ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

読了本三冊。

いやー、寒いですねぇ。みなさま、お風邪などひかれてませんでしょうか。
もう今年も残り二週間ほどになりましたね。なんだか、全く年末って感じがしないのですが。
仕事が忙しいので、毎日ばたばたしてる感じは年末らしいですけどね。
そういえば、各種ランキングが出ましたね。私は、このミスのランキングしか
まだ確認出来ていないのですが。
米澤さんが一位とはねぇ。結構びっくりしました。3位までは読んでいたけど、
それ以外だと読んでいたのは宮部さんくらい。
黒川さんの『破門』は職場の人にもらって手元にあるけど未読のままだし(今は
相方が読んでいる最中)。
本ミスの方はどんなランキングだったのかなぁ。今日本屋行ったのに、確認するの
忘れちゃった(っていうか、本を見かけなかった気がするんだけど・・・)。


今回の読了本は三冊。時間が空いた割に読了数が少ない^^;もう一冊読了は
しているのだけど、そちらは次回の記事に。
奥田さんが結構時間かかったのよね。面白かったんだけども。
伊坂さん、奥田さん辺りは単独で記事書きたかったんだけどなぁ・・・。


では、一冊づつ感想を。


大崎梢「だいじな本のみつけ方」(光文社)
大崎さんらしいYA小説。本が大好きな中学二年の野々香は、ある日学校で忘れ物の
本を見つける。カバーのかかったその本の中身が気になった彼女がカバーを
外してみると、それは野々香が大好きな作家の発売前の新刊だった。発売前の新刊が
なぜこんな場所に存在するのか?好奇心にかられた野々香は、同じく本好きの図書委員・高峯と持ち主を捜し始める・・・。
本好きにとっては、非常に楽しめた一作でした。野々香たちの、本が好き!って
気持ちが作品全体から伝わって来て、こちらまで嬉しくなっちゃいました。私が
中学二年の頃は、コバルト文庫とかティーンズ文庫とか、そんなのばっかり
読んでいたものだけど。
本屋で中学生によるPOPフェアをやったり、小学校で読み聞かせをやったり、
楽しそうだなぁ、と羨ましくなりました。それを一緒にやってくれる本好き仲間
がいるのも羨ましかったな。
野々香と高峯って、表向きは仲が悪いけど、本という共通の趣味があるから、
実はすごく気が合う二人なのでしょうね。この先お互いに恋愛感情が芽生えるかは
謎ですが・・・^^;
気が弱いけど、なんだかんだで二人に付き合っていろいろ協力してくれる浩一の
キャラも好きでした。三人の関係が良かったですね。学生時代に、こういう仲間が
いるっていうのは、本当に一生の宝になると思うな。
本好きの主人公たちを通じて、大崎さんの『本の良さをもっとたくさんの人に
知って欲しい』という願いが伝わって来たように思いました。
たくさんのYA世代の人たちに読んで欲しい作品でした。


伊坂幸太郎アイネクライネナハトムジーク」(幻冬舎
伊坂さんにしては、珍しい恋愛短篇集。といっても、もちろん各作品は絶妙に
リンクしておりまして、非常に複雑な人間関係になっています(人物相関図を
作りたくなった・・・)。
もともとは、伊坂さんが大好きな斉藤和義さんからの『恋愛をテーマにした
アルバムの中の『出会い』にあたる曲の歌詞を書いて欲しい』という依頼が
きっかけだそう。結局作詞は無理なので、代わりに小説を書くという流れになった
のだとか。その作品が、二作目の『ライトヘビー』
斉藤さんの楽曲の歌詞がいくつも登場するのは、そういう訳だったのですねぇ。
実は、私も伊坂さんのエッセイ読んで斉藤和義さんのファンになったので、作中の
『斉藤さん』登場はとても嬉しかったです。読んでる時は、そんな経緯は知らない
から、これって、ご本人にはもちろん許可取っているんだよね~?なんて考えながら
読んでいたのだけれどね。
恋愛をテーマにしているといっても、ベタベタした感じは皆無。回り回ってなんとか
恋愛小説になってる、みたいな感じなのが、なんとも伊坂さんらしくてよかった
です(笑)。
備忘録の為、一作づつ感想。

 

『アイネクライネ』
街頭アンケート取ったら出会いがあった、なんて、それこそ劇的な出会いですよねぇ。世の中って何が起きるかわからない。トイ・ストーリー観てないんで、観て
みたくなりました。

 

