笑)。秋司の芝居の才能は
本物だったということなのでしょうね。それもたった6歳で、大切なものを守る為にしたこと
だったのだから、大した少年ですよね。
実は、俊介って嫌な人間に育つのかな、と思ってたんですが(結構甘やかされて育ってる感じ
だったんで)、成長した姿にちょっとビックリ。秋司のことを見抜く鋭さといい、ほんとに
頭の良い子だったんですねぇ。再会した後の俊介と秋司の物語も是非読んでみたいと思いました。
それにしても、秋司の母親、由香利の言動にはイライラさせられたなぁ。近藤さんって、こういう
キャラ作るの巧いですよねぇ。なんかちょっと、『はぶらし』に出て来たDQNな母親のことを
思い出してしまいました(名前は忘れちゃったけど・・・他人の家で自分が使ったはぶらし返そうとする女)。
まぁ、由香利の身の上を考えると同情もするし、仕方がなかったのだとも思うのだけど、それにしても
自分たちのことしか考えてないところにムカムカさせられっぱなしでした。萩太郎への攻撃的な態度
とかも。自分の立場考えたら、もっと下手に出た方が絶対得なのにね。こういう母親っている
よねぇ・・・絶対付き合いたくはないな。
お得意の歌舞伎ものなので、多分楽しんで書いてらしたのだろうな。梨園の世界はいろいろと
奥が深そうです。実際はもっとドロドロしているのでしょうね・・・^^;;