ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

読了本三冊。

どうもこんばんはー。
年末になって、なかなか更新できなくてすみません(って、誰に謝っているのだ)。
今年も残り僅かになりましたねぇ・・・前回も同じこと書いたっけ?^^;
みなさま、年賀状は書きました?ワタクシ、もちろんまだです。多分、今週末の
仕事納めの後になるでしょう(どうしても、切羽詰まらないとやる気が起きない性格)。
大掃除など、もちろんもってのほか(はよやれや)。
なーんか、やり残したことがいっぱいで今年も終わっちゃいそうだなぁ・・・あああ(嘆)。


読了本は今回も三冊。なかなか更新出来ないんで、たまっちゃうのよね、どうしても^^;


では、一冊づつ感想を。

坂木司「肉小説集」(角川書店
『豚肉』の各部位をテーマにした短篇集。ちょっと趣向の変わった短篇集になってます。
読んでると豚肉が食べたくなる・・・かというと、ちと微妙でしたが^^;
いつものほんわかした作風とはまた違ったテイストの作品が多かったですね。
最近また新作が出たらしくて、そっちも雰囲気はブラック系な感じですが(予約中で未読
なんで、真相はどうかわからないですけど)。
個人的には、二話目のアメリカ人の王様』が一番好きだったかな。薄味を好むデザイナーが、
婚約者の父に結婚の許しを得に行ったところ、相手の家族の食の嗜好が自分と正反対の濃い味だった
ことから、結婚自体に疑問を覚えるお話。食の好みって大事ですからねぇ。主人公の逡巡には
共感を覚えるところも多かったです。どうなることかとハラハラしましたが、オチにほのぼの。
なんだか、いい家族になれそうだなぁと嬉しくなりました。
5話目の『魚のヒレも好き。主人公の祖父のエキセントリックなキャラが面白かった。ラストの彼女の
言動にドキドキしちゃいました。
一話目『武闘派の爪先』は、最初状況がよく飲み込めなかった。オチはかなりのブラックって
ことですよね?豚足は、私もあのビジュアルだけで・・・無理ですぅ(><)。
三話目『君の好きなバラ』は、隣の芝生は青く見える、というやつでしょうか。角煮って、多分
あっためて食べないと美味しくないよね。冷えて油が固まった角煮なんて、そりゃ水も欲しくなるやね。
四話目『肩の荷(+9)』は、自己評価が低い主人公に対して、実は周りの評価は正反対だった、と
いう話。これもなかなか良いお話。尊敬出来る先輩とか上司がいる職場って、いいですよね。
働き甲斐もありそうだし。なんか、羨ましいなぁ、と思いました。
6話目『ほんの一部』は、ハムが大好きな小学生が、塾で一緒のクラスの女の子が生ハムのサンドイッチを
食べているのを見て、どんな味なのか気になる、という、あらすじ書くと何だそれ、ってお話(笑)。
私も、初めて生ハム食べた時は衝撃だった覚えがあるな。そして、スペインで食べたイベリコ豚の
生ハムに感動したことを思い出しました。ラスト1ページのエロティシズムといったら。小学生の話
じゃないぞ、これ^^;この二人がその後どうなるのか気になるなぁ。


