ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

秋川滝美「居酒屋ぼったくり2」/下村敦史「叛徒」

どもども。暖かくなりましたねぇ。いよいよ来週は桜が開花しそうですね。
我が家のお庭の植物たちも新しい芽が出て来て春を感じさせてくれてます。
しかし、最近夜中に猫がやってきて庭の土の中に糞をするようになってしまい非情に困ってます。
猫は、一度トイレの場所を決めると、その場所への執着がすごいのだとか。
毎日、あの手この手で策を弄して対抗するも、毎度撃沈。猫って意外と頭いいのね・・・。
でも、私自身は一度も当該の猫の姿を見たことがないのです。多分人が寝静まった夜中に
やって来てはしているのでしょう。なんとも狡猾な奴です・・・。ああ、なんとかならないものか。
お仲間ブロガーさんは猫好きの方が多いのでこんなことを言ったら叱られそうですが、
ほんとに、猫が嫌いになりそうな今日このごろです・・・。はぁ。


読了本は今回も二冊です。

では、一冊づつ感想を。


秋川滝美「居酒屋ぼったくり2」
ついこの間1を読んだばかりなのですが、割合早めに2が回って来ました。すでに3も出て
いるのですよねー。そちらは回って来るのにもう少しかかりそうですが。
前作同様、今回もお料理が美味しそうだった~。居酒屋ぼったくりにやって来る常連さんたちと
店主によるほのぼのとしたやり取りも変わらず。今回は何人か新規のお客さんもやって来ました。
常連さんも新規のお客さんも、みんなそれぞれにいい人ばかりで、温かい気持ちになるお話ばかりでした。
店主の美音さんのすごいところは、お客さんのその日の気分や体調に合わせて、一番ぴったりした
お料理やお酒を振る舞えるところ。そういう気遣いが出来る人だからこそ、みんなこのお店が
大好きなんだろうなぁとしみじみ思わされました。疲れた時に、ほんのちょっとでも息抜きに
なるような居場所があるって、幸せなことですよね。私も、こんな風に仕事の愚痴を吐き出せる
お店があったら通いたいなぁ。それに、悩み事があったら、店主だけでなく、お店にいる常連の
みんなが一緒になって聞いてくれて、解決策を考えようとしてくれる。他人のことなのに、みんな
親身になってくれるところがすごく温かくて優しい。とびきりの美味しいお料理と、温かい人情と。
一度このお店に足を踏み入れたら、誰もがまた来たくなるのも頷けちゃいますね。
今回は、餃子の焼き方が勉強になりましたね。うちは相方が餃子作るの好きなんで、自分が
やることはないのですが(苦笑)。焼くのもすごく上手なんですけど、羽のパリパリ感がもうちょっと
欲しいと本人も言っていて。いつも羽を片栗粉で作っていたのですが、美音さん風に今度は
小麦粉で作ってみたらと提案してみようかと。小麦粉と片栗粉って、どっちを使うかいつも
結構悩むところだったりするんですよねー。お肉焼く時とかも。レシピによっていろいろ違うから。
あと、常連さんたちの想い出の味を再現した時のお料理もみんな美味しそうだったなぁ。
とろろステーキ、ナポリタン、鉄板焼きそば・・・美音さんが作ると、どんなお料理も美味しそう。
やっぱり、その人の為に愛情を込めて作るからなんでしょうね。
ちっともぼったくりじゃなない居酒屋ぼったくり。今回も読んでるだけでお腹が空いて来ました。
美音さんが、幸せカップルを見る度にちょこちょこ自分の寂しさと比較するつぶやきを吐くところに
ちょっと痛々しい気持ちになりました。早く要さんへの気持ちに気づけばいいのになー。ほんと、
お似合いの二人なので、読んでる方はちょっとじれったい。3巻ではもう少し距離が近づいて
いるでしょうか。次巻も楽しみです。



下村敦史「叛徒」
去年読んだ乱歩賞作品が良かったので、二作目も借りてみました。
うん、二作目もなかなか面白かったです。一作目ほどのインパクトはないにしても、リーダビリティは
今回も健在で、ぐいぐい読み進めて行けました。
主人公は中国語の通訳捜査官という特殊な職務に就いている警察官の七崎隆一。同じ通訳捜査官であった
義父の不正を告発し、更に追い打ちをかけるように義父が自殺したことで、警察内部での立ち位置は
『裏切り者』として厳しいものとなっています。家庭でも、父親を自殺に追いやられたことで、妻とは
ぎくしゃくしたままでした。そんな中で、歌舞伎町で殺人事件が起き、第一発見者が中国人だったため、
隆一は取り調べの通訳を任命されます。一時家に帰宅した際、隆一は、息子の部屋で血まみれの
ジャンパーを発見します。中学生の息子は、数日前から家に帰っていませんでした。息子の部屋を調べ、
パソコンのログから息子がチャット仲間と共に新宿で『中国人狩りをしていたことを知ってしまった隆一は、
歌舞伎町の事件の犯人が息子なのではないかと恐れ、独自で捜査し始めるが――と、こんなあらすじ。
主人公が通訳捜査官という特殊な立場にいることによって成立してしまう数々の不正捜査には、正直
何度も眉を顰めさせられました。確かに、通訳という立場だったら、相手の言うことも、こちらの言うことも、
自分の好きなようにミスリードさせることが出来る。だからこそ、通訳捜査官という職業に就く人間は、
信用されるべき人物じゃないと務まらないのだな、というのを痛感させられました。隆一は、あれだけ
不正を嫌う性格だったにも関わらず、息子の為だからという大義名分のもと、堂々と不正行為を行い
まくるのだから、まぁ、正直好感が持てる人物とは言い難かったですね。前作でもキャラの魅力不足に
関してはちょっと不満に思うところがあったのだけど、今回もそこはやっぱり少し不満がありましたね。
確かに、大事な息子の為なら・・・というのも理解出来なくはないのですが。ただ、尊敬していた義父を
裏切ってまで、不正な通訳行為を正した人間が、子供の為にはあっさり信念を曲げて同じことをして
しまうところにはちょっと首を傾げてしまいました。
でも、敢えて間違った捜査方針を打ちたてて、意図的に捜査本部の捜査の道筋を正して行く田丸刑事の
キャラはなかなか良かったですね。こういう人物こそ、もっと評価されていいと思うんですけどねぇ。
あと、間違った方向に育ってしまったのかと思っていた隆一の息子健太が、実はちゃんと父と祖父の教えを
守ってまっすぐ育っていたことがわかったのは嬉しかった。中国人狩りに関しては、本当に最低の行為
だと思うけれど、ちゃんと反省して謝罪をして回っていたところは偉かったと思う。謝りに行って、返り討ちに
遭う危険性だってあった訳なのだし。義父のことで消沈している父親に心配かけまいとする心遣いも健気で
いい子だな、と思いました。
終盤はすべてが上手く運び過ぎて、ちょっとご都合主義な印象もあったのですが、最後の手紙で、義父の
本心が知れたことは隆一にとって良かったと思う。こんなに正しく情に篤い人が、ああいう死を遂げなければ
ならなかったことが悔しくてならなかったです。
前作と比べてしまうとやっぱりインパクトには欠けると思うのですが、通訳捜査官という特殊な立場の
警察官を主役に据えたことで、今までにない切り口の警察小説になったと思います。
着眼点という意味では、非情に優れたものをお持ちの方だと思いますね。
次作も期待したいです。