ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

「そっと、抱き寄せて」/「Wonderful Story」

どうもみなさま、こんばんは~。
日が短くなりましたねぇ。最近、仕事を終えて帰る頃にはすっかり暗くなっています。
私の大嫌いな冬が来るかと思うと今からユーウツ・・・。
今年はほんとに暖冬だといいなぁ・・・。


今回は二冊読了。奇しくも、どちらもアンソロジー
では、一冊づつ感想を~。


「そっと、抱き寄せて 競作集<怪談実話系>」(角川文庫)
怪談誌『幽』に寄稿している作家たちによる、書きおろし怪談実話集。
寄稿作家は以下。
辻村深月/香月日輪/藤野恵美/伊藤三巳華/朱野帰子/詠坂雄二/安曇潤平/朱雀門出/
小島水青/松村進吉

実話集っていうだけあって、著者自らが経験した怪異とか不思議な体験が
語られているので、さほど怖い話が入っている訳ではなかったです。
オチも曖昧だったりと、内容は全体的に薄かったかなぁ。強烈に記憶に残った
作品ってのもあんまりないし。
意外と印象に残ったのはラストの詠坂雄二さん。オチもないし、怖いって訳でも
ないのだけど、『ほおみい』の謎が気になって仕方なかったです^^;結局何
だったんだろう~(多分、ご本人が一番知りたいのでしょうけど^^;)。
詠坂さんといえば、唯一読んだ作品が非常に印象悪くって、それ以降ご無沙汰
していたのだけれど。
正直、体験談よりは、完全にフィクションの競作集の方が面白かったのでは
ないかなぁ。それぞれのページ数も少ないし、どれもちょっと読み足りない感じが
しました。


「Wonderful Story」(PHP研究所
各作家が名前に『犬』を入れた変名で寄稿した、犬にまつわるアンソロジー
こちらはどの作品も非常に楽しめました。遊び心あふれる変名にも大笑い。
ちなみに、寄稿作家は以下。
伊坂幸郎/崎梢/木下半/横関/貫井ドッグ
貫井さんはちと苦しい感じがしなくもないですが・・・(笑)。こう来たか!って感じはしますね(笑)。
『Happy Box』という、名前に『幸』が入った作家さんによるアンソロジーの、今回は第二弾で
犬バージョンにあたるようです。なかなか面白い趣向だなーと思っていたので、第二弾
が出て嬉しいです。それに、今回は犬。犬が活躍する小説は大好きなので、余計にテンション
上がりました(笑)。

では、各作品の感想を。

伊坂幸犬郎『イヌゲンソーゴ』
昔話や童話で活躍する犬たちの子孫が、共通の敵相手に奮闘するお話。こうしてみると、
犬が活躍するお話って結構ありますね~。そうした犬たちの敵が全員同じ人物っていうのは、
どういう因果関係なのかさっぱりわからなかったけれど(苦笑)、犬たちが団結して奮闘
する姿が凛々しかったです。ラスト、ムサシの家の長男君がグッジョブ!でした。家の
みんながムサシを心配していたのがわかって、ほっとしました。犬だって、その家の一員
なのだからね。伊坂さんらしい、ほっこりさせてくれる一作でした。

犬崎梢『海に吠える』
都会から海辺の街に父と二人で引っ越して来た少年のお話。転校生の主人公が、地元の子
たちと触れ合って打ち解けあって行くところがいいですね。東京に残った母親が様子を
見に来た時の態度にいちいちムカムカしました。彼は、父親について来て良かったと
思います。何が正しいのか、きちんと判断出来る親の側で育った方が、絶対いい子に
育つ筈ですもん。雑種犬の春が可愛かったです。後日談も良かったですね。

木下半犬『バター好きのヘミングウェイ
こちらは初めましての作家さん。夫の為に、借金取りと対面することになった妻。なんとか
返済を待ってもらおうと頼むが、相手の要求はどんどん下衆な方向に。けれども、あることが
きっかけで、妻は意外な事実に気づき・・・。
最初は、どうしようもないクズ夫の過去の言動も、その夫がダメと知りつつ尽くしてしまう妻
にも、読んでてイライラさせられっぱなしでした。ただ、悲惨な状況な割に、妻の態度が
あっけらかんとしてるので、さほど悲壮感がなく、借金取りとの会話もどこかコミカルに
感じたんですよね。その理由は最後に判明するのですが。意外な逆転劇にあっと言わされました。
バターを塗って・・・ってくだりの下品さには辟易したのですが。それがああいう風に効いて
来るとは。一本取られた~って感じでした。奥さんの聡明さに感心したと同時に、あんなダメ
旦那とはさっさと別れた方がいいのになぁ・・・と思いっちゃいました。

横関犬『パピーウォーカー』
こちらも初めましての作家さん。盲導犬センターの研修生歩美が主人公。訓練士の阿久津が
訓練した盲導犬ジャックの様子が最近おかしいと飼い主から言われ、歩美と阿久津が会いに
行ってみると、阿久津がジャックの様子にある異常を感じ取り・・・。
人間と話すのは苦手なのに、犬とは会話が出来る阿久津のキャラは結構好きかも。ちょっと
おどおどしすぎって気もしますけど^^;盲導犬については知らないことが多いので、
勉強になりました。リタイヤした盲導犬を引き取る制度があるんですね。最期を看取るのは辛そう
ですけど・・・看取ってくれる飼い主がいることは、犬にとっては幸せなことなのでしょうね。
木島家の問題が最後に解決されたことにほっとしました。ジャックがいつか引退したら、木島家に
引き取られるといいな、と思います。

貫井ドッグ郎『犬は見ている』
『犬の視線を感じる』という友人。ふとした瞬間に、いつも犬と目が合うのだという。その話を
主人公がオカルト好きの友人諸橋に話した後、主人公も誰かのの視線を感じる気がするように。
困った彼が、再び諸橋に相談すると、彼は意外な推理を語り出し・・・。
ふと気づいた時に必ず犬と目が合うっていうのは、想像すると結構怖いかも。諸橋が推理した、
犬の視線の理由が真実だったとしたら・・・ぞぞぞ。犬と目が合うってところから、こういう
展開になるとは思わなかったです。主人公の友人がどうなってしまったのか、気になります・・・。

こちらはいずれも劣らぬ良作揃いでした。いろんな切り口から書かれていて、それぞれに
面白かったですね。