若竹七海「さよならの手口」(文春文庫)
なんとなんと、葉村シリーズ、13年ぶりの長編!!新刊案内見て、若竹さんの新作だーと思って
内容とか知らずに予約したので、なんとも嬉しい誤算でした。
葉村シリーズ自体は、ついこの間読んだ短篇集で再会していたので、それほど久しぶり~って
感じはなかったのだけど。
短篇でも相変わらず痛々しいなーと思いましたが、今回は長編。満身創痍っぷりは、短篇の比じゃ
なかったですね・・・。なんでこう、若竹さんは晶さんを痛めつけたがるんですかねぇ。もう、
痛々しくなきゃ、葉村シリーズじゃない、とでも思っていらっしゃるのでしょうか・・・^^;;
ページが進むごとに怪我が酷くなって行くので、ほんとに読んでて可哀想になりました^^;
時系列的には、きちんと晶さんにも時間が流れてまして、前作では30代でしたが、本書では
40代になっております。事情があって探偵を一時休止して、現在はミステリ専門の書店(新刊、
古書両方扱っている)でアルバイトをして食いつなぐ日々。男っ気もなく、女だけのシェアハウス
で一人暮らし。そんな晶さんに、ひょんなことから探偵の依頼が。元女優の葦原吹雪から、
二十年前に失踪して行方不明になった娘を捜して欲しいというのです。現在どこの探偵事務所にも
所属していない晶さんは、届け出なく探偵活動を行うと罰せられる危険がある為、仕方なく知り合いの
探偵事務所を通じて依頼を受けることに。それが、彼女の受難の始まりだった・・・というのが大筋。
まぁ、とにかく、出てくる登場人物がみんな勝手な性格のひとばっかりで、晶さんも苦労の
しっぱなし。ほんと、なんでこんなに受難続きなんだか。まぁ、それがこのシリーズの醍醐味
なのかもしれないけれど(苦笑)。
終盤、探偵としての自分を見失ってしまう晶さんが心配になったのだけど、ラスト、ミステリ
専門書店の店長・富山さんのおかげで痛快に読み終えられました。富山さん、グッジョブ!!
やっぱり、晶さんは探偵でいてくれないとね。ミステリ書店の店員という立ち位置もお似合い
ではあるけれど。っていうか、私がその店員になりたい!モデルとなったお店は実在するん
ですよね。カフェ併設のミステリ専門書店なんて!行ってみたーい!
ミステリとしても、いろんな仕掛けが入っていて、とても面白かったです。若干人間関係や
事件のからくりが複雑で、混乱したところもありましたけど^^;
晶さんが住んでいるシェアハウスに住みたいとやって来た倉嶋舞美の本性には呆れました。
なんか、イヤな予感はしていたのですけどね。こういう女と関わっちゃうところが、晶さんの
不運というか、なんというか。トラブルを背負い込みやすい体質なんだろうなぁ・・・。
あと、終盤、吹雪を狙って病院にやってきた人物の恐ろしかったこと。あのシーンは、ホラー
読んでる気になるくらい、怖かったです・・・。
久しぶりの葉村シリーズ、期待に違わぬ面白さ。これを機に、是非さらなる続編をお願いしたい
と思います。


今野敏「自覚 隠蔽捜査5.5」(新潮社)
大好きな隠蔽捜査シリーズ最新作。本編から外れたスピンオフ集第二弾。脇役人物たちが、
それぞれに苦難に立たされ、その度に竜崎の言葉で救われる、というお話ばかりで構成されています。
どのお話も、最悪の事態に立たされた時に、竜崎に相談しただけで、あっという間に問題解決
できちゃうところがスゴイ。どんな難問も、竜崎にかかると、何の難問でもないことがわかるという。
合理主義だけど、きちんと人は見ているし、すべてが的確。なんかもう、超人ですよね、ホント。
どのお話も面白かったけど、やっぱり最後に伊丹が登場したのが嬉しかった。絶対最後は伊丹が
主人公だろう、と思って読んでいたのだけどね。伊丹って、ほんと竜崎大好きですよねー。
相変わらず過去のいじめのことはさっぱり忘れているようですが・・・。竜崎も、意外と根に持つ
タイプなのね。竜崎みたいな性格だと、過去のことなんかすぐに忘れちゃいそうなのにね。
竜崎が心の浮気をした問題の人物、美奈子が再登場した時は、微妙な気持ちになりましたけど。
でも、やっぱり彼女も竜崎に対しては特別な想いがあるんでしょうね。表面的には、単なる部下と
上司ですし、竜崎がそんな気持ちになったことなんて、全く気付いてなさそうですけども。でも、
気付いてなくて良かった・・・正直、彼女には、これ以上竜崎に近づいてほしくないですね。
竜崎には、やっぱりあの素晴らしい奥さんを大切にして欲しいからね。そういえば、今回は
奥さんや家族(娘の方はちらっと話題に上るシーンがあるけど)の登場がなかったのがちょっと
寂しかったです。
あと、今回の作品で、戸高の株がまた上がったように思いました。今野さん、多分彼のキャラ
気に入っているのでしょうね。竜崎も彼には一目置いてる感じですしね。
美奈子以外は、主役がみんなおっさんばっかりなので(笑)、読んでて誰が誰だかって感じ
だったんですけどね。警察組織の上下関係とかも、相変わらずよくわからなかった^^;
ま、そんなのわからなくても、十分楽しく読めましたけどね。
今回も、痛快なお話ばかりで面白かったです。