ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

坂木司「アンと青春」/近藤史恵「モップの精は旅に出る」

どうもこんばんは。GW終わっちゃいましたねぇ。
あんまり連休感がないままに終わってしまった感じだなぁ。
地元のお祭りに行ったら、人がすごすぎて1時間もいないで帰って来ちゃったし^^;
そういえば、お庭の薔薇さんがついに一つ開花しました!続々と蕾もつけているので、
そのうち薔薇書庫で写真をUPしますね~。お楽しみに~。


読了本は二冊。大好きなシリーズ二連チャン♪

では、感想を。


坂木司「アンと青春」(光文社)
『和菓子のアン』の続編。待ちに待った、という感じですね。前作の細かい内容を
忘れてしまっていて、アンちゃんがアルバイトってことも忘れてました^^;
今回、アンちゃんは自分がアルバイトであるということに引け目を感じて
悩みます。それは、和菓子屋の仕事が慣れて来て、楽しくなって来たからこその
悩み。
アンちゃんが、仕事に責任感を持ち始めている証拠なのでしょうね。だからといって、
バイトはどうしたって社員の代わりにはなれない。そこの壁にぶち当たる訳です。
店長が大変な時は、自分も手助けしたい。でも店長は、必要以上に出勤する必要は
ないと突っぱねる。そこら辺の線引きがしっかりしていて、椿店長はさすがだなぁと
思いました。バイトだろうが何だろうが、使えるものは使う、という考え方の
ブラック社員も世の中には多いですからねぇ・・・。でも、アンちゃんの、
私はもっと頑張れるのに、という気持ちもよくわかります。アンちゃんは、
椿店長の、お店の役に立ちたいだけなんですよね。社会人としての自覚が
芽生えて来ているのがわかって、彼女の成長が嬉しかったです。

それと今回特筆すべきは、新キャラの柏木さんの登場。彼の存在ゆえに、
アンちゃんと立花さんの仲に変化が生まれます。アンちゃんは最後までニブイ
ままだったけれど、師匠の『甘酒屋の荷』の言葉から考えると、立花さんの
想いは一目瞭然ですよね。
っていうか、師匠の言葉がなくても、柏木さんとアンちゃんが仲良くしていると
不機嫌になる立花さんの態度をみれば、誰でも同じことを考えるのではないのかなぁ?
その都度、不機嫌になった理由はいろいろ言っていたけれど。要するに、漢字二文字の
アレなだけですよねぇ・・・。乙女な彼とアンちゃんでは、そういう雰囲気になるのは
難しいのかなーとか思ったりしていたのだけれど、どっこい、彼も男だったって
ことなんですねぇ。にやにやしちゃう(笑)。
前作の自分の記事を読み返していたら、アンちゃんが引いたおみくじに『待ち人・来るが
わかりにくし』って書いてあったそうな。まさにそのまんまやんけ(笑)。
柏木VS立花バトルがこれから勃発したりするのかなー。楽しみだ(笑)。

そして、今回も、出て来る和菓子が美味しそうだったー。このシリーズ読むと、無性に練りきり
とか食べたくなっちゃうのよね。美しい風流な風情の和菓子が食べたくなっちゃう。普段は、
大福とかまんじゅうとか、そういう素朴な和菓子くらいしか食べないのだけどね。

せっかく、アンちゃんに恋の兆しが見え始めたのだから、更なる続編を期待したいところです。
アンちゃんの就職のことも気になるしね。このままお菓子業界に行くのかどうか。
もっともっと、和菓子の知らない世界を見せて欲しいですね。


近藤史恵「モップの精は旅に出る」(実業之日本社
こちらも大好きなシリーズ第五弾。そして、あとがきを読むと、これが最終巻なのだそう。
・・・さ、寂しい~~~(ToT)。まだまだ続けられそうなのに!なんでこれで終わりに
しちゃうんだー。確かに、最終話はキリコちゃん自身の話で、謎だった家族のことも
出て来るし、いろんなことが明らかになりはしたけど。思った以上に、その内容が重かったりも
したけど。それでも、キリコちゃんが掃除を続ける限り、シリーズも続いて行くものだと
思っていました。
本書には四作が収められています。一話目、二話目は、キリコちゃんが英会話教室の入った
ビルの清掃を担当している時の話。三話目は、フリーランスで働く人達が共同で借りた
オフィスが入ったビルの清掃を担当した時の話。そして、四話目が、大介視点で、キリコ
ちゃんの姉が亡くなり、キリコちゃんが自宅に閉じこもってしまうお話。
タイトルの『旅に出る』はどこに出て来るのだ?と思われるかもしれませんが、最後まで
読むとその意味もわかってくると思います。私は、タイトルを見た時、キリコちゃんは
もっと楽しい旅に出るのだと思っていたのだけれど。その予想は、大きく外れました。
彼女の旅は、決して楽しいものではなかった。でも、彼女のこれからにとっては、とても
大事で必要な時間だったのだと思う。それにしても、最終話を読んでいて、大介って
本当に良く出来た夫だなぁと思いました。そして、どれだけキリコちゃんを大事に思って
いるのか、彼女のことが大好きなのかが、とても伝わって来ました。普通だったら、
妻が仕事も家事もしないで家に閉じこもったりしたら、もっとイライラしたり怒ったり
するんじゃないのかなぁ。もちろん、ああいう状況なら仕方ないとも思うけれど・・・
それにしても、大介の態度は立派だと思う。まぁ、大介にはあの強烈な叔母の存在っていう
引け目があるせいもあるのかもしれないですけど。大介の叔母の言動には、本当に
腹が立って仕方がなかったです。こんな最低の人間と大介の血が繋がっているなんて、
信じられない思いがしました。キリコちゃんの姉の旦那にもムカついたなぁ。でも、
ラストのキリコちゃんの仕返しにスカッとしました。
終盤、キリコちゃんが掃除がいやになったというような発言をして衝撃を受けたのですが
(あのキリコちゃんが!!)、その言葉を受けた大介の発言に優しさがにじみ出ていて、
じーんとしてしまいました。この夫婦は、本当に二人でひとつなんだなぁ、と。
なぜか5年も経って子どもが出来ていないのが不思議ではあるんですけど。これからも、
子どもが出来ようが出来まいが、ずっと仲良くいて欲しいな、と思いました。
大好きなシリーズ、これで読み納めかと思うと本当に悲しい。でも、またいつか
気が変わって書いてくれるかもしれないし、どこかでキリコちゃんと会えると信じたい。
そして、その時はやっぱり楽しそうに掃除をしていて欲しいな、と願うのでした。