『ライトヘビー』
こちらは、美容院に行ったら、美容師から男を紹介されて出会いがあったお話。
しかも紹介された男性は美容師さんの弟。弟の正体にはびっくり。他力本願
じゃなくて、ちゃんと自力本願だったところにニヤリとしちゃいました。

 

ドクメンタ
一作目で妻が出て行っちゃった藤間さんが主人公。藤間さんの『うっかり』な性格、
自分かと思いました・・・。まぁ、藤間さんほど酷くはないけど(笑)。ちょっと
した『うっかり』が積み重なると、こういう結果になるのかもしれないですよねぇ。
しかし、預金通帳のメッセージにはびっくり。そういう手があるのかぁ。

 

『ルックスライク』
『高校生』『若い男女』の2つの視点から構成されています。両者の繋がりは、
最後に判明。こういうことだったのかー!と思いました。さすが、巧いですねぇ。『「この子がどなたの娘かご存知ですか」作戦』面白かった。なるほどね。
人間心理を実に上手くついている作戦ですね。
まぁ、実際そんなに上手くいくのかは疑問に感じるところもあるけど^^;

 

『メイクアップ』
女性のメイクってすごいですよねぇ。高校時代の同級生の顔をわからなくするとは。ま、体型も変わっていたら、そりゃわからなくもなるか。結衣には亜季に一矢報いて
欲しかった気もするけど、こういう選択をするところが彼女らしいな、と思いました。ところで、最後の『どちらかのパターン』のどちらが現実になったのでしょうか。
気になるなぁ。

 

『ナハトムジーク』
時系列が前後するんで、ちょっと混乱したけれど、今までのキャラが総出演で
嬉しかった。藤間さんのことがちょっと残念だったな。結局そういう結果に
なったのかぁ。ラウンドボーイのその後はちょっと意外だった。ボクサーに
なるのかと思ってたんで。最後、小野にインタビューした司会者の身の上まで、
きちんと伏線回収されていて、脱帽でした。



奥田英朗『ナオミとカナコ』
奥田さんの最新長編。時間がかかったと先述したのですが、リーダビリティは抜群
でした。先が気になってついつい読みふけってしまった。タイトル通り、二人の
女性が主人公。『ナオミの章』『カナコの章』に分かれて構成されています。
二人は親友同士。デパートの外商部に勤める直美は、ある日親友の加奈子が夫から
酷いDVを受けていることを知る。何度も離婚を勧めるが、加奈子は夫に怯えて
出来ないと拒む。なんとか加奈子を救いたい直美は、彼女に究極の選択を迫る。
二人が出した答えとは。
二人がしたことは許しがたい犯罪なのですが、相手のことを考えると仕方が
なかったとも思えるし、途中からは、なんとか二人に逃げ切って欲しい、と願い
ながら読んでいました。最後の一行まで二人の運命がどうなるかわからなかった
ので、ハラハラドキドキしっぱなしでした。特にカナコの章。
加奈子の夫・達郎の妹である陽子が出て来る度に、生きた心地がしなかったです・・・。陽子のしつこさにはほんとに辟易したなぁ。兄がDVしてるって知って
いながら、何もしなかった罪だって十分重いと思うんだけど。いやもちろん、
殺人はそれとは比較にならないくらいの重罪ですけどね。でも、正直、達郎みたいな
人間は、殺されても文句言えないんじゃないかって思ってしまった。世の中に、
どうしてこういう人間がいるんだろうか・・・。直美と加奈子が、達郎を殺すこと
『排除』と呼ぶところが、自分たちのしたことを正当化したいという彼女たちの
心理状態を上手く表していて巧いな、と思いました。引っ張った割に、殺人の
シーンが短くあっさり描かれているのも、彼女たちにとっては害虫を駆除するような
気持ちだったということの表れなのかな、と。
ナオミの章では、中国人の朱美の言動には嫌悪しか覚えなかったのですが、その後
読み進めて行くに連れて、印象が変わって行きました。中国人が謝らないって
本当なんでしょうかね。高額な商品を万引きしても開き直って謝らない態度には
呆れましたけど。自分が悪いことをしているという自覚がないところがなんとも。
もちろん、中国人がみんなそうだって訳じゃないだろうけど。
とにかく、最後の最後まで引っ張られて、ぐいぐい引きこまれました。最後は最悪
の事態ばかりを思い描いていたので、ちょっと意外でしたね。賛否両論あるのかも
しれないけど、途中からは完全に主人公二人を応援して読んでいたので、痛快に
感じました。もちろん、二人にとってはこれからの方がもっともっと大変なので
しょうけどね。
とても面白かったです。奥田さんらしい、ノンストップクライムノベルでした。