ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

「私がデビューしたころ ミステリ作家51人の始まり」/万城目学「悟浄出立」

みなさま、こんばんは。台風11号、すごかったですねぇ・・・。
東京はさほどの被害はありませんでしたが、一時バケツをひっくり返したような
大雨が降ってきて、ビビリました・・・。
みなさまのところは大丈夫でしたでしょうか。


今回読了は二冊。現在、またしても予約本ラッシュがやってきておりまして、
図書館HPを確認する度青くなる毎日・・・考えなしのリクエストで毎度自ら首を
締めている気が・・・(学習しろよ^^;)。
銀翼のイカロスも目出度く一番手で回って来まして(発売日にリクエストに行って
くれた相方のおかげです)、近々読む予定です。楽しみ^^


では、一冊づつご紹介。


「私がデビューしたころ ミステリ作家51人の始まり」(東京創元社
タイトル通り、東京創元社にゆかりのあるミステリ作家51人の方が、ご自身のデビュー
にまつわるエピソードを語ったエッセイ集。大好きな作家さんがたくさん寄稿されているので、
それぞれのデビュー時代のことを知れたのはとても嬉しかったです。
51人中、一冊も読んだことがない未読作家さんは8名。もちろん、一冊しか読んだ
ことがない作家さんもたくさんいるのですが。でも、意外と幅広く読んでいるな、自分、と
ひとり秘かに悦に入っていたのでした(笑)。
以下、収録作家一覧。なかなか豪華でしょう!?さすが東京創元社

収録作家=土屋 隆夫/高城 高/芦川 澄子/小鷹 信光/辻 真先/中町 信/山田 正紀/竹本 健治/
今野 敏/笠井 潔/戸松 淳矩/逢坂 剛/太田 忠司/島田 荘司/菅 浩江/井上 雅彦/芦原 すなお/
綾辻 行人/倉阪 鬼一郎/歌野 晶午/樋口 有介/法月 綸太郎/有栖川 有栖/北村 薫/
はやみね かおる/宮部 みゆき/芦辺 拓/松尾 由美/倉知 淳/近藤 史恵/田中 啓文/愛川 晶/
小林 泰三/柴田 よしき/西澤 保彦/荻原 浩/鯨 統一郎/柄刀 一/井上 尚登/桜庭 一樹/
伊坂 幸太郎/青井 夏海/大倉 崇裕/柳 広司/米澤 穂信/石持 浅海/北山 猛邦/坂木 司/
東川 篤哉/森谷 明子/大崎 梢


そもそも、ミステリにはまった当初、漠然と創元推理文庫のミステリなら間違いないだろう、と
やみくもに同レーベルの本を読みあさっていた時期があったんですよねー。今でも、一番好きな
出版社は?と聞かれたら、迷わず東京創元社を挙げると思いますしね。なんか、ミステリ=東京創元社
みたいな信頼があるんですよね。ミステリ・フロンティアから出る新人は大成する人も多いですしね。
ミステリの新人発掘には、ほんとにすごいアンテナをお持ちの出版社だと思っています。
特に、今回、多くの作家さんがエッセイ中に名前を挙げられている、東京創元社戸川安宣氏の
新人発掘能力には、本当に脱帽させられずにいられませんでした。戸川さんがいなければ、大好きな
あの作家さんもこの作家さんもみーんな、デビューされていなかったかもしれない訳で。
本当にありがとうございます、と頭を下げたくなりました。それと、戸川さんと同じくらい名前が
挙がっている、講談社の伝説の名物編集者、宇山さんにも。すでに鬼籍に入られてしまいましたが・・・。
宇山さんがまだご存命であれば、ミステリランドもまだまだ出版されていただろうにな・・・。
作家がデビューするにあたって、編集者の力というものがいかに強いのかが、よくわかるエッセイ集
でした。
それぞれの作家さんのデビュー秘話、とても興味深く、楽しく読みました。みなさん、それなりに
苦労されているのがよくわかりました(笑)。運良くデビュー出来ても、その後作家でい続ける方が
よほど難しい、というのも。私には、作家になるなんて絶対無理だーーと痛感しました^^;
読んでいて、ひとつ思ったことは、好きな作家であればあるほど、エッセイも面白く読める、という点。
小説の文章が読みにくいと感じる作家さんのエッセイは、やっぱりエッセイであってもちょっと
読みにくいというか、とっつきにくい感じがあるんですよね。文章の好き嫌いのせいなんですかね。



万城目学「悟浄出立」(新潮社)
中国の古典文学を下敷きにした、万城目さんの最新短篇集。
西遊記沙悟浄三国志趙雲に、司馬遷諸葛亮といった中国古典の文学に登場する
キャラクター、それも脇役キャラの方にスポットを当てて新たな物語を綴った5編を収録。
それぞれの物語の脇役キャラを主人公に据えたところが面白いです。おそらく、本編を読んで
いればもっと肩入れ出来たのかもしれないのですが、いかんせん、知っている作品は西遊記くらい
(しかも、それも小説ではなくテレビドラマとかアニメとかでだし^^;)。
いまいちピンと来なかったというのも正直なところ。ただ、それぞれの物語そのものは元ネタを
知らなくても十分楽しめる作品に仕上がっているとは思います。私が一番好きだったのは、最後の
『父司馬遷かな。堕ちた父親司馬遷に、喝を入れる娘・榮がとてもカッコ良かった。
悲しい女性の運命を描いた『虞姫静寂』もドラマティックで良かったな。ラスト、やり切れない
気持ちになりましたが。虞美人草って、こういう言われがあったのかぁ。って、どこまでがほんとか
わからないけれども^^;
冒頭の『悟浄出立』は、沙悟浄よりも、猪八戒の元の姿の方に驚かされました。これって、原作も
そうなの?八戒って、ほんとはイケメンだったのか・・・!!!(驚愕の事実)
私、中国文学ってほんとに全く未知の世界なんですが(漢文で『項羽と劉邦』は習った覚えがありますが)、
諸葛亮って、諸葛孔明のことですか?すんごい、初歩的な質問だったら、ほんとすみません・・・(恥)。
まぁ、何にせよ、元ネタがわかればもっと面白いだろうな~と、ちょっと残念に思ったことは間違い
ないです。
なんだか、切ない話が多かったので、次は明るい万城目作品が読みたいなぁ。